2014/07/10

クロネッカーの稠密定理とその証明

分野: 整数問題  レベル: マニアック

クロネッカーの稠密定理:
任意の無理数 $x$ と $0\leq a <b\leq 1$ を満たす任意の実数 $a, b$ に対して $a \leq \{nx\} \leq b$ を満たす自然数 $n$ が存在する。

$\{X\}$ は $X$ の小数部分という意味です。

この記事ではクロネッカーの稠密定理の意味と証明を解説します。
証明には鳩ノ巣原理を用いるので少しテクニカルですが,難関大学の入試で出題されてもおかしくないレベルです。

クロネッカーの稠密定理の意味

「稠密」はちゅうみつと呼びます。隙間なくぎっしり詰まっているという意味です。「隙間なくぎっしり詰まっている」というのは「どれだけ狭い幅の区間を取ってきてもその間に要素が存在する」ということです。

つまり,$[0,1]$ 上の稠密集合とは,
$0\leq a <b\leq 1$ を満たす任意の実数 $a, b$ に対して $a$ と $b$ の間に要素が存在する集合です。

どんな無理数 $x$ を持ってきても $x,2x,3x,\cdots$ の小数部分を列挙していくとそれは $[0,1]$ 上の稠密集合になっている
というのがクロネッカーの稠密定理の主張です。

証明の方針と前半部分

以下の3ステップで証明します。

方針:
1:$\{x\},\{2x\},\{3x\},\cdots$ たちは全て異なる。
2:うまく $n$ を持ってくれば $\{nx\}$ をいくらでも端っこに近いやつを持ってこれる。(鳩ノ巣原理を用いる)
3:端っこのやつを何倍かすればOK。

2が一番おもしろい核心部分です。

(ステップ1:証明の準備)
$\{ix\}=\{jx\}$ となる自然数 $i,j (i <j)$ が存在すると仮定すると,
$(j-i)x$ が整数となり $x$ が無理数であることに矛盾。
よって背理法により $\{x\},\{2x\},\{3x\},\cdots$ たちは全て異なる。

クロネッカーの稠密定理の証明

証明

ステップ2:
任意の自然数 $N$ に対して以下の議論が適用できる。
$0$ から $1$ の区間を $N$ 等分する。鳩ノ巣原理より,$\{x\},\{2x\},\cdots,\{(N+1)x\}$ のいずれかは同じ区間に属する。それを $\{ix\}$ と $\{jx\} (i <j)$ とおく。

・ステップ1により $\{ix\}=\{jx\}$ とはならない

・パターンA:$\{ix\} <\{jx\}$ のとき
$\{(j-i)x\}=\{jx\}-\{ix\} <\dfrac{1}{N}$
よって, $0 <\{(j-i)x\} <\dfrac{1}{N}$
(つまり十分 $0$ に近い)

・パターンB:$\{jx\} <\{ix\}$ のとき
$\{(j-i)x\}=1-(\{ix\}-\{jx\}) > 1-\dfrac{1}{N}$
よって, $1-\dfrac{1}{N} <\{(j-i)x\} <1$
(つまり十分 $1$ に近い)

パターンBも同様なので以下パターンAについて証明する。

クロネッカーの定理の証明

ステップ3:
端っこに近い $\{(j-i)x\}$ を利用して $\{k(j-i)x\} (k=1,2,3,\cdots)$ たち(図の赤丸)を考えると十分狭い間隔で均等に散らばる。区間幅 $b-a$ よりも小さくなるくらい $N$ を十分大きく取っておけば必ず $a$ と $b$ の間に1つは $\{k(j-i)x\}$ が存在することになる。

細かい部分をきちんと議論すると結構大変でしたが,やりたいことは単純です。
分野: 整数問題  レベル: マニアック