2015/11/21

対数正規分布の例と平均,分散


確率変数 $Y$ が正規分布に従うとき,$e^Y$ が従う分布を対数正規分布と言う。

前半は対数正規分布の応用例(ゆるい話),後半は対数正規分布の確率密度関数と平均,分散を計算します。

富の分布

各人が持っている資産の分布は対数正規分布っぽいと言われています。これを(少し強引ですが)説明してみます。

説明

対数正規分布のグラフ

人間は最初みんな資産を $C$ だけ持っている。人生のとあるイベント $i$ によって資産は $e^{Y_i}$ 倍される。ただし $Y_i$ は確率変数である。

イベント $1$ から $n$ まで起こった後の資産は $Ce^{Y_1+Y_2+\cdots +Y_n}$ である。

各 $Y_i$ がどのような分布に従うかは分からないが(長い時間経過したとき資産が減る人も増える人も同じくらいいるだろうということで)$Y_1+Y_2+\cdots +Y_n$ の期待値は $0$ と考える。

よって中心極限定理より,$n$ がそれなりに大きければ $Y=Y_1+Y_2+\cdots +Y_n$ は正規分布に従うと考えられる。つまり,資産 $Ce^Y$ は対数正規分布に従う。

なお,対数正規分布は裾が重い分布であり「お金持ちがけっこう多い」ことを表しています。

対数正規分布の確率密度関数

対数正規分布の確率密度関数は,$f(x)=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma x}\exp\left\{-\dfrac{(\log x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right\}\:\:(x> 0)$

$\mu$ と $\sigma\:(>0)$ はパラメータです。 $\exp x=e^x$ です。導出は確率変数の変数変換のよい練習になります。

導出

平均 $\mu$,分散 $\sigma^2$ の正規分布の確率密度関数は,
$g(y)=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\exp\left\{-\dfrac{(y-\mu)^2}{2\sigma^2}\right\}$
→正規分布の基礎的な知識まとめ

よって,$X=e^Y$ についての確率密度関数 $f(x)$ は,
$f(x)=g(y)\dfrac{dy}{dx}\\
=f(\log x)\dfrac{1}{x}\\
=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma x}\exp\left\{-\dfrac{(\log x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right\}$

対数正規分布の平均,分散

対数正規分布の平均は,$E[X]=\exp \left(\mu+\dfrac{\sigma^2}{2}\right)$
分散は,$V[X]=(e^{\sigma^2}-1)e^{2\mu+\sigma^2}$

平均の導出

$E[X]=E[e^Y]\\
=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^yg(y)dy\\
=\displaystyle\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\int_{-\infty}^{\infty}\exp \left\{-\dfrac{(y-\mu)^2}{2\sigma^2}+y\right\}dy$

ここで,$\exp$ の中身を平方完成すると,
$-\dfrac{y^2}{2\sigma^2}+\left(\dfrac{\mu}{\sigma^2}+1\right)y-\dfrac{\mu^2}{2\sigma^2}\\
=-\dfrac{1}{2\sigma^2}(y-\mu-\sigma^2)^2+\mu+\dfrac{\sigma^2}{2}$
となるので,$y-\mu-\sigma^2=t$ と置換すると,

$E[X]=\exp \left(\mu+\dfrac{\sigma^2}{2}\right)\cdot\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{t^2}{2\sigma^2}}dt$

定積分の値はガウス積分の公式より $\sqrt{2\pi}\sigma$ であるので,示したい式を得る。

分散の導出(概略)

期待値と分散に関する公式:$V[X]=E[X^2]-E[X]^2$ より,$E[X^2]$ を計算すればよい。 $E[X^2]=E[e^{2Y}]$ であり,平均の導出と同じような方法で計算でできる。

「正規分布の対数」ではなく「対数を取ると正規分布」です,ご注意下さい。

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