$f’,g’$を $x$ の関数とする。
1.逆数の微分公式:$\dfrac{1}{f}$ の微分は$-\dfrac{f’}{f^2}$
2.商の微分公式:$\dfrac{g}{f}$ の微分は $\dfrac{g’f-f’g}{f^2}$
例題→1の証明→2の証明という順で解説します。
例題
例題1
$y=\dfrac{1}{\log x}$ を微分せよ。
解答
公式1より $y’=-\dfrac{(\log x)’}{(\log x)^2}=-\dfrac{1}{x(\log x)^2}$
例題2
$y=\dfrac{\cos x}{\sin x}$ を微分せよ。
解答
公式2より
$y’=\dfrac{(\cos x)’\sin x-(\sin x)’\cos x}{\sin^2x}\\
=\dfrac{-\sin^2x -\cos^2x}{\sin^2x}=-\dfrac{1}{\sin^2x}$
1の証明(二通りの方法)
導関数の定義に従って直接2を証明することもできますが,この記事では公式1を証明して,それを利用して公式2を証明します。
1の証明
$\dfrac{1}{f(x)}$ の微分を定義に従って計算する。
$\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}’=\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\frac{1}{f(x+h)}-\frac{1}{f(x)}}{h}\\
=\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x)-f(x+h)}{hf(x)f(x+h)}\\
=\displaystyle\lim_{h\to 0}-\dfrac{1}{f(x)f(x+h)}\cdot\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\
=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2}$
なお,$\dfrac{1}{x}$ の微分が$-\dfrac{1}{x^2}$ であることと,合成関数の微分公式(→合成関数の微分公式と例題7問)を認めれば以下のように証明することもできます。
(1の別証)
$y=\dfrac{1}{f(x)}$ は,$y=\dfrac{1}{u}$ と $u=f(x)$ の合成関数として表せるので,合成関数の微分公式より $\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}’=\dfrac{-1}{f(x)^2}\cdot f'(x)$ を得る。
2の証明
いよいよ商の微分公式の証明です。1と積の微分公式を使えば一瞬で証明できます。積の微分について知らない方は積の微分公式とその証明をご覧ください。
2の証明
$\dfrac{g(x)}{f(x)}$ を, $g(x)$ と $\dfrac{1}{f(x)}$ の積と見ることで,積の微分公式が使える:
$\left\{\dfrac{g(x)}{f(x)}\right\}’=g'(x)\dfrac{1}{f(x)}-g(x)\dfrac{f'(x)}{\left\{f(x)\right\}^2}\\
=\dfrac{g'(x)f(x)-f'(x)g(x)}{\left\{f(x)\right\}^2}$
「積の微分公式と商の微分公式は全く別物」と考えるのではなくて,商の微分公式は積の微分公式から簡単に導出できると覚えておきましょう。
商の微分公式の覚え方
・1について
これは頑張って覚えて下さい。マイナス忘れが多いので要注意です。
・2について
分子が $g’f-f’g$ なのか $f’g-g’f$ なのか迷いがちです。僕は「分子から微分」と覚えています。テスト中に忘れてしまった場合は,$f(x)=1$ とすることで確認できます。
また,最悪公式を丸ごと忘れても証明方法をなんとなく覚えておけば導出はできます。ただ,商の微分公式たちは使う機会が非常に多いので毎回導出するのではなくてぜひとも覚えてください!
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