2015/06/17

グラムシュミットの直交化法の意味と具体例

分野: 線形代数  レベル: マニアック

$n$ 本の線形独立なベクトル $a_1,a_2,\cdots,a_n$ を「用いて」正規直交基底を作る方法として,グラムシュミット(Gram–Schmidt)の正規直交化法がある。

グラムシュミットの正規直交化法

一般の $n$ 次元ベクトル空間で通用する話ですが,ここでは高校生でも馴染みのある空間ベクトル($n=3$ の場合)で説明します。三次元の場合をしっかり理解すれば一般の場合の理解も容易です。


目標:今持っている線形独立な三本の空間ベクトル $a_1,a_2,a_3$ を「用いて」,正規直交基底 $u_1,u_2,u_3$ を作りたい。

  • 「線形独立」とはこの場合,原点 $O$ と位置ベクトルが $a_1,a_2,a_3$ で表される点(合計4点)が一般の位置にある,つまり同一平面上にないことを表します。
  • 「正規直交」とは,それぞれが長さ1で,互いに直交するという意味です。

・ここで言う「用いて」とは,
$u_1$ を $a_1$ の線形結合(定数倍)
$u_2$ を $a_1,a_2$ の線形結合(定数倍の和)
$u_3$ を $a_1,a_2,a_3$ の線形結合(定数倍の和)
で表すことを意味します。

直交化の方法

ベクトル $a$ の長さを $|a|$,$a$ と $u$ の内積を $a\cdot u$ と書きます。

グラムシュミットの直交化法(三次元):
STEP1:$u_1=\dfrac{a_1}{|a_1|}$
STEP2:$v_2=a_2-(a_2\cdot u_1)u_1$,$u_2=\dfrac{v_2}{|v_2|}$
STEP3:$v_3=a_3-(a_3\cdot u_1)u_1-(a_3\cdot u_2)u_2$,$u_3=\dfrac{v_3}{|v_3|}$

$a_1,a_2,a_3$ をもとに $u_1,v_2,u_2,v_3,u_3$ の順に計算していきます。 $u_1,u_2,u_3$ が目標の正規直交基底です!

注:$n$ 次元の場合はSTEP $n$ まで続きます。 $k$ ステップ目は $v_k=a_k-\displaystyle\sum_{i=1}^{k-1}(a_k\cdot u_i)u_i$,$u_k=\dfrac{v_k}{|v_k|}$ です。

意味

  • $v_k$ から $u_k$ を計算する部分は正規化(長さを1にする)という意味があり分かりやすいです。なお,正規化の操作を省き「直交化」のみ行うこともできます。
  • $a_k$ から $v_k$ を計算する部分(直交化)は,$a_k$ から $u_1,u_2,\cdots,u_{k-1}$ 方向の成分を順に除く操作をしていると見ることができます。→正射影ベクトルの公式の証明と使い方を知っていると理解しやすいです。

正規直交基底であることの証明

グラムシュミットの直交化法がうまくいっていることを証明します。

証明

・正規性(長さが1であること)
各ステップの後半の式で正規化している($\dfrac{v}{|v|}$ というタイプのベクトルの長さは1である)のでOK。

・直交性
$u_1\cdot u_2=\dfrac{1}{|v_2|}u_1\cdot v_2$ であることと,
$u_1\cdot v_2=a_2\cdot u_1-(a_2\cdot u_1)|u_1|^2=0$
より $u_1$ と $u_2$ は直交する。 $u_2\cdot u_3=0,u_3\cdot u_1=0$ も同様に示せる。

  • $a_1,a_2,a_3$ を「用いて」いること
  • $u_1$ は $a_1$ の定数倍
  • $u_2$ は「 $a_2$ と $u_1$ の定数倍の和」つまり $a_1$ と $a_2$ の線形結合で表せる
  • $u_3$ は「 $a_3$ と $u_1$ と $u_2$ の定数倍の和」つまり $a_1$ と $a_2$ と $a_3$ の線形結合で表せる

具体例

例題

$a_1=(1,1,1),a_2=(1,-1,2),a_3=(-1,1,3)$ にグラムシュミットの直交化を適用せよ。

解答

STEP1:
$|a_1|=\sqrt{3}$ より $u_1=\dfrac{1}{\sqrt{3}}(1,1,1)$
STEP2:
$v_2=a_2-(a_2\cdot u_1)u_1=a_2-\dfrac{2}{\sqrt{3}}u_1=\dfrac{1}{3}(1,-5,4)$
$u_2=\dfrac{1}{\sqrt{42}}(1,-5,4)$
STEP3:
$v_3=a_3-(a_3\cdot u_1)u_1-(a_3\cdot u_2)u_2$
$=a_3-\sqrt{3}u_1-\dfrac{6}{\sqrt{42}}u_2\\
=\dfrac{1}{7}(-3,1,2)$
$u_3=\dfrac{1}{\sqrt{14}}(-3,1,2)$

こんなことして何が嬉しいのか?と思いがちですが,例えば行列のQR分解というものに使います!
分野: 線形代数  レベル: マニアック