2015/09/01

超越数の意味といくつかの例

分野: その他  レベル: マニアック

代数方程式の解ではない数のことを超越数と言う。

超越数とは

  • 超越数とは代数方程式の解ではない数です。つまり, $a$ が超越数 $\iff$ どんな有理数係数多項式 $f(x)$ を持ってきても,$f(a)\neq 0$ です。
  • 有理数は超越数ではありません。 $\dfrac{q}{p}$ は $px-q=0$ という一次方程式の解だからです。
  • 無理数でも超越数とは限りません。例えば $\sqrt{2}$ は $x^2-2=0$ という二次方程式の解なので超越数ではありません(二次方程式の解である無理数を二次の無理数と言います)。無理数と超越数を混同する人が多いので注意して下さい。

超越数の例

  • 自然対数の底 $e$(証明は後述)
  • 円周率 $\pi$
  • $0$ でない代数的数 $\theta$ に対する $\sin\theta,\cos\theta,\tan\theta$

(この二つはリンデマンの定理という飛び道具から分かる)

  • $2^{\sqrt{2}}$
  • $e^{\pi}$

(この二つはゲルフォント–シュナイダーの定理という飛び道具から分かる)

eが超越数であることの証明

自然対数の底eが超越数であることの証明は簡単ではありませんが,一応高校数学のみで理解できます。概略を紹介します。
The Transcendence of e and πを参考にしました。

証明の概略

$e$ が超越数でないと仮定する。
このとき,うまく整数 $r,a_0\:(\neq 0),a_1,\cdots,a_r$ を選ぶと
$a_0+a_1e+a_2e^2+\cdots +a_re^r=0$ とできる(*)。

次に,十分大きい素数 $p$ を用いて $f(x)=x^{p-1}(x-1)^p(x-2)^p\cdots (x-r)^p$,$I(t)=\displaystyle\int_0^te^{t-u}f(u)du$ とおき,$J=a_0I(0)+a_1I(1)+\cdots +a_rI(r)$ という量を考える。

$p$ が十分大きいとき,以下の不等式1,2は矛盾する(階乗の方が指数関数より強い)。よって背理法により $e$ は超越数である。

1. $|J|\geq (p-1)!$
理由:$f(x)$ の次数を $n=(r+1)p-1$ とおく。 $I(t)$ は指数関数× $n$ 次式の積分なので $n$ 回部分積分すれば計算できる。結果は,$I(t)=e^t\displaystyle\sum_{j=0}^nf^{(j)}(0)-\sum_{j=0}^nf^{(j)}(t)$
となる。よって,
$J=\displaystyle\sum_{t=0}^ra_tI(t)\\
=\displaystyle\sum_{j=0}^nf^{(j)}(0)\sum_{t=0}^ra_te^t-\sum_{t=0}^r\sum_{j=0}^na_t\:f^{(j)}(t)$
ここで,第一項は(*)より $0$ になる。
また,ライプニッツルールを用いて $f^{(j)}(t)$ を実際に計算すると,$j=p-1,\;t=0$ のときは$(p-1)!(-1)^{rp}(r!)^p$ となり,残りは $p!$ の倍数($0$ も含む)となる。
よって,$J$ は$(p-1)!$ の倍数であり,$p!$ の倍数ではない。

2. $1$ より大きい($p$ には依存しない)実数 $c$ が存在して,$|J| \leq c^p$
理由:$f(x)$ の定義より,$0\leq x\leq r$ のとき $|f(x)|\leq r^{(r+1)p}$
これと $I(t)$ の定義より,$0\leq t\leq r$ のとき $I(t) \leq te^tr^{(r+1)p}$
これと $J$ の定義より,$|J|\leq$ $p$ によらない定数 $\cdot (r^{r+1})^p$

eが無理数であることの証明よりだいぶ難しいです。

「ゲルフォントシュナイダー」という名前,かっこいいですね。
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