$y=\sin x$ の逆関数を $y=\mathrm{Arcsin}x$ などと書き,逆三角関数と呼ぶ。
逆三角関数のきちんとした定義,グラフ,微分公式などを解説します。
逆三角関数の定義
$y$ を $1$ つ決めた時に $y=\sin x$ を満たす $x$ はたくさんあり,それらをまとめて $x=\mathrm{arcsin}y$ などと書きます。
ただし,対応する $x$ がたくさんあるとめんどうなのできちんとした逆関数を定義するために三角関数の定義域を制限します。
例えば定義域を$-\dfrac{\pi}{2}\leq x\leq\dfrac{\pi}{2}$ に限れば,$y=\sin x$ は単射になり逆関数を定義することができます。(逆関数の3つの定義と使い分け)
この逆関数のことを $y=\mathrm{Arcsin}x$ や $y=\sin^{-1}x$ などと書きます。($A$ が大文字になっていることに注意。)
同様に $y=\cos x$ の定義域を $0\leq x\leq \pi$ に制限したものの逆関数を $\mathrm{Arccos}x$,
$y=\tan x$ の定義域を$-\dfrac{\pi}{2} <x <\dfrac{\pi}{2}$ に制限したものの逆関数を $\mathrm{Arctan }x$ と書きます。
以上 $3$ つを合わせて逆三角関数と呼びます。
逆三角関数のグラフ

逆関数のグラフはもとの関数を $y=x$ に関して折り返したものなので,逆三角関数のグラフは図のようになります。
赤が $y=\mathrm{Arcsin}x$
青が $y=\mathrm{Arccos}x$
緑が $y=\mathrm{Arctan}x$
です。
逆三角関数の微分
$y=\mathrm{Arcsin} x$ のとき $y’=\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}$
$y=\mathrm{Arccos} x$ のとき $y’=-\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}$
$y=\mathrm{Arctan} x$ のとき $y’=\dfrac{1}{1+x^2}$
逆関数の微分を求めるよい練習問題です。入試でも逆三角関数の微分にまつわる問題がたまに出題されます。→逆関数の微分公式を例題と図で理解する
証明
・ $\mathrm{Arcsin}$ について
$y=\mathrm{Arcsin} x$
のとき $x=\sin y$ の両辺を $x$ で微分して,
$1=y’\cos y$
よって $y’=\dfrac{1}{\cos y}$
また,$-\dfrac{\pi}{2}\leq y\leq \dfrac{\pi}{2}$ より,
$\cos y=\sqrt{1-\sin^2 y}=\sqrt{1-x^2}$
となり題意の公式を得る。
$\mathrm{Arccos}$ についても同様。
・ $\mathrm{Arctan}$ について
$y=\mathrm{Arctan} x$
のとき $x=\tan y$ の両辺を $x$ で微分して,
$1=y’\dfrac{1}{\cos^2 y}$
よって $y’=\cos^2 y=\dfrac{1}{1+\tan^2y}=\dfrac{1}{1+x^2}$
となり題意の公式を得る。
逆三角関数にまつわる積分公式
$\displaystyle\int\dfrac{1}{\sqrt{a^2-x^2}}dx=\mathrm{Arcsin} \dfrac{x}{a}+C$
$\displaystyle\int\dfrac{1}{a^2+x^2}dx=\dfrac{1}{a}\mathrm{Arctan} \dfrac{x}{a}+C$
先ほどの微分公式と合成関数の微分を用いて右辺を微分すると左辺と一致することが分かります。
このように不定積分にすると $\mathrm{Arcsin}$ などが明示的に出てしまうので高校数学の範囲では定積分しか出題されません。
$\dfrac{1}{\sqrt{a^2-x^2}}$ の定積分は $x=a\sin\theta (x=a\cos\theta)$ とおくとうまくいく。
$\dfrac{1}{a^2+x^2}$ の定積分は $x=a\tan\theta$ とおくとうまくいく。
というのは逆三角関数の微分公式のおかげということですね。
Tag: 数検1級の範囲と必要な公式まとめ
Tag: 積分公式一覧