2014/03/21

懸垂線の2通りの導出

分野: 指数・対数関数  レベル: マニアック

紐の両端を手で持ってたらした曲線の式は
$y=\dfrac{a(e^{\tfrac{x}{a}}+e^{-\tfrac{x}{a}})}{2}$

この曲線は懸垂線またはカテナリーと呼ばれる非常に有名な曲線です。懸垂線に関する入試問題はたまに出題されるので,知っておくべき性質をまとめた後に導出を紹介します。

懸垂線の有名な性質

懸垂線

・懸垂線は紐の両端を持ってたらした式
これは性質というより定義ですが,絶対に覚えておきましょう。鎖とか橋とかetc。ちなみに僕は懸垂線を見かけたら嬉しくなります(^ω^)

・放物線で近似できる
マクローリン展開を用いて原点付近で以下のように2次近似を行うことができます。
$e^{\tfrac{x}{a}}\simeq 1+\dfrac{x}{a}+\dfrac{x^2}{2a^2}\:\:, e^{-\tfrac{x}{a}}\simeq 1-\dfrac{x}{a}+\dfrac{x^2}{2a^2}$ より,懸垂線は $y=\dfrac{x^2}{2a}+a$ と近似できます。

双曲線関数である
双曲線関数と呼ばれる有名な関数 $\sinh x, \cosh x$ が存在します:
$\sinh x=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}, \cosh x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}$

双曲線関数は三角関数のように様々な関係式が成立し応用範囲も広く非常に重要な関数なのですが,高校ではあまり取りあげられていません。カテナリーは双曲線関数 $a\cosh \dfrac{x}{a}$ と同じということを覚えておくとよいでしょう。

微分方程式を用いた導出

微分方程式は高校範囲外ですが,数3まで知っていれば以下の導出はなんとなく理解できると思われます。

1.微分方程式の導出

懸垂線の導出

長い紐の一部 $0\leq x \leq x_0$ の区間を考える。両端にかかる張力を $T_0, T$,紐にかかる重力を $W$,$x_0$ での紐の角度を $\theta$ とおくと,$T_0$ は $x_0$ によらない定数なので(注),力の釣り合いから以下の式が成立する:
$T\cos\theta=T_0, T\sin\theta=W$
よって,$\tan\theta=\dfrac{W}{T_0}$
ここで,$W$ は線の長さ $s$ に比例するので,
$\dfrac{dy}{dx}=\tan\theta=\dfrac{s}{a}$($a$ は定数)と書ける。

注:もし $x_0$ を $x_0+\Delta x$ にしたときに $T_0$ が $T_0’$に変化してしまうと,紐の $x_0$ から $x_0+\Delta x$ の部分に関して水平方向の釣り合いが成り立ちません。なぜなら,その部分では左側に $T_0$ の力が,右側には $T_0’$の力がかかるからです。よって,$T_0$ は $x_0$ によらず定数です。

2.微分方程式の解法

$ds^2=dx^2+dy^2$ より,
$\dfrac{ds}{dx}=\sqrt{1+(\dfrac{dy}{dx})^2}=\dfrac{\sqrt{s^2+a^2}}{a}$
よって,$\displaystyle\int \dfrac{ds}{\sqrt{s^2+a^2}}=\displaystyle\int \dfrac{dx}{a}$
左辺の積分計算がめんどくさいので詳細は省略するが,両辺積分して整理する:
$s=a\sinh \dfrac{x}{a}=\dfrac{a(e^{\tfrac{x}{a}}-e^{-\tfrac{x}{a}})}{2}$
(境界条件は $x=0$ で $s=0$)
同様に,$\dfrac{ds}{dy}=\sqrt{1+(\dfrac{dx}{dy})^2}=\dfrac{\sqrt{s^2+a^2}}{s}$
から,$\displaystyle\int \dfrac{sds}{\sqrt{s^2+a^2}}=\displaystyle\int dy$
の両辺を積分して $y=\sqrt{a^2+s^2}$
以上2式より $s$ を消去すれば懸垂線の式が得られる。

変分法を用いた導出

こちらの証明方法は高校範囲では理解できないかもしれません。大学の数学で習う「変分法」という汎関数の値を停留させる関数を求める手法を用います。

紐に蓄えられた位置エネルギーは以下の式で表される:
$\displaystyle\int mgyds=\rho g\int y\sqrt{1+y^{\prime 2}}dx$
よって,$f=y\sqrt{1+y^{\prime 2}}$ とおいてオイラーラグランジュ方程式を用いるのが筋。
ただし,$f$ は $x$ を含まないので,ベルトラミの公式 $f-y^{\prime}\dfrac{\partial f}{\partial y^{\prime}}=C$ が使える:
$\dfrac{y}{\sqrt{1+y^{\prime 2}}}=C$
上式を整理する:
$\displaystyle\int \dfrac{Cdy}{\sqrt{y^2-C^2}}=\displaystyle\int dx$
よって,この式を積分することにより,懸垂線の一般式が得られる:
$y=C\cosh (\dfrac{x-A}{C})$
特に,$x$ 軸対称な場合が重要で,そのときには積分定数 $A=0$ となり,題意の式を得る。

紐を垂らしたら指数関数が出てくるってなんか感動します!

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