カージオイド曲線のグラフ,面積,長さ

カージオイド曲線の定義

極方程式 r=a(1+cosθ)r=a(1+\cos\theta) で表される曲線をカージオイド曲線と言う。

カージオイド曲線の性質を整理しました。

グラフの概形

カージオイドのグラフは,図のように「まるいハートを横に倒した曲線」です。

ハートなのでカージオイドは心臓形とも呼ばれます。

カージオイドのグラフ

以下の3つの性質を意識することで,グラフを簡単に描けます。

  1. 極方程式 r=a(1+cosθ)r=a(1+\cos\theta) にいろいろな点を代入すると,
  • θ=0\theta=0 のとき r=2ar=2a
  • θ=π3\theta=\dfrac{\pi}{3} のとき r=32ar=\dfrac{3}{2}a
  • θ=23π\theta=\dfrac{2}{3}\pi のとき r=a2r=\dfrac{a}{2}
  • θ=π\theta=\pi のとき r=0r=0
  1. 0θπ0\leqq \theta\leqq \pi では θ\theta の増加に伴い rr は減少する

  2. (r,θ)(r,\theta) を通るなら (r,θ)(r,-\theta) も通るので xx 軸に関して対称

媒介変数表示

カージオイドの媒介変数表示は,

x=a(1+cosθ)cosθx=a(1+\cos\theta)\cos\theta
y=a(1+cosθ)sinθy=a(1+\cos\theta)\sin\theta

導出

極方程式 r=a(1+cosθ)r=a(1+\cos\theta) を直交座標への変換式: x=rcosθ,y=rsinθx=r\cos\theta,y=r\sin\theta

に代入して rr を消去すると媒介変数表示を得る。

微分と増減表

さきほどはグラフの概形を描きましたが,「媒介変数表示の微分,増減表」でグラフの形を確かめてみましょう。

計算

0θπ0\leqq\theta\leqq\pi の範囲で考える。

微分すると

dxdθ=a(sinθ2cosθsinθ)=asinθ(1+2cosθ)\dfrac{dx}{d\theta}=a(-\sin\theta-2\cos\theta\sin\theta)\\=-a\sin\theta(1+2\cos\theta)

これが 00 になるのは θ=0,23π,π\theta=0,\dfrac{2}{3}\pi,\pi

dydθ=a(cosθsin2θ+cos2θ)=a(2cos2θ+cosθ1)=a(2cosθ1)(cosθ+1)\dfrac{dy}{d\theta}=a(\cos\theta-\sin^2\theta+\cos^2\theta)\\ =a(2\cos^2\theta+\cos\theta-1)\\ =a(2\cos\theta-1)(\cos\theta+1)

これが 00 になるのは θ=π3,π\theta=\dfrac{\pi}{3},\pi

以上より増減表は図のようになる。

カージオイドの増減表

確かにさきほど描いたグラフが得られる。

カージオイドのグラフ

軌跡

定理

カージオイドは「直径 aa の固定された円 C1C_1」のまわりを「直径 aa の円 C2C_2 が転がる」ときに C2C_2 上の1点が描く軌跡として表せる。

証明の概要

図において

OPundefined=OA1undefined+A1A2undefined+A2Pundefined\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA_1}+\overrightarrow{A_1A_2}+\overrightarrow{A_2P}

である。

カージオイドの媒介変数表示

  • OA1undefined=(a2,0)\overrightarrow{OA_1}=\left(\dfrac{a}{2},0\right)

  • A1A2undefined=a(cosθ,sinθ)\overrightarrow{A_1A_2}=a\left(\cos\theta,\sin\theta\right)
    (円 C2C_2 の中心が θ\theta だけ回転した時を考える)

  • A2Pundefined=a2(cos2θ,sin2θ)\overrightarrow{A_2P}=\dfrac{a}{2}\left(\cos 2\theta,\sin 2\theta\right)
    (そのとき PPxx 軸の正の向きから 2θ2\theta 回転している※)

以上より媒介変数表示は点 PP の座標を表すことで

x=a(12+cosθ+12cos2θ)=a(1+cosθ)cosθx=a\left(\dfrac{1}{2}+\cos\theta+\dfrac{1}{2}\cos 2\theta\right)\\ =a(1+\cos\theta)\cos\theta

y=a(sinθ+sin2θ2)=a(1+cosθ)sinθy=a\left(\sin\theta+\dfrac{\sin 2\theta}{2}\right)\\ =a(1+\cos\theta)\sin\theta

となりカージオイドの媒介変数表示と一致する。

※をきちんと説明するのがけっこう大変です。ハイポサイクロイドの媒介変数表示の導出と考え方は同じです。

カージオイドの面積

カージオイド曲線 r=a(1+cosθ)r=a(1+\cos\theta) で囲まれた図形の面積は S=32πa2S=\dfrac{3}{2}\pi a^2

媒介変数表示を用いて xyxy 座標で計算することもできますが,極方程式のまま計算するのが楽です。 →極方程式の面積公式と例題

証明

極座標の面積公式より

S=1202πr2dθ=a2202π(1+cosθ)2dθ=a2202π(1+2cosθ+1+cos2θ2)dθ\begin{aligned} S &= \dfrac{1}{2}\int_0^{2\pi}r^2d\theta\\ &= \dfrac{a^2}{2} \int_0^{2\pi} (1+\cos\theta)^2d \theta\\ &= \dfrac{a^2}{2} \int_0^{2\pi} \left(1+2\cos\theta+\frac{1+\cos 2\theta}{2}\right) d\theta \end{aligned}

ここで,cosθ,cos2θ\cos\theta,\cos 2\theta は一周期ぶん積分すると 00 になるので

S=a22322π=32πa2S=\dfrac{a^2}{2}\cdot\dfrac{3}{2}\cdot 2\pi=\dfrac{3}{2}\pi a^2 を得る。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT4では,関連する練習問題と計算ミスを減らすコツを紹介しています。

カージオイド曲線の長さ

r=a(1+cosθ)(0θ2π)r=a(1+\cos\theta)\:(0\leqq\theta\leqq 2\pi) の長さは, l=8al=8a

こちらも極座標のまま計算するのが楽です。極座標の弧長積分公式:

l=θ1θ2r2+(drdθ)2dθ l= \int_{\theta_1}^{\theta_2} \sqrt{r^2+\left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2} d\theta

→曲線の長さを計算する積分公式(弧長積分)で解説しています。

証明

上半分の長さの2倍と考える:

l=20πr2+(drdθ)2dθ=20πa2(1+cosθ)2+a2sin2θdθ=20π2a2+2a2cosθdθ=2a0π4cos2θ2dθ=4a0πcosθ2dθ=8a\begin{aligned} l &= 2 \int_0^{\pi} \sqrt{r^2+\left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2} d\theta\\ &=2 \int_0^{\pi} \sqrt{a^2(1+\cos\theta)^2+a^2\sin^2\theta} d\theta\\ &=2 \int_0^{\pi} \sqrt{2a^2+2a^2\cos\theta} d\theta\\ &=2a \int_0^{\pi} \sqrt{4\cos^2\frac{\theta}{2}} d\theta\\ &=4a \int_0^{\pi} \cos\frac{\theta}{2} d\theta\\ &=8a \end{aligned}

直交座標表示

カージオイドの xyxy 直交座標での表示は,

a2(x2+y2)=(x2+y2ax)2a^2(x^2+y^2)=(x^2+y^2-ax)^2

あまり綺麗にはならないので xyxy 座標表示は覚える必要ありません。

導出

極方程式の両辺に rr をかけると r2=ar+arcosθ r^2=ar+ar\cos\theta より ar=x2+y2ax ar=x^2+y^2-ax

さらに両辺を二乗すると xxyy だけの式に変形できる。

ちなみに,カージオイドという名前のペン回しの技があります。