2015/06/20

逆行列を求める2通りの方法と例題

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

与えられた正方行列の逆行列を求める方法,具体的な計算例を解説します。なお,公式の証明は線形代数の教科書を参照して下さい。

2×2行列の場合

$A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ の逆行列は,$A^{-1}=\dfrac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}$

2×2の場合は覚えるのみです。高校数学の旧課程では重要な公式でした。

逆行列の求め方1:掃き出し法

以下,一般の $n\times n$ の正方行列の逆行列を求める二通りの方法を解説します(具体例は3×3の場合のみ)。

単位行列を $I$ とします。

横長の行列$(A\:\:I)$ に行基本変形を繰り返し行って$(I\:\:B)$ になったら,$B$ は $A$ の逆行列である。

行基本変形とは以下の三つの操作です。
操作1:ある行を定数倍する
操作2:二つの行を交換する
操作3:ある行の定数倍を別の行に加える

掃き出し法を実際にやってみます!

例題

$A=\begin{pmatrix}1&1&-1\\-2&0&1\\0&2&1\end{pmatrix}$ の逆行列を求めよ。

$(A\:I)=\begin{pmatrix}1&1&-1&1&0&0\\-2&0&1&0&1&0\\0&2&1&0&0&1\end{pmatrix}$
行基本変形を適用して左半分を $I$ にするのが目標。まず一列目を見て,1行目の2倍を2行目に加える:
$\begin{pmatrix}1&1&-1&1&0&0\\0&2&-1&2&1&0\\0&2&1&0&0&1\end{pmatrix}$
次に,二列目(の第2成分以外)に $0$ を並べるように操作3を行う:
$\begin{pmatrix}1&0&-\frac{1}{2}&0&-\frac{1}{2}&0\\0&2&-1&2&1&0\\0&0&2&-2&-1&1\end{pmatrix}$
同様に,三列目(の第3成分以外)に $0$ を並べるように操作3を行う:
$\begin{pmatrix}1&0&0&-\frac{1}{2}&-\frac{3}{4}&\frac{1}{4}\\0&2&0&1&\frac{1}{2}&\frac{1}{2}\\0&0&2&-2&-1&1\end{pmatrix}$
最後に操作1を二行目と三行目に適用して左側を単位行列にする:
$\begin{pmatrix}1&0&0&-\frac{1}{2}&-\frac{3}{4}&\frac{1}{4}\\0&1&0&\frac{1}{2}&\frac{1}{4}&\frac{1}{4}\\0&0&1&-1&-\frac{1}{2}&\frac{1}{2}\end{pmatrix}$
この右半分が $A^{-1}$ である。

逆行列の求め方2:余因子を用いる

余因子を用いる方法では(3×3の)行列式についての知識を前提とします。

$A$ の逆行列の $ij$ 成分は $\dfrac{\Delta_{ij}}{\det A}$

ただし,$\det A$ は $A$ の行列式,
$\Delta_{ij}$ は $A$ の $j$ 行目と $i$ 列目を除いた行列の行列式を$(-1)^{i+j}$ したもの(余因子)

余因子の定義がやや厄介です。3×3の場合で計算してみます。

例題(再掲):$A=\begin{pmatrix}1&1&-1\\-2&0&1\\0&2&1\end{pmatrix}$ の逆行列を求めよ。

解答

まず $A$ の行列式を計算する。
$\det A=(-1)(-2)\cdot 2-1\cdot 1\cdot 2-1\cdot 1\cdot (-2)=4$
余因子は
$\Delta_{11}=(-1)^2\det\begin{pmatrix}0&1\\2&1\end{pmatrix}=-2$
$\Delta_{12}=(-1)^3\det\begin{pmatrix}1&-1\\2&1\end{pmatrix}=-3$
$\Delta_{13}=(-1)^4\det\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}=1$
残り6個も同様に計算できて,逆行列は
$A^{-1}=\dfrac{1}{4}\begin{pmatrix}-2&-3&1\\2&1&1\\-4&-2&2\end{pmatrix}$

補足

  • どちらの方法にせよ計算ミスしやすいので,必ず検算しましょう($A$ と $A^{-1}$ の積が単位行列になっていることを確認!)
  • 4×4以上だと余因子による方法はかなり厳しいです。掃き出し法をマスターしてください。
僕はサイズ3なら余因子,サイズ4以上なら掃き出し法を使います。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学