2015/12/26

スカラー三重積とベクトル三重積

分野: 座標,ベクトル  レベル: 大学数学

3つの空間ベクトル $a,b,c$ に対して
$a\cdot (b\times c)$ をスカラー三重積,
$a\times (b\times c)$ をベクトル三重積と言う。

三重積について

内積はスカラー,2つのベクトルの外積はベクトルです。→内積と外積の意味と嬉しさ

よって,$a\cdot (b\times c)$ はスカラー,$a\times (b\times c)$ はベクトルです。

スカラー三重積の性質

以下では $a=(a_x,a_y,a_z)$,$b=(b_x,b_y,b_z)$,$c=(c_x,c_y,c_z)$ とします。まずはスカラー三重積を成分表示してみます。

$a\cdot (b\times c)=a_xb_yc_z-a_xb_zc_y+a_yb_zc_x-a_yb_xc_z+a_zb_xc_y-a_zb_yc_x$

導出

$b\times c=(b_yc_z-b_zc_y,b_zc_x-b_xc_z,b_xc_y-b_yc_x)$
と $a$ の内積を計算すればよい。

成分表示から以下のことが分かります:

  • $a\cdot (b\times c)=\det\begin{pmatrix}a_x&a_y&a_z\\b_x&b_y&b_z\\c_x&c_y&c_z\end{pmatrix}$
    これは行列式の定義から分かります。
  • サラスの公式と合わせると,$a\cdot (b\times c)$ は $a,b,c$ が張る平行六面体の(向き付き)体積を表すことが分かります。
  • $a\cdot (b\times c)=b\cdot (c\times a)=c\cdot (a\times b)$ が成立します。なお,$a\cdot (b\times c)=a\cdot (c\times b)$ などは成立しません($-1$ 倍される)。

ベクトル三重積の性質

$a\times (b\times c)=(a\cdot c)b-(a\cdot b)c$

$b\times c$ は $b$ と $c$ に垂直なベクトルです。そして $a\times (b\times c)$ は $b\times c$ に垂直なベクトルなので,結局 $a\times (b\times c)$ は $b$ と $c$ が定める平面内のベクトルになります。

以上の考察から,ある実数 $p,q$ が存在して $a\times (b\times c)=pb+qc$ であることは分かります。実は $p=a\cdot c$ で $q=-a\cdot b$ であるというのが上の定理の主張です。

証明

上の等式の左辺の $x$ 成分は,
$a_y(b\times c)_z-a_z(b\times c)_y\\
=a_y(b_xc_y-b_yc_x)-a_z(b_zc_x-b_xc_z)\\
=a_yb_xc_y-a_yb_yc_x-a_zb_zc_x+a_zb_xc_z$
(そんなにきれいな式ではない)

右辺の $x$ 成分は,
$(a_xc_x+a_yc_y+a_zc_z)b_x-(a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z)c_x\\
=a_yb_xc_y+a_zb_xc_z-a_yb_yc_x-a_zb_zc_x$
となり一致する。 $y$ 成分,$z$ 成分についても同様。

また,上の公式および,順番を入れ替えた式:
$a\times (b\times c)=(a\cdot c)b-(a\cdot b)c$
$b\times (c\times a)=(b\cdot a)c-(b\cdot c)a$
$c\times (a\times b)=(c\cdot b)a-(c\cdot a)b$
を足し合わせることで,
$a\times (b\times c)+b\times (c\times a)+c\times (a\times b)=\overrightarrow{0}$
が分かります。

けっこうきれいですが,個人的にはあまり使わない公式です。
分野: 座標,ベクトル  レベル: 大学数学