最終更新:2019/04/15

重要な一次変換を表す5つの行列

分野: 座標,ベクトル  レベル: 最難関大学

一次変換とは,行列 $A$ のかけ算による変換です。行列 $A$ に対応する一次変換は,$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ を $A\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ に写します。

一次変換は,いろいろな例を見ると理解が深まります。この記事では,応用上重要な一次変換を5つ紹介します。

x軸に関する折り返し

$A=\begin{pmatrix}1 & 0 \\0 & -1\end{pmatrix}$
という行列に対する一次変換を考えてみます。

この変換によって,$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ という点は
$\begin{pmatrix}1 & 0 \\0 & -1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x\\-y\end{pmatrix}$
に写ります。

つまり,$y$ 座標だけをマイナス1倍する変換なので「$x$ 軸に関する折り返し」を表す一次変換です。

y軸に関する折り返し

同様に,
$A=\begin{pmatrix}-1 & 0 \\0 & 1\end{pmatrix}$
という行列に対する一次変換は「$y$ 軸に関する折り返し」を表します。

実際,この変換によって,$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ という点は
$\begin{pmatrix}-1 & 0 \\0 & 1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-x\\y\end{pmatrix}$
に写ります。

原点に関する対称移動

$A=\begin{pmatrix}-1 & 0 \\0 & -1\end{pmatrix}$
という行列に対する一次変換を考えてみます。

この変換によって,$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ という点は $\begin{pmatrix}-x\\-y\end{pmatrix}$
に写ります。これは,原点に関する対称移動です。

ここまでのまとめ

一次変換(鏡像)

今までの結果をまとめます。

1:$x$ 軸に関する折り返し
$A_X=\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix}$

2:$y$ 軸に関する折り返し
$A_Y=\begin{pmatrix}
-1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix}$

3:原点に関する対称移動
$A_O=\begin{pmatrix}
-1 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix}$

簡単な計算により,$A_XA_Y=A_YA_X=A_O$ が分かります。これは「 $x$ 軸に関して折り返してから $y$ 軸に関して折り返すのは原点に関して対称移動するのと同じ」ということと対応しています。

また,$A_X^2=A_Y^2=A_O^2=I$ も分かります。
これは「$x$ 軸に関する対称移動を2回ほどこすと何もしないのと同じ(恒等変換)」などと対応しています。

このように,「行列の積」と「変換の合成」が対応しているので,行列積を計算すると変換の間の意味付けができます。逆に,行列積の計算により,合成変換に対応する行列を求めることができます。

「行列積と変換の合成が対応していること」は線形代数や群論をはじめ大学の数学で大活躍します。

回転行列

次は,座標平面での計算の際に最も活躍する公式です。

4:原点を中心とした回転行列
$R_\theta=\begin{pmatrix}
\cos\theta & -\sin\theta \\
\sin\theta & \cos\theta
\end{pmatrix}$

点$(r\cos\alpha,r\sin\alpha)$ を点$(r\cos(\alpha+\theta),r\sin(\alpha+\theta))$ に対応させる変換,つまり原点を中心に反時計回りに $\theta$ 回転させる行列です。
回転が一次変換で表せるというのは自明ではない驚くべき事実です。これは,三角関数の加法定理に基づいています。

回転行列の例

原点以外を回転の中心としたい場合はベクトルを回転すると捉えればよいです。

(例)座標平面上の正三角形 $A,B,C$ において $\overrightarrow{AC}=R_{\tfrac{\pi}{3}}\overrightarrow{AB}$

原点を通る直線に関する折り返し

最後は少し難しいです。$x$ 軸となす角が $\theta$ である直線:
$y=(\tan\theta)x$
に関する折り返しについて考えます。この変換に対応する行列 $L_{\theta}$ を求める際に,先ほど述べた「行列積は合成変換に対応する」という事実が活躍します。

折り返し

「直線 $l$ に関する折り返し=原点中心に$-\theta$ 回転→ $x$ 軸に関して対称移動→原点中心に $\theta$ 回転」とみなすことができるので, $L_{\theta}=R_{\theta}A_XR_{-\theta}$ となります。
(変換は右から施されるので積の順番に注意)
よって,$L_{\theta}$ は,
$\begin{pmatrix}
\cos\theta & -\sin\theta \\
\sin\theta & \cos\theta
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
\cos\theta & \sin\theta \\
-\sin\theta & \cos\theta
\end{pmatrix}$
となります。この行列積を,倍角の公式を用いて計算すると以下のようになります。

5:直線に関する折り返し
$R_\theta=\begin{pmatrix}
\cos 2\theta & \sin 2\theta \\
\sin 2\theta & -\cos 2\theta
\end{pmatrix}$

特に,回転行列と直線の折り返しは,座標平面を用いてゴリゴリ計算するときに機械的に計算できるので覚えておくと便利です。数学オリンピックなどの難しい図形問題を座標で解くときに計算量を減らす手助けとなります。

大学数学を学んで,行列=一次変換=線形写像の大切さを思い知りました