2014/05/13

自然対数の底に収束することの証明

分野: 指数・対数関数  レベル: 最難関大学

自然対数の底:
数列 $a_n=(1+\dfrac{1}{n})^n$ の極限は存在するので,その値を $e$ と定義して自然対数の底(ネイピア数)と呼ぶ。

自然対数の底の収束

自然対数の底 $e$ の(同値な)定義はいくつかありますが,上記の定義が広く知られています。しかし,教科書では数列 $a_n$ の極限が存在する,すなわち収束すること自体は認めて自然対数の底を定義していました。

そこで,このページでは「 $a_n$ が収束すること」をそれなりにきちんと証明します。

以下の3ステップで証明します。

定理1:単調増加で上に有界な数列は収束する
定理2:$a_n$ は単調増加
定理3:$a_n$ は上に有界

後で説明するように定理1は高校数学の範囲で厳密な証明はできませんが,直感的には納得できる事実です。定理2、3は証明方法も美しく入試問題のテーマとしてちょうどよい難易度なのでオススメです。

定理1:単調で有界なら収束する

「上から抑えられている増え続ける数列は収束する」というのは直感的には当たり前です。同様に「下から抑えられている減り続ける数列は収束する」というのも成立します。

この場合の単調性は広義単調でOKです。つまり $a_n< a_{n+1}$ という強い条件が成立していなくても $a_n\leq a_{n+1}$ という条件でOKです。 こんなの証明するまでもなく自明だと感じられますが,厳密に証明するには実数の連続性の公理を使って収束先が実数から飛び出さないことを言う必要があります。

有理数の世界では単調有界でも収束しないこともある
$\sqrt{2}$ の近似数列 $a_1=1,a_2=1.4,a_3=1.41,\cdots$ は単調増加で上に有界だが収束先は $\sqrt{2}$ となり有理数の世界から飛び出している。

定理2:$a_n$ は単調増加

方針:示したいことは $a_n \leq a_{n+1}$ ですが,微分を使うために数列をつなげた関数 $f(x)=(1+\dfrac{1}{x})^x$ を考えます。このままでは計算しにくいので対数を取ってから微分します。

証明

$g(x)=x\log(1+\dfrac{1}{x})$ の $x > 0$ での単調増加性を示せばよい。
$g'(x)=-\dfrac{1}{x+1}+\log(1+\dfrac{1}{x})$
$g”(x)=\dfrac{1}{(x+1)^2}-\dfrac{1}{x(x+1)}\\=-\dfrac{1}{x(x+1)^2}< 0$
となり,$g'(x)$ は減少関数で $\displaystyle\lim_{x\to\infty}g'(x)=0$ なので,$x > 0$ で $g'(x) > 0$ が分かる。よって $g(x)$ は単調増加。


上の証明は非常にシンプルで入試問題の解答としてはよいのですが,「自然対数の底の存在を示す!」というこのページの目標を考えると,上記の定理の証明で対数関数の微分を用いるのは循環論法に陥っている気がします。

そこで,相加相乗平均の不等式を用いた技巧的な別解も紹介します:

(別の方法)
$n$ 個の $\dfrac{n+1}{n}$ と $1$ 個の $1$ に相加相乗平均の不等式を用いると,
$\dfrac{\frac{n+1}{n}\cdot n+1}{n+1} > \sqrt[n+1]{\left(\dfrac{n+1}{n}\right)^n}$
この式を整理すると $a_{n+1} > a_n$ となる。

定理3:$a_n$ は上に有界

方針:二項定理を用いて $a_n$ を評価します。具体的な値で上からおさえるためには等比数列を作りだす必要があります。

証明

二項定理より,
$a_n=(1+\dfrac{1}{n})^n\\
=\displaystyle\sum_{k=0}^n{}_nC_{k}\dfrac{1}{n^k}\\
=\displaystyle\sum_{k=0}^n\dfrac{1}{k!}1\cdot(1-\dfrac{1}{n})\cdot(1-\dfrac{2}{n})\cdots(1-\dfrac{k-1}{n})\\
\leq \displaystyle\sum_{k=0}^n\dfrac{1}{k!}\\
\leq 1+1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{2^3}+\cdots\\
\leq 1+\dfrac{1}{1-\tfrac{1}{2}}=3$

$a_n$ が上に有界であることを示した副産物として,ネイピア数が3より小さいことも示せました。

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