2014/04/02

ヘルダーの不等式のエレガントな証明と頻出形

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

ヘルダーの不等式:
$a_{ij}\geq 0,w_i > 0, \displaystyle\sum_{i=1}^mw_i=1$ のとき,
$\displaystyle\prod_{i=1}^m(\sum_{j=1}^na_{ij})^{w_i}\geq \sum_{j=1}^n(\prod_{i=1}^ma_{ij}^{w_i})$
等号成立条件は
$m$ 本のベクトル$(a_{1j},a_{2j},\cdots,a_{nj})\:(j=1,2,\cdots ,m)$ たちが全て平行

一般形はとても複雑なので理解できなくても構いません,頻出系を覚えて下さい!

2015/4/2 上式に誤植がありましたので訂正しました,申し訳ありませんm(__)m

ヘルダーの不等式について

  • ノルムを用いたヘルダーの不等式の別の形(解析学でよく用いられる形)についてはミンコフスキーの不等式とその証明の中盤あたりを参照してください。
  • なんとなく和の記号シグマと積の記号パイの交換法則っぽいです。

・実際使うのは重み $w$ が等しい場合だけです。一般形よりも以下の具体例を見て覚えましょう。

ヘルダーの不等式の頻出形

・ $m=2, w_1=w_2=\dfrac{1}{2}$ の場合ヘルダーの不等式はコーシーシュワルツの不等式になります:
$\displaystyle(\sum_{j=1}^na_{1j})^{\tfrac{1}{2}}(\sum_{j=1}^na_{2j})^{\tfrac{1}{2}}\geq \sum_{j=1}^n(a_{1j}a_{2j})^{\tfrac{1}{2}}$
つまり, $\displaystyle(\sum_{i=1}^na_i^2)(\sum_{i=1}^nb_i^2)\geq (\sum_{j=1}^na_ib_j)^2$
等号成立条件はベクトル$(a_1, a_2,\cdots ,a_n)$ と$(b_1, b_2,\cdots ,b_n)$ が平行

・ $m=3,\:w_1=w_2=w_3=\dfrac{1}{3}$ の場合も頻出:
$(a_1^3+a_2^3+\cdots +a_n^3)(b_1^3+b_2^3+\cdots +b_n^3)(c_1^3+c_2^3+\cdots +c_n^3)\\\geq (a_1b_1c_1+a_2b_2c_2+\cdots +a_nb_nc_n)^3$
シュワルツの不等式の拡張っぽいですね。

ヘルダーの不等式(狭義)

・ $m=2, w_1=\dfrac{1}{p},w_2=\dfrac{1}{q}$ とおいた形も有名です:
$\displaystyle(\sum_{i=1}^na_{i}^p)^{\tfrac{1}{p}}(\sum_{i=1}^nb_{i}^q)^{\tfrac{1}{q}}\geq \sum_{i=1}^n(a_{i}b_{i})$
この不等式をヘルダーの不等式という場合もあるようです。例えば,Wikipediaではこちらの不等式を紹介しています。

ヘルダーの不等式の証明

さて,いよいよヘルダーの不等式の証明に入っていきます。相加相乗平均の不等式を用い示すことができます!

一般形について書くと数式がごちゃごちゃして余計わかりにくくなるので, $m=3, n=2$ の場合について証明します。(一般形の場合も全く同様にして証明できます。)
示すべき不等式は以下のようになります:
$(a_1+a_2)^{w_1}(b_1+b_2)^{w_2}(c_1+c_2)^{w_3}\geq a_1^{w_1}b_1^{w_2}c_1^{w_3}+a_2^{w_1}b_2^{w_2}c_2^{w_3}$

方針:不等式に慣れていれば右辺第一項 $a_1^{w_1}b_1^{w_2}c_1^{w_3}$ を見た時に重み付き相加相乗平均の不等式が浮かぶでしょう。しかし,安直に
$w_1a_1+w_2b_1+w_3c_1\geq a_1^{w_1}b_1^{w_2}c_1^{w_3}$
を用いようとしてもうまくいきません。左辺の形を出せるように一工夫します。

証明

重み付き相加相乗平均の不等式より,
$w_1\dfrac{a_1}{a_1+a_2}+w_2\dfrac{b_1}{b_1+b_2}+w_3\dfrac{c_1}{c_1+c_2}\\\geq (\dfrac{a_1}{a_1+a_2})^{w_1}(\dfrac{b_1}{b_1+b_2})^{w_2}(\dfrac{c_1}{c_1+c_2})^{w_3}$
同様に,
$w_1\dfrac{a_2}{a_1+a_2}+w_2\dfrac{b_2}{b_1+b_2}+w_3\dfrac{c_2}{c_1+c_2}\\\geq (\dfrac{a_2}{a_1+a_2})^{w_1}(\dfrac{b_2}{b_1+b_2})^{w_2}(\dfrac{c_2}{c_1+c_2})^{w_3}$
この2つの不等式を辺々加えると $w_1+w_2+w_3=1$ より左辺は1となる:
$1\geq \dfrac{a_1^{w_1}b_1^{w_2}c_1^{w_3}+a_2^{w_1}b_2^{w_2}c_2^{w_3}}{(a_1+a_2)^{w_1}(b_1+b_2)^{w_2}(c_1+c_2)^{w_3}}$
分母を払うことで $m=3, n=2$ の場合のヘルダーの不等式を得る。

注意:$a_1=a_2=0$ または $b_1=b_2=0$ または $c_1=c_2=0$ の場合はこの証明方法は通用しないが,このとき示すべき不等式の両辺はともに0となり自明な不等式となる。

ヘルダーの不等式の等号成立条件

先ほどの証明と重み付き相加相乗平均の不等式の等号成立条件から,$m=3, n=2$ の場合のヘルダーの不等式の等号成立条件が分かる:
$\dfrac{a_1}{a_1+a_2}=\dfrac{b_1}{b_1+b_2}=\dfrac{c_1}{c_1+c_2}$ かつ
$\dfrac{a_2}{a_1+a_2}=\dfrac{b_2}{b_1+b_2}=\dfrac{c_2}{c_1+c_2}$
どちらも逆数を取るなりして整理すれば同じ条件になる:
$\dfrac{a_2}{a_1}=\dfrac{b_2}{b_1}=\dfrac{c_2}{c_1}$
$a_1=0$ の場合なども含めて等号成立条件を書くと以下のようになる。
ベクトル$(a_1,a_2), (b_1,b_2), (c_1,c_2)$ が平行
一般の場合も同様です!

ヘルダーの不等式は数式が複雑で書くのが大変でした、内容はそんなに難しくないです!

Tag: 数学オリンピック突破のための有名不等式まとめ

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