2014/05/11

ロジスティック写像と漸化式

分野: 数列  レベル: 最難関大学

一般項を求めるのが難しそうな漸化式を,三角関数を用いて求めることができる例を2つ紹介します。

ロジスティック写像

関数 $f(x)=Ax(1-x)$ をロジスティック写像といいます。ロジスティック写像は人口の推移を表す単純なモデルになっています。 $A$ は繁殖率を表します。

ロジスティック写像は簡単な関数でありながら「カオス」という複雑な挙動を示す興味深い関数です。カオス現象の知識を入試で問われることはありませんが,応用上重要な関数なので工学系の先生方が入試のテーマにしたくなるのではないかと思います。

今回は漸化式がテーマなので,ロジスティック写像に対応する漸化式:$a_{n+1}=Aa_n(1-a_n)$
を考えます。

一般的にこの漸化式は解けませんが,$A=4$ で初項 $a_1$ が $0\leq a_1\leq 1$ を満たす場合には一般項を簡単な式で表すことができます。頭の体操になるので答えを見る前にちょっと考えてみてください!

A=4の場合の漸化式の一般項

方針:$a_1=\sin^2\theta$ と置くと倍角公式が出現してうまくいきます。知らないと厳しい問題です。

(解法)
$0\leq a_1\leq 1$ のとき,
$a_1=\sin^2\theta$ とおけて,
$a_2=4\sin^2\theta(1-\sin^2\theta)\\
=(2\sin\theta\cos\theta)^2\\
=\sin^2(2\theta)$
以下同様にして $a_n=\sin^2(2^{n-1}\theta)$ が示せる。(厳密には数学的帰納法を用いる)

倍角の公式を使うためには $A=4$ であることと初項が $0$ 以上 $1$ 以下であることが必要だということが分かります。

それでは,似たようなタイプの漸化式をもう1つ紹介します。

三角関数を用いた漸化式の解法

問題

$a_n=\sqrt{\dfrac{1+a_{n-1}}{2}}$,$-1\leq a_1\leq 1$ のとき数列の一般項 $a_n$ を簡単な式で表わせ。

方針:漸化式の形を見ると $\cos$ の半角の公式を用いればよいことが分かります。

解答

$a_1=\cos\theta (0\leq \theta\leq \pi)$ とおくと,
$a_2=\sqrt{\dfrac{1+\cos\theta}{2}}\\
=\cos\dfrac{\theta}{2}$
ただし,$\cos\dfrac{\theta}{2}\geq 0$ であることを用いた。
以下同様にして $a_n=\cos\dfrac{\theta}{2^{n-1}}$ が示せる。(厳密には帰納法)

追記:北大の入試問題

2010年北大理系で上記の問題と本質的に同じ問題が出題されていました。(教えてくださった読者の方ありがとうございました!)

問題

正の実数 $r$ と$-\dfrac{\pi}{2}<\theta <\dfrac{\pi}{2}$ の範囲の実数 $\theta$ に対して $a_0=r\cos\theta,b_0=r$ とおく。 $a_n,b_n$ を漸化式 $a_n=\dfrac{a_{n-1}+b_{n-1}}{2},b_n=\sqrt{a_nb_{n-1}}$ により定める (1)$\dfrac{a_1}{b_1},\dfrac{a_2}{b_2}$ を $\theta$ で表わせ。 (2)$\dfrac{a_n}{b_n}$ を $n$ と $\theta$ で表わせ。 (3)$\theta\neq 0$ のとき $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}b_n=\dfrac{r\sin\theta}{\theta}$ を示せ。

解答の概略:
(1)の計算結果を元に(2)の答えを予想して帰納法で証明すると,$\dfrac{a_n}{b_n}=\cos\dfrac{\theta}{2^n}$ が分かります。
※実は,$\dfrac{a_n}{b_n}=c_n$ とおいて与えられた漸化式から $c_n$ の漸化式を求めると $c_n=\sqrt{\dfrac{1+c_{n-1}}{2}}$ となるので本質的には先ほどと同じ問題です。

(3)わりと難しい問題です。 $b_n$ の一般項を求めてからサインの倍角公式を繰り返し用いると証明できます。
$b_n=r\cos\dfrac{\theta}{2}\cos\dfrac{\theta}{2^2}\cdots\cos\dfrac{\theta}{2^n}=\dfrac{r\sin\theta}{\theta}$
$a_n$ も同様。

※これはヴィエトの無限積の公式で紹介したオイラーの公式を知っていれば一発です!

追々記:

北大の入試問題だけでなく,2006年の九州大学,2008年の東京医科歯科大学,2009年の新潟大学でも同様な問題が出題されていました。頻出のテーマのようです。

いろいろな大学で出題されています!

Tag: 漸化式の解き方と応用例まとめ

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