2015/06/01

行列の対角化の意味と具体的な計算方法

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

与えられた正方行列 $A$ に対して,正則行列 $P$ をうまく取ってきて $P^{-1}AP$ を対角行列にする操作を対角化と言う。

  • 対角化の嬉しさ
  • 対角化の方法(一般論)
  • $2\times 2$ 行列の具体例

の順に解説します。

対角化の意味(嬉しさ)

  • 簡単な表現を求めることができる
    正則行列 $P$ を用いて $B=P^{-1}AP$ となる行列 $B$ は「ある意味で $A$ と同じ」とみなせます($A$ と $B$ は相似であると言う,詳細は省略)。
    そこで「ある意味で同じ」行列の中で一番簡単な表現方法(標準形)を求めたいという要望が出てきます。対角行列はとてもシンプルな表現なので,対角化できると嬉しいのです。
  • $A^n$ が計算できる
    $P^{-1}AP=D$ の両辺を $n$ 乗して変形すると,$A^n=PD^nP^{-1}$ となります。 $D^n$ の計算は簡単なので,$A^n$ も計算できます。

対角化の条件&計算方法

$A$ を $n\times n$ 行列とし,$A$ の固有値と固有ベクトルを $\lambda_i,x_i\:(i=1,\cdots, n)$ とします。→固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法

対角化の条件&方法
1.線形独立な $A$ の $n$ 本の固有ベクトルを取ってこれるとき,$A$ は対角化可能である。
2.対角化に用いる行列として,固有ベクトルを並べた行列 $P=(x_1,x_2,\cdots, x_n)$ が使える。
3.得られる対角行列 $D$ の対角成分は $A$ の固有値である。

注:対角化の条件については記事末の補足も参照。

証明

$A$ の固有ベクトル $x_1, x_2,\cdots ,x_n$ が線形独立なとき,$P$ は正則であり,$P^{-1}$ が存在する。このとき,$P^{-1}AP$ を計算する。

まず,固有値,固有ベクトルの定義より,
$AP=A(x_1,x_2,\cdots, x_n)=(\lambda_1x_1,\lambda_2x_2,\cdots \lambda_nx_n)$

また,$P^{-1}$ の第 $i$ 行目を $y_i$(横ベクトル)とおくと,
$P^{-1}=\begin{pmatrix}y_1\\y_2\\\vdots\\y_n\end{pmatrix}$ であり,逆行列の定義より内積 $y_ix_i$ は $i$ と $j$ が等しいとき $1$,そうでないとき $0$ となる。

よって,$P^{-1}AP=\begin{pmatrix}y_1\\y_2\\\vdots\\y_n\end{pmatrix}(\lambda_1x_1,\lambda_2x_2,\cdots \lambda_nx_n)=D$
(ただし,$D$ は第 $ii$ 成分が $\lambda_i$ である対角行列)となる。

対角化の具体例

実際に $2\times 2$ 行列を対角化してみます。
固有値,固有ベクトルが計算できれば対角化できたも同然です!

例題

$A=\begin{pmatrix} 3&1\\2&2\end{pmatrix}$ を対角化せよ。

解答

($A$ の固有値,固有ベクトルは固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法の例題で求めた)

固有値 $1$ に対応する固有ベクトル $\begin{pmatrix}1\\-2\end{pmatrix}$,
固有値 $4$ に対応する固有ベクトル $\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$ より,
$P=\begin{pmatrix}1&1\\-2&1\end{pmatrix}$,$D=\begin{pmatrix}1&0\\0&4\end{pmatrix}$ とおくと,
$P^{-1}AP=D$ となる(実際,簡単な計算で確認することもできてちょっと感動する)。

重要な補足

  • $A$ が異なる固有値を $n$ 個持てば必ず対角化可能です。
    (異なる固有値に対応する固有ベクトルは線形独立であることが証明できる)
  • $A$ が対称行列,エルミート行列のとき,直交行列で対角化可能です。→対称行列の固有値と固有ベクトルの性質の証明
$A$ に固有値の重複がある場合は対角化できない場合もあります。その場合はジョルダン標準形が登場します。→ジョルダン標準形の意味と求め方
分野: 線形代数  レベル: 大学数学