2014/07/24

代数学の基本定理とその初等的な証明

分野: 方程式,恒等式  レベル: 最難関大学

代数学の基本定理:
複素数係数の $n$ 次方程式は複素数の範囲で(重複度も含めて)$n$ 個の解を持つ。

高校範囲でも暗黙の了解として使っている偉大な定理です。

代数学の基本定理のステートメントの解説

・複素数係数の $n$ 次方程式とは複素数 $a_0,a_1,\cdots,a_n\:(a_n\neq 0)$ を用いて $a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots a_1x_1+a_0=0$
と表すことができる方程式です。

  • 実数は複素数の一種です。よって「実数係数の $n$ 次方程式」は「複素数係数の $n$ 次方程式」でもあるので実数係数の $n$ 次方程式も $n$ 個の解を持つことが分かります。
  • 「重複度を含めて」なので重解は2つ,三重解は3つとカウントします。

代数学の基本定理の証明

定理のステートメントにがっつり複素数が入っているのでどうしても複素数の議論が必要になります。複素数平面の知識があると理解しやすいでしょう。

使う道具は数学的帰納法,因数定理,最大値の原理です。

証明

複素数 $x$ に対して関数
$f(x)=|a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0|$
(複素数の絶対値)を考える。

$x$ の絶対値が十分大きい時には $a_nx^n$ が支配的で,$f(x)$ はいくらでも大きくなる。
よって,ある大きな実数 $R$ が存在して $|x| > R$ なら $f(x) > f(0)$

よって,最小値を与える $x_c$ が $|x| \leq R$ 内にあるとしてよい。(注1)

$f(x_c)\neq 0$ と仮定すると $x$ を $x_c$ から少し動かすことで $f(x)$ をより小さくできるので矛盾。(注2)

つまり $f(x_c)=0$ である。よって因数定理より,題意の方程式は $x=x_c$ を解に持ち,
$(x-x_c)p(x)=0$ ($p(x)$ は $n-1$ 次式)
と因数分解できる。帰納法の仮定より $p(x)=0$ は解を $n-1$ 個持つので代数学の基本定理が示された。

注1:厳密には上記の議論で最小値を取るとしたら $|x| \leq R$ なる $x$ であることが分かりました。
そして実際に最小値が存在することは最大値の原理「有界閉区間(orコンパクト集合)上の連続関数は最大値,最小値を持つ」から分かります。

注2:ごまかしたので以下できちんと証明します。

証明を完結させる

$x_c$ から少し動かして $x_c+\epsilon$ としたときに $f(x)$ の値をより小さくできることを証明すれば完了です。そのような $\epsilon$ を工夫して作り出せば勝ちです。
(ここでの $\epsilon$ は複素数です)

証明

$f(x_c+\epsilon)-f(x_c) <0$ となるような $\epsilon$ の存在を示せばよい。

$f(x_c+\epsilon)-f(x_c)\\
=|A_0+A_1\epsilon+A_2\epsilon^2+\cdots +A_n\epsilon^n|-|A_0|$

ここで,$A_0, A_1,\cdots ,A_n$ は $|A_0|=f(x_c)\neq 0$ を満たす定数。
($f(x_c+\epsilon)$ を展開して $\epsilon$ について整理したときの係数)

$A_1, A_2,\cdots ,A_n$ のうち $0$ でない最初のものを $A_k$ とおく。
$\epsilon$ の絶対値が十分小さいとき $A_{k+1}\epsilon^{k+1}$ 以下の項はほっとける。
つまり,
$f(x_c+\epsilon)-f(x_c)=|A_0+A_k\epsilon^k+\epsilon$ の高次の項 $|-|A_0|$
となる。

そこで,$t$ をとある小さな正の実数として,$A_k\epsilon^k=-t^kA_0$ となるような $\epsilon$ を持ってくる。
具体的には,$\epsilon=t\sqrt[k]{-\dfrac{A_0}{A_k}}$ とおく。
($k$ 乗して $z$ になる複素数は一般に $k$ 個あるが,どれでもよい。それを $\sqrt[k]{z}$ と表した。)

すると,このように定めた $\epsilon$ に対して
$f(x_c+\epsilon)-f(x_c)=|A_0(1-t^k)+F(t)|-|A_0|$
となる。ただし,$F(t)$ は $t$ の $k$ 乗より高次の項。

これは $t$ を十分小さな実数とすれば負になる。

証明の後半部分はわりと難しいですが,代数学の基本定理の証明を理解できたときの喜びはひとしおです。

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