ドモルガンの法則の解説

ド・モルガンの法則

任意の集合 A,BA,B に対して以下が成立します。

  • AB=AB\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}
  • AB=AB\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B}

これをド・モルガンの法則と言います。

ただし,

  • ABA\cap B は集合の共通部分「AA かつ BB
  • ABA\cup B は和集合「AA または BB
  • A\overline{A}AA の補集合「AA でない」

を表します。

ド・モルガンの法則について3通りの解説をします。

ド・モルガンの法則のベン図による解説

ド・モルガンの法則はベン図を書けば簡単に理解できます。 ド・モルガンの法則

まずは AB=AB\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B} を確認してみましょう。

AB\overline{A\cup B} は「AA または BB」 の外側です。つまり上図の緑色の部分を表します。一方右辺の AB\overline{A}\cap \overline{B} は「AA でないかつ BB でない」部分です。同じく上図の緑色の部分を表します。

次に AB=AB\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B} を確認してみましょう。

AB\overline{A\cap B} は「AA かつ BB」 の外側です。つまり図の青色の部分を表します。一方右辺の AB\overline{A}\cup \overline{B} は「AA でないまたは BB でない」部分です。同じく図の青色の部分を表します。

ド・モルガンの法則の日本語による解説

ド・モルガンの法則を日本語で表現すると以下のようになります。

AB=AB\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}

\toAA または BB」でない,という状況は「AA でない」かつ「 BB でない」という状況と同じ。

AB=AB\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B}

\toAA かつ BB」でない,という状況は「AA でない」または「 BB でない」という状況と同じ。

多くの人はよく分からないと思いますが,この日本語を見ただけで納得できる人にとってはこの説明のみで十分でしょう。

ド・モルガンの法則の真理値表による解説

いわゆる総当りです。

真理値表

ある要素 xx が集合 AA に属しているかどうか,集合 BB に属しているかどうか四通りに場合分けします。そして等式の左辺に属しているか,右辺に属しているかそれぞれ調べます。

四通り日本語で説明するのはめんどうなので表を書きます。このような表を真理値表と言います。

  • 等式1:AB=AB\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap \overline{B}
  • 等式2:AB=AB\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup \overline{B}

が成立していることがわかります。

例えば二行目は xxAA に属しており,BB に属していない場合に,AB\overline{A\cup B} などに属しているかどうかを表しています。一つ一つ確認してみてください(横ではなく縦に見て埋めていくと楽です)。

nn 個の場合のド・モルガンの法則

集合 22 個の場合のド・モルガンの法則を説明しました。実は,集合が nn 個の場合も似たような以下の式が成立します:

  • A1A2An=A1A2An\overline{A_1\cup A_2\cup\cdots\cup A_n}=\overline{A_1}\cap \overline{A_2}\cap\cdots\cap\overline{A_n}
  • A1A2An=A1A2An\overline{A_1\cap A_2\cap\cdots\cap A_n}=\overline{A_1}\cup \overline{A_2}\cup\cdots\cup\overline{A_n}

2個の場合のド・モルガンの法則と数学的帰納法を使って証明できます。

集合の等式について

ド・モルガンの法則含め,集合の等式については以下のように理解するとよいでしょう。

  1. ベン図が簡単に書けるならそれで簡単に理解できる,

  2. 無理なら総当りで確かめればよい,

  3. 簡単なものなら日本語でいいかえてみると意味が分かってなお面白い。

1のベン図が一番分かりやすいです。困ったらベン図を書きましょう。集合が3つ以下ならどんな集合の等式もベン図で証明できます。しかし,集合が4つ以上だと通用しません。

2の総当りは数学的に厳密で,どんな等式にも対応できます。しかし,集合の数が nn 個ある場合は 2n2^n 通り調べる必要があり大変です。

3の日本語については,みんなが納得できる説明ではない(数学的に厳密でない)ですが理解できると楽しいです。

なお,同様の議論が論理記号でも成立します。論理記号の等式の証明についても以上の考え方は有効です。

ド・モルガンの法則は入試で必要になることは少ないですが,式変形の途中にしれっと登場したりするので覚えておきましょう。

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