2016/02/05

ガウス整数とその応用

分野: 整数問題  レベル: マニアック

整数 $a,b$ を用いて $a+bi$ と表される複素数をガウス整数(複素整数)と呼ぶ。

関連する用語

ガウス整数全体の集合をガウス整数環と言います。

「ふつうの」整数を有理整数と言うこともあります。また,有理整数全体の集合を有理整数環と言います。

ガウス整数における倍数,約数の定義は有理整数の場合と同様です。つまり,ガウス整数 $a,b$ に対して $a=bc$ となるガウス整数 $c$ が存在するとき,$a$ は $b$ の倍数($b$ は $a$ の約数)と言います。

素因数分解(既約元分解)

ガウス整数環における「素数」をガウス素数と言います。つまり,($\pm 1,\pm i$ と異なる)2つのガウス整数の積で表せないもの(で$\pm 1,\pm i$ は除く)のことです。

例えば $2$ は有理整数の範囲ではこれ以上分解できませんが,ガウス整数では $(1+i)(1-i)$ と分解できるのでガウス素数ではありません。

ガウス整数環においても「ふつうの」整数の場合と同様に素因数分解の一意性が成立します(ガウス整数環は一意分解整域)。

ただし,$-1$ または $\pm i$ 倍で移れるガウス素数は「同じ」ものとみなします。
(例えば $2=(1+i)(1-i)=(-1+i)(-1-i)$ は同じ分解)

応用

ガウス整数の応用として,ピタゴラス数についての以下の定理を証明してみます(→ピタゴラス数の求め方とその証明)。

$a^2+b^2=c^2$ を満たす正の整数の組の中で $a,b,c$ の最大公約数が1のものは,正の整数 $m,n$ を用いて $a=m^2-n^2,b=2mn,c=m^2+n^2$
(または $b=m^2-n^2,a=2mn,c=m^2+n^2$)
という形で表せる。

証明

$a^2+b^2=c^2$ は
$(a+bi)(a-bi)=c^2$
と変形できる。$(a+bi)$ と $(a-bi)$ は互いに素(→補足)であり,それらの積が平方数なので,両方とも平方数(に $\pm 1,\pm i$ のいずれかをかけたもの)である(→注意)。
$(a+bi)$ が平方数である場合を考える。このとき,整数 $m,n$ を用いて,
$(a+bi)=(m+ni)^2=m^2-n^2+2mni$ とおける。つまり,
$a=m^2-n^2,b=2mn$
となる。さらに, $c=m^2+n^2$ となる。
($b > 0$ より $m,n$ は同符号。さらに $(m+ni)^2=(-m-ni)^2$ より)$m,n$ は正の整数に取れる。

なお,$(a+bi)$ が平方数 $\times (-1)$ のときは $m$ と $n$ の役割が入れ替わるだけで同じ形の式が得られる。
$(a+bi)$ が平方数 $\times (\pm i)$ のときは $a$ と $b$ の役割が入れ替わる。

補足

背理法で証明する。$(a+bi)$ と $(a-bi)$ がともに $d\:(\neq \pm 1,\pm i)$ の倍数とすると,和と差を取ることにより,$2a$ と $2bi$ も $d$ の倍数であることが分かる。
$a$ と $b$ は互いに素なものを考えているので,$d=2$(または $-2,\pm 2i$)

このとき,$(a+bi)(a-bi)$ が $4$ の倍数,つまり $c$ が偶数となる。これは矛盾($4$ で割った余りを考えることにより $c$ は奇数であることが必要→平方剰余)。

注意

ここでガウス整数における「素因数分解の一意性」を使っています。

「せいいき」で変換しても「整域」は出てきませんね。
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