整数論の美しい定理7つ

整数論(数論)の美しい7つの定理を紹介します。素数にまつわる定理が多いです。いずれも証明は難しいので定理の鑑賞にとどめておきます。

素数定理

1. Prime Number Theorem(素数定理)

11 から nn までの整数の中にある素数の数を π(n)\pi(n) とおく。

nn が十分大きいとき,π(n)nlogn\pi (n)\fallingdotseq \dfrac{n}{\log n}

つまり,limnπ(n)lognn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{\pi(n)\log n}{n}=1

  • (私が思う)整数論の最も美しい定理です。素数の分布(割合)に関する非常に有名な定理です。主張は簡単&美しい,にもかかわらず証明は非常に難しいです(私も理解していません)。
  • 素数定理から,素数が無限個あることが分かります。

ベルトランの仮説

2. Bertrand’s Postulate(ベルトランの仮説)

22 以上の任意の正の整数 nn に対して n<p<2nn <p <2n を満たす素数 pp が存在する。

  • 「仮説」となっていますが,証明されています。これも素数にまつわる美しい定理です。
  • いくつか証明がありますが,エルデシュが高校生のころにルジャンドルの定理などを用いた初等的な証明を与えています。当サイトを理解できる人なら一時間くらいで読めるくらいの難易度です。

ディリクレの算術級数定理

3. Dirichlet's theorem on arithmetic progressions(ディリクレの算術級数定理)

aabb が互いに素な正の整数のとき,an+ban+b 型の素数は無限個存在する。

  • これまた非常に美しい定理です。証明は難しいらしいですが,どれくらい難しいかも私には分かりません。
  • 4n+14n+1 型,4n+34n+3 型など a,ba,\:b が特殊な場合には高校生でも太刀打ちできるレベルです。

ボンゼの不等式

4. Bonse's inequality(ボンゼの不等式)

素数を小さい順に p1,p2,p_1,\:p_2,\:\cdots とおく。n4n\geq 4 のとき,

p1p2p3pn>pn+12p_1p_2p_3\cdots p_n > p_{n+1}^2

  • n=4n=4 のとき,2×3×5×7=2102\times 3\times 5\times 7=210 となり確かに 112=12111^2=121 より大きいです。
  • 証明は「数と図形」という本に載っています。高校生にも十分理解できます。

ここまで4つは露骨に素数に関する定理でしたが,残り3つは素数とは直接関係ない整数論の定理です。

ラグランジュの定理

5. Lagrange's four-square theorem(ラグランジュの定理)

任意の非負整数は,四つの非負整数の平方の和として表せる。

  • 例えば,2=12+12+02+022=1^2+1^2+0^2+0^215=32+22+12+1215=3^2+2^2+1^2+1^2 などです。
  • ラグランジュの定理の証明は英語のサイトを探せばいろいろなものが見つかります。

Zsigmondyの定理

6. Zsigmondy's theorem

互いに素な整数 a,ba,\:ba>b>0a > b > 0 を満たすとき(いくつかの特殊な例外を除いた状況のもとで)任意の正の整数 nn に対して以下が成立する:

k=1,2,,n1k=1,2,\cdots , n-1 に対して akbka^k-b^k の素因数ではないが,anbna^n-b^n の素因数であるようなものが存在する。

  • 数学オリンピックの問題を解くときにたまに役立つ定理ですが,証明が非常に難しい(私も理解していません)ので試験場では使いにくい定理です。
  • 定理の詳細,数オリへの応用はZsigmondy’s theoremを参照してください。

フェルマーの最終定理

7. Fermat's Last Theorem(フェルマーの最終定理)

n3n\geq 3 なる整数 nn に対して,xn+yn=znx^n+y^n=z^n を満たす正の整数の組 x,y,zx,\:y,\:z は存在しない。

→フェルマーの最終定理

7つとも美しい定理ですが,私は特に素数定理とラグランジュの定理が好きです。

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