2015/04/29

対称行列の固有値と固有ベクトルの性質の証明

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

任意の実対称行列 $A$ について,
1.固有値は実数である
2.異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交する


対称行列の重要で美しい2つの性質の証明を解説します。

具体例

証明の前にまずは具体例から。

固有値と固有ベクトルの定義,求め方については固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法を参照して下さい。

例題

$A=\begin{pmatrix}5 &2\\2 & 2\end{pmatrix}$ の固有値と固有ベクトルを求めよ。

解答

固有方程式は $\lambda^2-7\lambda+6=0$ なので,固有値は $\lambda=1,6$
$\lambda=1$ に対応する固有ベクトルは $\begin{pmatrix}1\\-2\end{pmatrix}$
$\lambda=6$ に対応する固有ベクトルは $\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}$

固有値は実数で,二本の固有ベクトルは直交する!

固有値が実数であることの証明

証明

$A$ の一つの固有値を $\lambda$,対応する固有ベクトルを $x$ とおく。
固有値,固有ベクトルの定義より $Ax=\lambda x$
両辺の共役転置を取ると $x^{*}A=\overline{\lambda}x^*$

ここで,二次形式 $x^*Ax$ について二通りの変形をする。
一つ目の式より,$x^*Ax=\lambda x^*x=\lambda\|x\|^2$

二つ目の式より,$x^*Ax=\overline{\lambda}x^*x=\overline{\lambda}\|x\|^2$

以上から $\|x\|^2(\lambda-\overline{\lambda})=0$
固有ベクトルの定義より $x$ は $0$ ベクトルではないので $\|x\|\neq 0$ よって $\lambda=\overline{\lambda}$ となる。つまり $\lambda$ は実数。

補足

  • $\|x\|$ は $x$ のノルム(長さ)。つまり各成分の二乗和のルート。
  • $x^*$は $x$ の共役転置。$(Ax)^*=x^*A^*$が成立する。実対称行列については $A^*=A$

固有ベクトルが直交することの証明

証明

$A$ の固有値 $\lambda_1$ に対応する固有ベクトルを $x$,$\lambda_2$ に対応する固有ベクトルを $y$ とおく:
$Ax=\lambda_1x,\:Ay=\lambda_2y$
二つ目の式の共役転置を取る $y^{*}A=\lambda_2 y^{*}$

ここで,二次形式 $y^{*}Ax$ について二通りの変形をする。
$x$ についての式より,$y^{*}Ax=\lambda_1y^{*}x$

$y$ についての式より,$y^{*}Ax=\lambda_2y^{*}x$

よって,$y^{*}x(\lambda_1-\lambda_2)=0$
$\lambda_1\neq \lambda_2$ のとき $y^{*}x=0$ となり $x$ と $y$ は直交する。

注:この定理をベースに「対称行列は直交行列で対角化できる」という非常に重要な定理が導出されます。対称行列はいろいろなところに登場する&固有値,固有ベクトルに関して美しい理論があるために重宝します。

二つの定理の証明が似ているのも趣深いです。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学