2014/08/11

ヘルダーの不等式の数学オリンピックへの応用

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

数学オリンピックから不等式の難問を3問ほど解説します。かなりレベルの高い記事です。

いずれもヘルダーの不等式をうまく使ってエレガントに解くことができますが,答えを見る前に考えて頂くとより力がつくと思います。(ヘルダーの不等式を知らない方は厳しいのでヘルダーの不等式のエレガントな証明と頻出形を先に読んでください!)

数学オリンピックの難問たち

2001年国際数学オリンピック(IMO)アメリカ大会第2問:

$\dfrac{a}{\sqrt{a^2+8bc}}+\dfrac{b}{\sqrt{b^2+8ca}}+\dfrac{c}{\sqrt{c^2+8ab}}\geq 1$
を証明せよ。


2004年アメリカ数学オリンピック(USAMO)第5問:

正の実数 $a,b,c$ に対して
$(a^5-a^2+3)(b^5-b^2+3)(c^5-c^2+3)\geq (a+b+c)^3$
を証明せよ。


2006年日本数学オリンピック(JMO)第5問:

任意の正の実数 $x_1,x_2,\cdots,z_3$ に対して不等式
$(x_1^3+x_2^3+x_3^3+1)(y_1^3+y_2^3+y_3^3+1)(z_1^3+z_2^3+z_3^3+1)\\
\geq A(x_1+y_1+z_1)(x_2+y_2+z_2)(x_3+y_3+z_3)$
が常に成り立つような実数 $A$ の最大値を求めよ。また,$A$ をその値にするとき等号が成立する条件を求めよ。

IMO2001第2問の解説

方針:3次のヘルダーの不等式を以下のように使うことで「分母にルートがある分数の和」を下からおさえることができます!
$(\dfrac{a}{\sqrt{X}}+\dfrac{b}{\sqrt{Y}}+\dfrac{c}{\sqrt{Z}})^2(aX+bY+cZ)\\
\geq(a+b+c)^3$

これはシュワルツの不等式の応用公式と同じ考え方です。

解答

上記の形のヘルダーの不等式で $X=a^2+8bc,Y=b^2+8ca,Z=c^2+8ab$ を代入すると,
問題の左辺の二乗 $\geq \dfrac{(a+b+c)^3}{a^3+b^3+c^3+24abc}$
よって,あとは$(a+b+c)^3\geq a^3+b^3+c^3+24abc$ を証明すればよい。
左辺を展開すると $[2,1,0]\succeq [1,1,1]$ のMuirheadの不等式そのものになる。(展開したあとまとめて相加相乗平均の不等式で示すこともできる。)

式の展開については→対称式を素早く正確に展開する3つのコツを参照してください。

USAMO2004第5問の解説

方針:難問です。「3つの積 $\geq$ 三乗」の形なので3次のヘルダーの不等式が使えそうだと予想できます。
$a^5$ と$-a^2$ があってそのままではうまく使えそうにないので一工夫します、(この工夫を思いつくのが非常に難しい)

解答

まず,$a^5+1\geq a^3+a^2$ という不等式が成立することに注意する。
(これは因数分解でも示せるし,Muirheadの不等式を知っていれば $a^5+b^5\geq a^3b^2+a^2b^3$ なので $b=1$ とすればよい。)

これを利用すると,
問題の左辺 $\geq (a^3+2)(b^3+2)(c^3+2)$
これを,$(a^3+1^3+1^3)(1^3+b^3+1^3)(1^3+1^3+c^3)$ とみなせばヘルダーの不等式が使えて右辺より大きいことが分かる。

JMO2006第5問の解説

方針:こちらも難問です。まずは全ての変数が同じ値 $a$ のときを考えてみると,
$(3a^3+1)^3\geq 27Aa^3$
よって,$\dfrac{(3a^3+1)^3}{27a^3}$
の最小値を考えてみると,(多少計算すれば)これは $a^3=\dfrac{1}{6}$ のとき $\dfrac{3}{4}$ であることが分かる。
これが答えであることは予想できるが,証明するのが難しい。(3次9項のヘルダーの不等式を用いる!)

解答

$a^3=\dfrac{1}{6}$ とおくと,ヘルダーの不等式より,
左辺$=(x_1^3+x_2^3+x_3^3+a^3+a^3+a^3+a^3+a^3+a^3)\\(a^3+a^3+a^3+y_1^3+y_2^3+y_3^3+a^3+a^3+a^3)\\
(a^3+a^3+a^3+a^3+a^3+a^3+z_1^3+z_2^3+z_3^3)\\
\geq a^6(x_1+x_2+x_3+y_1+y_2+y_3+z_1+z_2+z_3)^3\\
\geq a^6\cdot 27(x_1+y_1+z_1)(x_2+y_2+z_2)(x_3+y_3+z_3)$
最終行は相加相乗平均の不等式。
よって, $A=27a^6=\dfrac{3}{4}$ のとき不等式は成立。
そして,全ての変数を $a$ とすれば等号が成立するので $A$ を $\dfrac{3}{4}$ より大きくとることはできない。

JMO本選の最終問題は超難問であることが多いので注意しましょう。

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