2014/05/09

Hadwigerの不等式

分野: 幾何不等式  レベル: マニアック

有名な幾何不等式を2つ紹介します。Hadwiger-Finslerの不等式は数学オリンピックの練習問題にちょうどいい難易度なので,やる気のある人は証明を見る前に考えてみてください!

二つの幾何不等式

三角形 $ABC$ の三辺の長さを $a,b,c$,面積を $S$ とおくとき,

Hadwiger-Finslerの不等式:
$2ab+2bc+2ca-a^2-b^2-c^2\geq 4\sqrt{3}S$
等号成立条件は三角形 $ABC$ が正三角形であること。

さらに,別の三角形 $PQR$ の三辺の長さを $p,q,r$,面積を $T$ とおくとき,

Neuberg-Pedoeの不等式:
$p^2(-a^2+b^2+c^2)+q^2(a^2-b^2+c^2)+r^2(a^2+b^2-c^2)\geq 16ST$
等号成立条件は,三角形 $ABC$ と $PQR$ が相似であること。

不等式の関係

幾何不等式の証明に入る前に,いずれの不等式もWeitzenbockの不等式($a^2+b^2+c^2\geq 4\sqrt{3}S$)の拡張になっていることを確認してきます。

・Hadwigerの不等式については,
$a^2+b^2+c^2\geq (a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2 +4\sqrt{3}S$ と変形できることから明らかです。

・Pedoeの不等式については,
三角形 $PQR$ は1辺が1の正三角形の場合$(p=q=r=1)$を考えると,正三角形の面積,正四面体の体積より $T=\dfrac{\sqrt{3}}{4}$ となりWeitzenbockの不等式と一致します。

Hadwigerの不等式の証明

方針:全ての情報を三辺の長さで表してからRavi変換を用いるのが定石の1つです。面積を三辺の長さで表すためにヘロンの公式を用います。

証明

ヘロンの公式より,$4S=\sqrt{(a+b+c)(a+b-c)(a-b+c)(-a+b+c)}$
である。
Ravi変換:$a=x+y,b=y+z,c=z+x$ を用いると示すべき不等式は,
$xy+yz+zx\geq\sqrt{3xyz(x+y+z)}$
となるが,両辺を二乗して整理すると,
$x^2y^2+y^2z^2+z^2x^2\geq x^2yz+xy^2z+xyz^2$
この不等式は,$[2,2,0]$ と $[2,1,1]$ の場合のMuirheadの不等式なので成立することがすぐに分かる。

※Muirheadの不等式は見通しをよくするために是非とも知っておいて欲しい不等式ですが,知らない場合は,有名不等式 $A^2+B^2+C^2\geq AB+BC+CA$ に $A=xy,B=yz,C=zx$ を代入しても示せます。
→有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明

Pedoeの不等式の証明は代数的にやろうとするとかなり複雑なので省略します。

僕は幾何不等式が大好きです。
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