2014/05/19

Cauchy Reverse Technique

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

Cauchy Reverse Techniqueは分数の和を下からおさえるときに使える不等式証明のテクニックです。

Cauchy Reverse Techniqueの雰囲気

「Cauchy」という名前がついていますが,使うのはコーシーシュワルツの不等式ではなく相加相乗平均の不等式です。

とりあえず具体的な問題で雰囲気を掴んでください。
読者の方に教えて頂いた問題です。

例題1

$x,y,z$ が正の実数のとき以下の不等式を証明せよ:
$\dfrac{x^3}{x^2+y^2}+\dfrac{y^3}{y^2+z^2}+\dfrac{z^3}{z^2+x^2}\geq\dfrac{x+y+z}{2}$

解答

相加相乗平均の不等式より,
$\dfrac{x^3}{x^2+y^2}=x-\dfrac{xy^2}{x^2+y^2}\\
=x-\dfrac{xy^2}{x^2+y^2}\\
\geq x-\dfrac{xy^2}{2xy}\\
=x-\dfrac{y}{2}$
同様な式を3つ作って足し合わせると題意の不等式を得る。

1行目の変形は $x$ を変数,$y$ を定数と見て多項式の割り算をしています。

CRTについての考察

名前が長いのでCRTと略します。

・分母が多項式のときに使える
$K=\dfrac{A}{B+C}$ というような項があると分母が多項式なので直接計算するのが厳しいわけです。そこで,分母を単項式にするような評価が欲しいので $B+C\geq 2\sqrt{BC}$ を用いると $K$ を上からおさえることができます。
しかし下から押さえたいときには工夫する必要があります。
その工夫がCRTです。
多項式の割り算などを用いて符号を「反転」させてから相加相乗平均の不等式を用います。

・巡回式に強い
CRTは分数の和を下からおさえたいときに使えるテクニックです。同様なテクニックにシュワルツの不等式の応用公式があります。
後者(シュワルツ)の方が使う機会が多いですが,主に対称式の場合のテクニックです。CRTは巡回式の不等式証明で威力を発揮することが多いです。実際に先ほどの例も巡回式です。

CRT応用例

ブルガリアの代表選抜試験の問題です。

例題2

$a+b+c=3$ のとき以下の不等式を証明せよ:
$\dfrac{a}{1+b^2}+\dfrac{b}{1+c^2}+\dfrac{c}{1+a^2}\geq\dfrac{3}{2}$

方針:割り算の逆の操作を行って強引に符号を反転させた上でCRTを用います。その後不等式を整理して不等式証明のコツ2:斉次式化を用います。

解答

$\dfrac{a}{1+b^2}=\dfrac{a+ab^2-ab^2}{1+b^2}\\
=a-\dfrac{ab^2}{1+b^2}\\
\geq a-\dfrac{ab}{2}$
よって,同様な式を3つ足し合わせると
左辺 $\geq 3-\dfrac{1}{2}(ab+bc+ca)$ となる。
これが $\dfrac{3}{2}$ より大きいことを示す。
つまり,$ab+bc+ca\leq 3$ を示せば良い。
$a+b+c=3$ を用いて斉次式化すると,$ab+bc+ca\leq \dfrac{1}{3}(a+b+c)^2$
これは展開して整理すると有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caとなる。

ネタを提供してくださった読者の方に感謝!
分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック