2015/08/11

ヤコビ行列,ヤコビアンの定義と極座標の例

分野: 解析  レベル: 大学数学

微分係数の多変数関数バージョンであるヤコビ行列,およびヤコビアンについて解説します。具体例として,二次元,三次元極座標変換の場合にヤコビアンを求めてみます。

ヤコビ行列,ヤコビアンの定義

〜状況設定〜

  • $\overrightarrow{x}=(x_1,x_2,\cdots,x_n)^{\top}$ を決めると $\overrightarrow{y}=(y_1,y_2,\cdots,y_m)^{\top}$ が定まる状況($n$ 変数関数が $m$ 個あると考えてもよい,$n$ 変数の $m$ 次元ベクトル値関数と考えてもよい)
  • 各 $y_i$ は $x_j$ で偏微分可能

〜ヤコビ行列の定義〜
$\dfrac{\partial y_i}{\partial x_j}$ を $ij$ 成分とする $m\times n$ 行列 $J$ をヤコビ行列と言います。
例えば $i=j=2$ のとき,ヤコビ行列は $J=\begin{pmatrix}\frac{\partial y_1}{\partial x_1}&\frac{\partial y_1}{\partial x_2}\\\frac{\partial y_2}{\partial x_1}&\frac{\partial y_2}{\partial x_2}\end{pmatrix}$ です。

〜ヤコビアンの定義〜
ヤコビ行列の行列式をヤコビ行列式,またはヤコビアンと言います。ヤコビアンは変換の「拡大率」を表す重要な量です。

ヤコビ行列の意味

一変数の場合,微分係数は関数の一次近似(の接線の傾き)という意味がありました(一次近似の意味とよく使う近似公式一覧):
$y(x)\simeq y(x_0)+y'(x_0)(x-x_0)$

多変数の場合,接線の傾きに相当するのがヤコビ行列です:
$\overrightarrow{y}(\overrightarrow{x})\simeq\overrightarrow{y}(\overrightarrow{x_0})+J(\overrightarrow{x_0})(\overrightarrow{x}-\overrightarrow{x_0})$

以下,実際にヤコビ行列の計算に慣れるために例を二つ解説します。

例1.二次元極座標

二次元極座標$(r,\theta)$ から直交座標$(x,y)$ への変数変換を考えます。二変数関数二つ組なのでヤコビ行列のサイズは2×2です。

変換式は $x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$ です。変換式をそれぞれ偏微分するとヤコビ行列が求まります:
$\begin{pmatrix}\frac{\partial x}{\partial r}&\frac{\partial x}{\partial \theta}\\\frac{\partial y}{\partial r}&\frac{\partial y}{\partial \theta}\end{pmatrix}$ $=\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\\sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix}$

ヤコビアンは,$\cos\theta(r\cos\theta)-\sin\theta(-r\sin\theta)$ $=r$

重積分の変数変換の文脈では $dxdy=rdrd\theta$ と表記することもあります。

例2.三次元極座標

三次元極座標$(r,\theta,\phi)$ から直交座標$(x,y,z)$ への変数変換を考えます。三変数関数三つ組なのでヤコビ行列のサイズは3×3です。→三次元極座標についての基本的な知識

変換式は $x=r\sin\theta\cos\phi,y=r\sin\theta\sin\phi,z=r\cos\theta$ です。変換式をそれぞれ偏微分するとヤコビ行列が求まります:
$\begin{pmatrix}\frac{\partial x}{\partial r}&\frac{\partial x}{\partial \theta}&\frac{\partial x}{\partial \phi}\\\frac{\partial y}{\partial r}&\frac{\partial y}{\partial \theta}&\frac{\partial y}{\partial \phi}\\\frac{\partial z}{\partial r}&\frac{\partial z}{\partial \theta}&\frac{\partial z}{\partial \phi}\end{pmatrix}$ $=\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi&r\cos\theta\cos\phi&-r\sin\theta\sin\phi\\\sin\theta\sin\phi&r\cos\theta\sin\phi&r\sin\theta\cos\phi\\\cos\theta&-r\sin\theta&0\end{pmatrix}$

ヤコビアンは(3×3の行列式を頑張って計算すると) $r^2\sin\theta$ となります。

重積分の変数変換の文脈では $dxdydz=r^2\sin\theta drd\theta d\phi$ と表記することもあります。

三次元極座標のヤコビアンは必ず一回は手計算で求めておきましょう。
分野: 解析  レベル: 大学数学