フォードの円

フォードの円

中心が (qp,12p2)\left(\dfrac{q}{p},\dfrac{1}{2p^2}\right) で直径が 1p2\dfrac{1}{p^2} である円を並べると美しい。

フォードの円と呼ばれる美しい円たちについて紹介します。

フォードの円とは

まず,値が 00 以上 11 以下で,分母が nn 以下の既約分数を並べます。例えば n=4n=4 のとき,

01,14,13,12,23,34,11\dfrac{0}{1},\dfrac{1}{4},\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{2},\dfrac{2}{3},\dfrac{3}{4},\dfrac{1}{1}

という感じです(左端は 01\dfrac{0}{1} ,右端は 11\dfrac{1}{1} とします)。

ちなみに,この数列はファレイ数列と呼ばれます。

次に,各分数 qp\dfrac{q}{p} に対して,中心が (qp,12p2)\left(\dfrac{q}{p},\dfrac{1}{2p^2}\right) で直径が 1p2\dfrac{1}{p^2} である円を書きます。各円は xx 軸に接することに注意してください。

このとき, 隣り合う分数に対応する円は互いに接します!この円(たち)のことをフォードの円と言います。

n=4n=4 のときは冒頭の図のような感じです。

接することの証明

ファレイ数列の性質を使います。→ファレイ数列の4つの性質とその証明

証明

隣り合う既約分数 qipi\dfrac{q_i}{p_i}qi+1pi+1\dfrac{q_{i+1}}{p_{i+1}} に対応する円が接することを証明する。

それぞれの円の中心間の距離を dd とおくと,

d2=(qipiqi+1pi+1)2+(12pi212pi+12)2d^2=\left(\dfrac{q_i}{p_i}-\dfrac{q_{i+1}}{p_{i+1}}\right)^2+\left(\dfrac{1}{2p_{i}^2}-\dfrac{1}{2p_{i+1}^2}\right)^2

一方,2つの円の半径を ri,ri+1r_i,r_{i+1} とおくと,

(ri+ri+1)2=(12pi2+12pi+12)2(r_i+r_{i+1})^2=\left(\dfrac{1}{2p_i^2}+\dfrac{1}{2p_{i+1}^2}\right)^2

この2つが等しいことを証明すればよい。差を計算すると,

d2(ri+ri+1)2=(qipiqi+1pi+1)222pi2pi+12=(qipi+1piqi+1pipi+1)21pi2pi+12d^2-(r_i+r_{i+1})^2\\ =\left(\dfrac{q_i}{p_i}-\dfrac{q_{i+1}}{p_{i+1}}\right)^2-\dfrac{2}{2p_i^2p_{i+1}^2}\\ =\left(\dfrac{q_ip_{i+1}-p_iq_{i+1}}{p_ip_{i+1}}\right)^2-\dfrac{1}{p_i^2p_{i+1}^2}

ここで,ファレイ数列の性質3より,qipi+1piqi+1=1q_ip_{i+1}-p_iq_{i+1}=-1 なので,上式は 00 になる。

フォードの円の面積の総和

分母の上限 nn をどんどん大きくしていったときのフォードの円の面積の総和を計算してみましょう(ただし,便宜上 01\dfrac{0}{1} に対応する円は除きます)。

まず,分母が pp である既約分数は,ϕ(p)\phi(p) 個あります。→オイラーのファイ関数のイメージと性質

よって,それらの分数に対応する円の面積の和は,

π(12p2)2×ϕ(p)\pi \left(\dfrac{1}{2p^2}\right)^2\times \phi(p)

したがって,全てのフォードの円の面積の和は,

π4p=1ϕ(p)p4\dfrac{\pi}{4}\displaystyle\sum_{p=1}^{\infty}\dfrac{\phi(p)}{p^4}

となります。

実は,上式はゼータ関数を用いて

π4ζ(3)ζ(4)\dfrac{\pi}{4}\dfrac{\zeta(3)}{\zeta(4)}

と書けることが知られています。

参考文献:Introduction to Analytic Number Theory

具体的な値は 0.870.87 くらいです。

※1998年東大理系前期第3問が,フォードの円に関連する問題のようです!(読者の方に教えていただきました)

ゼータ関数で書けることの証明はきちんと理解していません(大雑把に証明を読んだ程度)が,美しいです!