
$r(\theta)$ が連続関数のとき,極方程式 $r=r(\theta)$ で表される曲線と $\theta=\alpha, \beta$ で囲まれる部分の面積は,
$\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}\dfrac{1}{2}r^2(\theta)d\theta$
この公式が使える問題はさほど出題されませんが,運良く巡り合えれば相当な時間短縮になります。
極座標の面積公式を用いる例,公式の証明,諸注意を整理しました。
極方程式の面積公式の使用例1
まずは一番簡単な例である円の面積を求めてみます。
半径 $R$ の円の方程式は極座標では
$r=R$
と表されます。
よって,半径 $R$ の円の面積は,
$\displaystyle\int_0^{2\pi}\dfrac{1}{2}R^2d\theta=\pi R^2$
となり確かに正しく求められています。
極方程式の面積公式の使用例2
次は京大の入試問題です。(小問を省略)
問題
媒介変数 $t$ $(0\leq t\leq \dfrac{\pi}{2})$ を用いて $x=e^{-t}\cos t, y=e^{-t}\sin t$ と表される曲線 $C$ と $x$ 軸,$y$ 軸で囲まれた領域の面積 $S$ を求めよ。
正攻法だと,まず微分を用いて曲線 $C$ の概形を書いてから積分する必要があります。面積公式を用いればそんな面倒くさい計算をせずとも解くことができます!

解答
曲線 $C$ を極座標表示できないか考えてみる。 $C$ 上の点$(x,y)$ における $r$ と $\theta$ を計算してみると,
$r=\sqrt{x^2+y^2}=e^{-t}\\
\tan\theta=\dfrac{y}{x}=\tan t$
となるので,$r=e^{-\theta}$ が曲線 $C$ の極座標表示であることが分かる。
よって,極座標の面積公式より,
$S=\displaystyle\int_0^{\tfrac{\pi}{2}}\dfrac{1}{2}e^{-2\theta}d\theta\\
=[-\dfrac{e^{-2\theta}}{4}]_0^{\tfrac{\pi}{2}}\\
=\dfrac{1-e^{-\pi}}{4}$
極座標の面積公式の証明
記述式の試験でこの公式を使うときには,なぜこの公式が正しいのか簡単に言及した方がよいでしょう。
その場合は以下の「大雑把な説明」を解答に添えておきましょう。気になる人のために厳密な証明も載せておきます。

・大雑把な説明
偏角が $\theta$ から $\theta+d\theta$ の部分に関して考えると,$d\theta$ が十分小さいときは半径 $r(\theta)$ の扇型の面積とみなせて,
$\dfrac{1}{2}r(\theta)^2d\theta$ となる。
これを $\theta=\alpha$ から $\beta$ まで積分すると求めたい面積が得られる。
・厳密な説明
なぜ定積分で面積が求まるのかと同じ議論を極座標で行うだけです。
証明
$r=r(\theta)$ と $\theta=\alpha, \theta=t$ で囲まれた部分の面積を $S(t)$ とおく。
$t$ を少し大きくして $t+\Delta t$ としたときに $S(t)$ がどれくらい変化するか考えると,微小な扇型の面積を考えることにより $\dfrac{1}{2}m^2\Delta t\leq S(t+\Delta t)-S(t)\leq \dfrac{1}{2}M^2\Delta t$
ただし,$m$ は $t$ から $t+\Delta t$ 内の $r(\theta)$ の最小値で $M$ は最大値。
各辺を $\Delta t$ で割る:
$\dfrac{1}{2}m^2 \leq \dfrac{S(t+\Delta t)-S(t)}{\Delta t}\leq \dfrac{1}{2}M^2$
ここで,各辺 $\Delta t\to 0$ の極限を取る。 $r(t)$ は連続関数なので,左辺と右辺は $\dfrac{1}{2}r^2(t)$ に収束し,中辺は微分の定義より $S'(t)$ 。
よって,はさみ打ちの原理より, $S'(t)=\dfrac{1}{2}r^2(t)$
となり極座標の面積公式が示された。
Tag: 積分を用いた面積,体積の求積公式まとめ