積の微分公式とその証明の味わい

積の微分公式

f(x),g(x)f(x),\:g(x) が(考えている区間で)微分可能なとき

{f(x)g(x)}=f(x)g(x)+f(x)g(x)\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)

積の微分法則,ライプニッツルールなどとも呼ばれる重要な公式です。

積の微分公式を使う例題

2つの関数 f(x),g(x)f(x),g(x) の積 f(x)g(x)f(x)g(x) の微分は f(x)g(x)+f(x)g(x)f'(x)g(x)+f(x)g'(x) で計算できる,というのが積の微分公式です。

例題

x2sinxx^2\sin x を微分せよ。

解答

2つの関数 f(x)=x2f(x)=x^2g(x)=sinxg(x)=\sin x の積の微分を計算したい。

  • x2x^2 の微分は f(x)=2xf'(x)=2x
  • sinx\sin x の微分は g(x)=cosxg'(x)=\cos x

よって,積の微分公式

{f(x)g(x)}=f(x)g(x)+f(x)g(x)\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)

より求める微分は

f(x)g(x)+f(x)g(x)=2xsinx+x2cosxf'(x)g(x)+f(x)g'(x)\\ =2x\sin x+x^2\cos x

積の微分公式の覚え方

  • {f(x)g(x)}=f(x)g(x)+f(x)g(x)\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x) と書くと少し長いですが, (fg)=fg+fg(fg)'=f'g+fg' と書くと覚えやすいです。

  • 式を丸ごと覚えてもよいですし,私は「微分・そのまま,そのまま・微分と覚えています。

積の微分公式の証明

積の微分公式の証明は味わい深いのでぜひ覚えましょう。

証明

f(x)g(x)f(x)g(x) の導関数は定義より,

{f(x)g(x)}=limh0f(x+h)g(x+h)f(x)g(x)h\{f(x)g(x)\}'=\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}

ここで,f(x+h)g(x+h)f(x)g(x)f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x) は扱いにくいので以下のように2つの和に分解する:

f(x+h)g(x+h)f(x+h)g(x)+f(x+h)g(x)f(x)g(x)f(x+h)g(x+h)-f(x+h)g(x)\\ +f(x+h)g(x)-f(x)g(x)

以上より

{f(x)g(x)}=limh0g(x+h)g(x)hf(x+h)+limh0f(x+h)f(x)hg(x)\{f(x)g(x)\}'\\ =\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}f(x+h)\\\displaystyle +\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}g(x)

ここで,右辺第2項は f(x)g(x)f'(x)g(x) になる。また,右辺第1項は g(x)f(x)g'(x)f(x) になる(f(x)f(x) が微分可能なので f(x)f(x) は連続であり,limh0f(x+h)=f(x)\displaystyle\lim_{h\to 0}f(x+h)=f(x) となるため)。

よって,結局 {f(x)g(x)}=g(x)f(x)+f(x)g(x)\{f(x)g(x)\}'=g'(x)f(x)+f'(x)g(x) となり積の微分公式を得る。

証明を味わう

  • 「導関数の定義」「微分可能なら連続」という二つの重要な基礎知識を使うよい例です。

  • ABA-B を評価したいが,そのままでは難しいので (AC)+(CB)(A-C)+(C-B) と変形することで評価するという手法は大学数学でもときどき使う重要なテクニックです。

  • 証明で一度 f(x)f(x)g(x)g(x) の対称性を崩しました。当然ですが,f(x)f(x)g(x)g(x) の役割を入れ替えても証明できます。 すなわち f(x+h)g(x+h)f(x)g(x)f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)f(x+h)g(x+h)f(x)g(x+h)+f(x)g(x+h)f(x)g(x)f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x+h)\\ +f(x)g(x+h)-f(x)g(x) と分解しても証明できます(図において,仲介役を緑丸ではなく青丸にしてもOKということ)。 積の微分公式の証明

積の微分公式の別の説明

「微分係数」=「一次近似したときの傾き」 という考え方も重要です(一次近似の意味とよく使う近似公式一覧)。この考え方に基づくと少々荒っぽいですが以下のように説明することもできます。

説明

一次近似

hh が十分小さいとき( h2h^2 以下の項を無視すると),

f(x+h)f(x)+hf(x)f(x+h)\fallingdotseq f(x)+hf'(x)

g(x+h)g(x)+hg(x)g(x+h)\fallingdotseq g(x)+hg'(x)

よって,辺々掛けあわせて再び h2h^2 の項を無視すると,

f(x+h)g(x+h)f(x)g(x)+h{f(x)g(x)+f(x)g(x)}f(x+h)g(x+h)\\ \fallingdotseq f(x)g(x)+h\{f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\}

これは,f(x)g(x)f(x)g(x) の微分が f(x)g(x)+f(x)g(x)f'(x)g(x)+f(x)g'(x) であることを表している。

関連する公式

仲介役をはさむテクニック,かなり好きです。

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