前半では自然数の二通りの意味を説明します。後半では自然数の公理について軽く触れます。
自然数(高校数学)
流儀1.自然数とは正の整数のことである。
中学,高校数学では「自然数とは正の整数 $1,2,3,\cdots$ のことである」と習います。大学入試で自然数と言われたら正の整数のことを表します。中高生はこれだけ覚えておけばOKです。
0を含むという考え方もある
流儀2.自然数とは $0$ 以上の整数である。
大学以降では自然数は $0$ を含む場合もある(特に集合論の文脈)ので注意が必要です。
$0$ を含むのか含まないのかは定義の問題です。どちらが絶対に正しいということはありません。自分がどちらの流儀を採用して議論を進めていくのかを明確にしておけばどちらでもOKです。
紛らわしいのがイヤな場合は,流儀1の意味では「正の整数」,流儀2の意味では「非負整数」「 $0$ 以上の整数」という言葉を使えばよいです。
自然数の公理
ここから難しいです。
厳密には自然数はペアノの公理というもので規定されます。
自然数はペアノの公理(以下の5つ)を満たす:
- 自然数 $1$ が存在する
- 任意の自然数 $a$ に対してその後者 $S(a)$ が存在する
- $1$ はどの自然数の後者でもない
- 自然数 $a,b$ に対して $S(a)=S(b)$ なら $a=b$
- 数学的帰納法が使える
$S(a)$ は $1$ を加える関数というイメージです。
上記は流儀1に対応します。一つ目と三つ目の条件の $1$ の部分を $0$ に変えたものを自然数の公理とする流儀(流儀2)もあります。
ちなみに,集合論では $0$ を空集合に対応させ,$S(a)=a\cup\{a\}$ として以下のように自然数を構成することが多いです(フォンノイマンの構成法):
$0=\{\}$(空集合)
$1=S(0)=0\cup \{0\}=\{0\}=\{\{\}\}$
$2=S(1)=1\cup \{1\}=\{1,0\}=\{\{\{\}\},\{\}\}$
$3=S(2)=2\cup \{2\}=\{2,1,0\}=\{\{\{\{\}\},\{\}\},\{\{\}\},\{\}\}$
カッコがたくさんあってキモいですが,これはちゃんとした集合です。空集合に対応させるのは $1$ よりも $0$ の方がいいですね。