2014/03/10

三角関数の不定形極限を機械的な計算で求める方法

分野: 極限,微分  レベル: 基本公式

三角関数の $\dfrac{0}{0}$ 不定形の極限を求める問題はマクローリン展開を用いた多項式近似で確実に,しかも迅速に解くことができる。

マクローリン展開を用いた三角関数の多項式近似

マクローリン展開を用いることで,三角関数 $\sin x,\cos x$ は $x=0$ の付近で以下のように多項式で近似することができます。
$\sin x={\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}}(-1)^k\dfrac{x^{2k+1}}{(2k+1)!}=x-\dfrac{x^3}{6}+\cdots$ $\cos x={\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}}(-1)^k\dfrac{x^{2k}}{(2k)!}=1-\dfrac{x^2}{2}+\cdots$
マクローリン展開の意味が分からなくても,三角関数が原点付近で上記のように多項式で近似できるということは覚えておいてください。

この多項式近似を用いることで,三角関数を多項式のように扱うことができ,極限の値を求めることができます。

三角関数を何次の多項式で近似するかは問題によって異なります。次数が低すぎると不定形が解消されず意味がありませんが,次数が高いぶんには問題ありません。以下の例題で具体的に見てみましょう。

例題

問題1

$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{\sin(\sin 2x)}{x}$ の値を求めよ。

方針:この極限は $\dfrac{0}{0}$ の不定形です。 $\sin 2x$ を1次近似($\sin 2x\simeq 2x$)します。近似を2回行うことで $\sin(\sin 2x)\simeq 2x$ と多項式に近似できます。やってみれば分かりますが,この問題は1次近似でうまくいきます。

解答

$x\to 0$ で $\sin(\sin 2x)\simeq\sin(2x)\simeq 2x$ とみなせるので,
$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{\sin(\sin 2x)}{x}=\lim_{x\to 0} \dfrac{2x}{x}=2$

ちなみに,教科書に載っている正攻法は分母分子に $2x\sin 2x$ をかけて計算します:
$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{\sin(\sin 2x)}{x}=
\lim_{x\to 0} \dfrac{\sin(\sin 2x)}{\sin 2x}\dfrac{\sin 2x}{2x}\dfrac{2x}{x}=2$


問題2

$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{1-\cos x}{x^2}$ の値を求めよ。

方針:この極限は $\dfrac{0}{0}$ の不定形です。 $\cos x$ を多項式に近似して解きます。1次近似($\cos x\simeq 1$)してみると,(与式)= $\displaystyle\lim_{x\to 0}\dfrac{1-1}{x}\to\dfrac{0}{0}$ となり,不定形が解消されないので二次近似($\cos x\simeq 1-\dfrac{x^2}{2}$)します。

解答

$x\to 0$ で $\cos x\simeq 1-\dfrac{x^2}{2}$ とみなせるので,
$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{1-\cos x}{x^2}=\lim_{x\to 0} \dfrac{1-(1-\dfrac{x^2}{2})}{x^2}=\dfrac{1}{2}$

ちなみに,教科書に載っている正攻法は分母分子に $1+\cos x$ をかけて計算します:
$\displaystyle\lim_{x\to 0} \dfrac{1-\cos x}{x^2}=
\lim_{x\to 0} \dfrac{(1-\cos x)(1+\cos x)}{x^2(1+\cos x)}\\
=\displaystyle\lim_{x\to 0}\dfrac{\sin^2 x}{x^2(1+\cos x)}=\dfrac{1}{2}$

問題1、2ともに教科書に載っている方法はそれぞれのパターンの問題にしか使えないある種不自然な発想が必要になります。もちろん教科書に載っている方法は有名で思い浮かばないことはないと思いますが,問題ごとにパターンを覚えるのはめんどくさいし,見たことのないパターンに対応することができません。多項式近似の方法なら $\dfrac{0}{0}$ の不定形の問題ならどんな問題も確実に解くことができます。

実際の試験で使うときのポイント

  • $\tan x$ は $\dfrac{\sin x}{\cos x}$ に直してから $\cos x$ と $\sin x$ をそれぞれ近似しましょう。
  • 三角関数の極限のほとんどの問題が $\dfrac{0}{0}$ の不定形をしていますが,ごくまれに $\dfrac{0}{0}$ の不定形でない当たり前でつまらない問題(例えば $\displaystyle\lim_{x\to \infty}x\sin x\to$ 振動)も含まれているので一応最初に $\dfrac{0}{0}$ の不定形になっているか確認しましょう。
  • 実戦では3次近似を用いればほぼ確実に成功します。3次の項までは確実に覚えておきましょう:
    $\sin x\simeq x-\dfrac{x^3}{6}$
    $\cos x\simeq 1-\dfrac{x^2}{2}$
  • 記述式の試験で,正攻法で解けるときは正攻法で解いた後に,この方法は検算として用いましょう。この方法に慣れれば三角関数の極限はあっという間(10秒程度)に求められるようになるので,正攻法で解けるときも必ずこの方法で検算をするようにしましょう。

ちなみに

正攻法の解法が思いつかない上に,記述式だからこの裏技も使いたくない!」という人はマクローリン型不等式(三角関数)はさみ打ちの原理を用いることでどんな問題も解くことができます。
例えば,上記の問題2は,
マクローリン型不等式 $1-\dfrac{x^2}{2}\leq \cos x\leq 1-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^4}{24}$ を解答中で証明した上で,はさみ打ちの原理を用いて極限値を求めることになります。

(1)でマクローリン型の不等式を証明させた上で,(2)ではさみ打ちの原理を用いて極限値を求めさせる入試問題は頻出なので,この方法も覚えておくとよいでしょう。

指数,対数関数に関しても全く同様な議論ができます。→指数関数と対数関数の極限の公式


Tag: マクローリン展開の応用例まとめ

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