2014/10/06

反転幾何の基礎

分野: 平面図形  レベル: 数学オリンピック

反転変換:
中心 $O$,半径 $r$ の円 $\Gamma$ がある。このとき,円 $\Gamma$ による反転を以下のように定義する。
$P$ の行き先は,半直線 $OP$ 上の点で,$OP\times OP’=r^2$ を満たす点 $P’$

数学オリンピックでたまに使える「反転」という手法についての基礎的な事柄を解説します。

反転変換について

反転
  • 反転は平面上の点を別の点に移す変換です。 $\Gamma$ のことを反転円と呼びます。
  • $\Gamma$ の円周上の点 $Q$ は,$OQ^2=r^2$ を満たすので $\Gamma$ による反転で不変です。
  • 上記の定義だと原点 $O$ の行き先を定義できません。そこで,原点の行き先は「無限遠点」という仮想の点とみなします。逆に,「無限遠点」は反転で原点に戻ってくるものとします。つまり,反転は「平面上の点+無限遠点」を「平面上の点+無限遠点」に移す全単射(一対一対応)の変換です。
  • 定義より,同じ円に関する反転を二回かますともとの点に戻ってきます。

反転幾何がなぜ嬉しいのか

それぞれ後で詳しく述べますが,反転が嬉しいのは,以下の二つの性質を持っているからです。

性質1:「円や直線は反転で円や直線に変わる」
性質2:「反転によって接するという状況は変わらない」

ざっくり言うと,「同一円周上にあることや接するという状況を証明したいときに反転後の世界で証明すればよい」ということになります。そして,反転円をうまく選べば反転前の世界よりも反転後の世界の方が扱いやすいという状況がしばしば発生するのです。

この感覚をつかむにはある程度経験が必要ですが,反転円の中心をいくつかの円の交点に選ぶと(反転後の世界では直線が増えるために→後述の性質1−3参照)うまくいくことが多いです。

反転幾何の性質1

便宜上,直線は「無限遠点」を通るとみなします。反転円の中心を原点と呼ぶことにします。

反転によって,
1−1:原点を通る直線は原点を通る直線にうつる
1−2:原点を通らない直線は原点を通る円にうつる
1−3:原点を通る円は原点を通らない直線にうつる
1−4:原点を通らない円は原点を通らない円にうつる

全て簡単な計算で確認できます。

反転を使うならば4つとも覚えて下さい。この4つの組み合わせについては,以下のように原点と無限遠点だけ考えればすぐに導出できます。

反転前で原点を含む→反転後無限遠点を含む,つまり直線となる
反転前で無限遠点を含む(つまり直線)→反転後は原点を通る

反転幾何の性質2

円と円または円と直線が接するというのは共有点が1つということです。反転は一対一対応なので2つの図形の共有点の数は反転で不変です。よって,

2:反転によって接する,接しないという状況は変わらない。

※反転後の図形が両方共直線の場合は無限遠点も共有点となるので例外的に注意が必要です。

例えば,多くの場合「円と円が接する」というよりも「円と直線が接する」ことの方が証明しやすいです。よって,反転によって円を直線にうつし,反転後の世界で接することを証明するという手法が有効な場合があります。

ちなみに,以下の性質もときどき使います:

3:反転円と直交する円は反転によって変わらない

「二つの円が直交する」というのは二つの円が共有点を持って,その共有点における接線が直交するという意味です。性質3も簡単に証明できます。

反転を使った証明はかなりエレガントなものが多いです。
分野: 平面図形  レベル: 数学オリンピック