2015/12/31

球の慣性モーメントの2通りの求め方

分野: 物理  レベル: 大学数学

質量が $M$,半径が $R$ の球の(中心を通る軸まわりの)慣性モーメントは $I=\dfrac{2}{5}MR^2$

大学物理(力学)の基本的な公式です。2通りの方法で導出します。

必要な前提知識

(3次元の連続体に対する)慣性モーメントの定義:
$I=\displaystyle\int_V r^2 dm=\displaystyle\int_V \rho r^2 dV$
ただし,$dm$ は微小部分の質量,$r$ は回転軸までの距離,$\rho$ は密度,$dV$ は微小部分の体積を表します。積分は体積積分(三重積分)です。

極座標変換のヤコビアンが $r^2\sin\theta$ であること(方法1のみ)
→三次元極座標についての基本的な知識
→ヤコビ行列,ヤコビアンの定義と極座標の例

質量が $M$,半径が $a$ の円板の(中心を通る軸まわりの)慣性モーメントが $I=\dfrac{1}{2}Ma^2$ であること(方法2のみ)

1.対称性を用いる方法

「同じ値のものを足して計算しやすいものをつくる」というテクニックを使います。→対称性を用いた定積分の難しい問題の解法

証明

球の中心が原点,回転軸を $z$ 軸とする座標で考えると,慣性モーメントの定義より
$I=\displaystyle\int_{x^2+y^2+z^2\leq R^2} \rho(x^2+y^2)dxdydz$

積分の対称性より,
$I=\displaystyle\int_{x^2+y^2+z^2\leq R^2} \rho(y^2+z^2)dxdydz$
$I=\displaystyle\int_{x^2+y^2+z^2\leq R^2} \rho(z^2+x^2)dxdydz$
も成立する。これらを加えると,

$3I=\displaystyle\int_{x^2+y^2+z^2\leq R^2} 2\rho(x^2+y^2+z^2)dxdydz$

ここで,直交座標から極座標へ変数変換すると,ヤコビアンは $r^2\sin\theta$ なので
$3I=\displaystyle\int_{0}^{2\pi}d\phi\int_0^{\pi}\sin\theta d\theta\int_0^{R}2\rho r^2\cdot r^2 dr\\
=2\pi\cdot 2\cdot \dfrac{2R^5\rho}{5}$

よって,$I=\dfrac{8\pi}{15}\rho R^5$

ここで,$\rho=\dfrac{M}{\frac{4}{3}\pi R^3}$ より,
$I=\dfrac{2}{5}MR^2$

2.円板の慣性モーメントを使う方法

円板の慣性モーメントが $\dfrac{1}{2}Ma^2$ であることは認めます。

証明

球の中心が原点,回転軸を $z$ 軸とする座標で考える。 $z$ 座標が $z$ から $z+dz$ の間にある部分は薄い円板とみなせる。
その半径は,$\sqrt{R^2-z^2}$,質量は $\rho Sdz=\rho \pi (R^2-z^2)dz$
($S$ は円板の底面積,$dz$ は厚み)

よって,この薄い円板部分による慣性モーメントへの寄与は
$\dfrac{1}{2}\rho\pi (R^2-z^2)(\sqrt{R^2-z^2})^2dz$

したがって,
$I=\displaystyle\int_{-R}^{R}\dfrac{1}{2}\rho\pi (R^2-z^2)^2dz\\
=\rho\pi \displaystyle\int_0^{R}(R^4-2R^2z^2+z^4)dz\\
=\rho\pi \left(R^5-\dfrac{2R^5}{3}+\dfrac{R^5}{5}\right)\\
=\dfrac{8\pi}{15}\rho R^5$

これと,$\rho=\dfrac{M}{\frac{4}{3}\pi R^3}$ より,
$I=\dfrac{2}{5}MR^2$

僕は1つめの方法がかなり好きです。
分野: 物理  レベル: 大学数学