2015/10/17

断熱変化におけるポアソンの式の導出

分野: 物理  レベル: 最難関大学

理想気体の断熱変化において $pV^{\gamma}=$(一定)

ただし,$\gamma$ は比熱比と呼ばれる量であり,
単原子分子理想気体では $\dfrac{5}{3}$

ポアソンの式の導出および比熱比の値について解説します。

状態方程式の微分

以下,$P$ は圧力,$V$ は体積,$n$ は気体のモル数,$R$ は気体定数,$T$ は絶対温度とします。

ポアソンの式の導出(前半)

気体が$(P,V,T)$ の状態から少し変化して$(P+\Delta P,V+\Delta V,T+\Delta T)$ の状態になったとする。

変化の前後でそれぞれ理想気体の状態方程式を使うと,
$PV=nRT$
$(P+\Delta P)(V+\Delta V)=nR(T+\Delta T)$
二つ目の式を展開して一つ目の式を使うと,
$P\Delta V+V\Delta P+\Delta P\Delta V=nR\Delta T$

ここで,変化は微小であるため $\Delta P\Delta V$ という微小量の二乗の項を無視すると以下の関係式を得る:
$P\Delta V+V\Delta P=nR\Delta T$

この関係式は断熱変化でなくても理想気体なら常に成り立ちます。

余談

一般に(全微分可能な関数 $f$ について)$z=f(x,y)$ の微小変化は,$x$ の微小変化 $dx$ と $y$ の微小変化 $dy$ を使って,
$dz=\dfrac{\partial f}{\partial x}dx+\dfrac{\partial f}{\partial y}dy$
と書けます(全微分)。

今回の場合,$T=\dfrac{PV}{nR}$ であり,$T$ を $P,V$ の関数と見ると,
$dT=\dfrac{\partial T}{\partial P}dP+\dfrac{\partial T}{\partial V}dV\\
=\dfrac{V}{nR}dP+\dfrac{P}{nR}dV$
となり,上の結果が得られます。

断熱変化であることを使う

以下,$C_V$ は定積モル比熱,$C_P$ は定圧モル比熱とします。

ポアソンの式の導出(後半)

熱力学第一法則より,
$\Delta Q=\Delta U+\Delta W$

ここで,断熱変化より $\Delta Q=0$ であること,内部エネルギーの増分 $\Delta U$ は $nC_v\Delta T$ と等しいこと,気体がした仕事 $\Delta W$ は $P\Delta V$ と等しいことから,
$0=nC_v\Delta T+P\Delta V$

この式と先ほど得た式から $\Delta T$ を消去すると,
$0=\dfrac{C_V}{R}(P\Delta V+V\Delta P)+P\Delta V$
整理すると,
$(C_V+R)P\Delta V+C_VV\Delta P=0$
$\dfrac{\Delta P}{P}+\dfrac{C_V+R}{C_V}\dfrac{\Delta V}{V}=0$

ここで,マイヤーの法則:$C_V+R=C_P$ および比熱比の定義:$\gamma=\dfrac{C_P}{C_V}$ を使うと,
$\dfrac{\Delta P}{P}+\gamma\dfrac{\Delta V}{V}=0$
となる。両辺を積分すると,
$\log P+\gamma\log V=C$
($C$ は定数)

よって,$PV^{\gamma}=$(一定)

比熱比と自由度

$\gamma=\dfrac{C_R}{C_V}=\dfrac{C_V+R}{C_V}$ の値は分子の構造によって変わります。多くの気体について,常温では $C_V$ は(並進運動の自由度+回転運動の自由度)$\times\dfrac{R}{2}$ に近い値になることが実験的に知られています。

単原子分子理想気体

自由度は3(並進3),$C_V=\dfrac{3}{2}R$,$\gamma=\dfrac{5}{3}$

二原子分子理想気体

自由度は6(並進3,回転2,振動1),$C_V=\dfrac{5}{2}R$,$\gamma=\dfrac{7}{5}$

三原子分子理想気体(直線形)

自由度は9(並進3,回転2,振動4),$C_V=\dfrac{5}{2}R$,$\gamma=\dfrac{7}{5}$

三原子分子理想気体(直線形でない)

自由度は9(並進3,回転3,振動3),$C_V=3R$,$\gamma=\dfrac{4}{3}$

高校(+アルファ)の熱力学で一番好きな計算です。
分野: 物理  レベル: 最難関大学