2014/03/19

対称式を素早く正確に展開する3つのコツ

分野: 式の計算  レベル: 数学オリンピック

難関大学の入試問題や数学オリンピックの不等式証明問題では複雑な対称式を計算しなければならない問題が出題されます。

気合いで1つずつ展開すると脳のエネルギーを無駄に消費してしまうので,対称式の性質をうまく利用してサクッと展開できるようになっちゃいましょう!以下の3つのコツは主に3変数の展開で威力を発揮します。

コツ1:対称式は展開しても対称式

対称式の展開した式に,$ka^2$ という項があれば $kb^2, kc^2$ という項もあります。 $ka^2b$ という項があれば $kab^2, kb^2c, kbc^2, kc^2a, kca^2$ もあります。

当たり前のことなんですが,実戦で迅速に使いこなすには鍛錬が必要になります、具体例を見てみましょう。

例題1

$(a+b+c)(ab+bc+ca)$ の展開
解説:展開したときに,$a^3$ は出てこない,$a^2b$ の係数は1,$abc$ は3つ出てくるので係数は3。よって,他の項の係数はわざわざ計算する必要がなく。
$a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2+3abc$ ということが分かります。

上記の解説のプロセスを一瞬で頭の中で行います。慣れれば例題1程度なら10秒以内に展開できるようになります。この程度の問題ならわざわざ全部展開してもよいのですが,より複雑な式になるとスピードに断然差が出ます。

コツ2:多項定理を使いこなす

項数が3つの場合の多項定理は使いこなせるようになっておきましょう。
多項定理:$(a_1+a_2+a_3)^{n}={\displaystyle\sum_{k_i\geq 0, \sum k_i=n}}\left(\dfrac{n!}{k_1! k_2! k_3!}a_1^{k_1}a_2^{k_2}a_3^{k_3}\right)$

多項定理の存在はみなさんご存知だと思いますが,多項定理の一般形はなかなかにゴツい式で,実際に応用出来る人は少ないと思います。以下の例題2は頻出です。

例題2

$(a+b+c)^3$ の展開
解説:コツ1も利用する。対称性に注目して,$a^3, a^2b,abc$ の係数だけを求めればよい。
多項定理より,
$a^3$ の係数は,$\dfrac{3!}{3!0!0!}=1\\$
$a^2b$ の係数は,$\dfrac{3!}{2!1!0!}=3\\$
$abc$ の係数は,$\dfrac{3!}{1!1!1!}=6\\$
よって,
$a^3+b^3+c^3+3(a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2)+6abc$
と展開できる。

コツ3:係数の和に注目する

変数に全部1を代入してそろえる(またはそろっているか確認する)

3つのコツの中ではこれが一番無名ですが,重宝します。対称式じゃない場合も検算に使えます。

例題1(再登場):$(a+b+c)(ab+bc+ca)$ の展開
解説(改):展開したときに,$a^3$ は出てこない,$a^2b$ の係数は1→同様な項が6つ出てくるので係数の和は6。あとは $abc$ の係数 $k$ を求めればよいが,与式に $a=b=c=1$ を代入すると9になるので $6+k=9$ より $k=3$ が分かる。

少し練習すればこのプロセスが一瞬で処理できるようになります。

より複雑な例題でコツの威力を実感する

でわでわ,コツを使って複雑な式を倒しましょう。以下のような式を見たら展開のコツを知らない多くの人は「この式展開するのか、イヤだなあ、、」と思うことでしょう。逆にみなさんはガッツポーズしましょう。

例題3

$(a+b+c)^4$ の展開
解説:$a^4,a^3b,a^2b^2,a^2bc$ の係数を求めればよいが,多項定理からそれぞれ,
$\dfrac{4!}{4!0!0!}=1,\dfrac{4!}{3!1!0!}=4,\dfrac{4!}{2!2!0!}=6,\dfrac{4!}{2!1!1!}=12$ となるので以下のように展開できる。
$a^4+b^4+c^4+4(a^3b+ab^3+b^3c+bc^3+c^3a+ca^3)\\
+6(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)+12(a^2bc+ab^2c+abc^2)$
さらに,コツ3を使って一瞬で見直しする:
$a=b=c=1$ を代入すると,$(a+b+c)^4=81$
で展開された式は,$3+4\times6+6\times3+12\times3=81$
となり確かに一致しているので自信を持って次の問題に行ける。

ラスボスです。数学オリンピックの不等式証明問題の計算途中とかに出てきそうな式です。

例題4

$(a+b)(b+c)(c+a)(a+b+c)$ の展開
解説:例題3と同じく4次の斉次式なので,$a^4, a^3b, a^2b^2, a^2bc$ の係数を求めればよい。
$a^4$ の係数は $0$,  $a^3b$ の係数は1というのはすぐに分かる。残り2つは少し難しいが,$a^2b^2$ は $abab$ と $bbaa$ から出てくるので係数は2。よって,$a^2bc$ の係数 $k$ はコツ3から
$24=1\times 6+2\times 3+k\times 3$ より $k=4$ となり以下のように展開できる。
$a^3b+ab^3+b^3c+bc^3+c^3a+ca^3\\+2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)+4(a^2bc+ab^2c+abc^2)$

全部1を代入して確かめるのは手間がかからない上に強力な検算ツールだからおすすめ
分野: 式の計算  レベル: 数学オリンピック