分母の有理化の方法と問題例6問(中学から高校まで)

分母の有理化

1333\dfrac{1}{\sqrt{3}}\to\dfrac{\sqrt{3}}{3} のように,分母を有理数にする変形を分母の有理化と言います。

分母の有理化について,簡単な例題から難しい例題まで詳しく解説します。

中学生や基本からおさらいしたいという方は「分母のルートの外し方(n\sqrt{n})」までを主に読むことをおすすめします。

高校生以上の方でより発展的な内容を学びたい方は,主に「分母の有理化(分母が2項の場合)」以降を読むことをおすすめします。

分母の有理化とは

13\dfrac{1}{\sqrt{3}} という分数について考えます。分母 3\sqrt{3} は無理数です。

分母と分子に同じ数(3\sqrt{3})をかけても値は同じなので, 13=1×33×3=33\dfrac{1}{\sqrt{3}}=\dfrac{1\times\sqrt{3}}{\sqrt{3}\times\sqrt{3}}=\dfrac{\sqrt{3}}{3} と変形できます。新しくできた分数 33\dfrac{\sqrt{3}}{3} の分母 33 は整数(有理数)です。

このように,分母を有理数にする変形を分母の有理化と言います。例えば,「分母に根号を含む数」を「分母に根号を含まない数」に変形することを,分母を有理化すると言います。

分母を有理化する理由については,分母の有理化や実数化についてに記載しています。

分母の有理化の基本の考え方

分母の有理化の計算にあたり,基本は以下のような考えで進めていくことになります。

分母の有理化の基本の考え方
  1. 分母のルートの中身を簡単にして約分する
  2. 分母のルートを外すよう,分母と分子に同じ数をかける
  3. 分子のルートの中身を簡単にし,約分する

2番をして良い理由は,冒頭でも述べたとおり,分母と分子に同じ数をかけても分数の値は変わらないためです。

以下で,分母の有理化で用いる方法を3つ紹介します。

分母のルートの外し方(分母が n\sqrt{n} のとき)

分母が n\sqrt{n} である分数は,分母と分子に n\sqrt{n} をかけることで有理化できます。(ただし nn は整数とします)

分母のルートの外し方(分母がルートnのとき)

1n=nn \dfrac{1}{\sqrt{n}}=\dfrac{\sqrt{n}}{n}

例えば,さきほどの 13\dfrac{1}{\sqrt{3}} では,分母と分子に 3\sqrt{3} をかけることで有理化できました: 13=1×33×3=33\dfrac{1}{\sqrt{3}}=\dfrac{1\times\sqrt{3}}{\sqrt{3}\times\sqrt{3}}=\dfrac{\sqrt{3}}{3}

例題1

22\dfrac{2}{\sqrt{2}} の分母を有理化せよ。

解答

分母が 2\sqrt{2} なので,分母と分子に 2\sqrt{2} をかければ有理化できます: 22=2×22×2=222=2\dfrac{2}{\sqrt{2}}=\dfrac{2\times\sqrt{2}}{\sqrt{2}\times\sqrt{2}}=\dfrac{2\sqrt{2}}{2}=\sqrt{2}

最後に約分できるときは約分するのを忘れないようにしましょう。

分母の有理化(分母が2項の場合)

分母が複雑な場合には,乗法公式を意識して,分母の根号を外すことを考えます。乗法公式については乗法公式(式の展開公式)19個まとめでまとめてありますので,こちらもぜひ参考にしてください。

分母が根号を含む2項の場合は,和と差の展開公式を意識して分母の有理化をします。

和と差の展開公式

(x+a)(xa)=x2a2(x+a)(x-a)=x^2-a^2

分母が A+BA+B のかたちのとき

分母が A+BA+B なら,分母と分子に ABA-B をかけることで有理化できます。(ただし AABB は整数または n\sqrt{n} とします)

分母がA+Bのかたちのときの分母の有理化

1A+B=ABA2B2 \dfrac{1}{A+B}=\dfrac{A-B}{A^2-B^2}

分母の AABB が2乗のかたちで現れるため,分母を有理化できるというわけです。

例題2

45+2\dfrac{4}{\sqrt{5}+\sqrt{2}} の分母を有理化せよ。

分母が 5+2\sqrt{5}+\sqrt{2} なので,分母と分子に 52\sqrt{5}-\sqrt{2} をかければ有理化できます:
45+2=4(52)(5+2)(52)=4542(5)2(2)2=45423\dfrac{4}{\sqrt{5}+\sqrt{2}}\\ =\dfrac{4(\sqrt{5}-\sqrt{2})}{(\sqrt{5}+\sqrt{2})(\sqrt{5}-\sqrt{2})}\\ =\dfrac{4\sqrt{5}-4\sqrt{2}}{(\sqrt{5})^2-(\sqrt{2})^2}\\ =\dfrac{4\sqrt{5}-4\sqrt{2}}{3}

ただし途中で (A+B)(AB)=A2B2(A+B)(A-B)=A^2-B^2 という展開公式を使いました。

分母が ABA-B のかたちのとき

A+BA+B には ABA-B をかけました。逆に,ABA-B には A+BA+B をかけることで有理化できます。

分母がA-Bのかたちのときの分母の有理化

1AB=A+BA2B2 \dfrac{1}{A-B}=\dfrac{A+B}{A^2-B^2}

例題3

123\dfrac{1}{2-\sqrt{3}} を有理化せよ。

分母と分子に 2+32+\sqrt{3} をかけると, 2+3(23)(2+3)=2+3\dfrac{2+\sqrt{3}}{(2-\sqrt{3})(2+\sqrt{3})}=2+\sqrt{3} となります。

分母がさらに複雑な分数の有理化(分母が3項以上の場合)

分母の項が3つ以上の場合も同様に,(A+B)(AB)=A2B2(A+B)(A-B)=A^2-B^2 を使って有理化します。根号を含む2つの項を1つの項と考えて有理化を図ることがポイントになります。

例題5

41+2+3\dfrac{4}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}} の分母を有理化せよ。

解答

分母分子に 1+231+\sqrt{2}-\sqrt{3} をかけて計算すると,2+262+\sqrt{2}-\sqrt{6} になる。計算の詳細は →分母に項が3つある場合の有理化の例1

例題6

11+2+3+5\dfrac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}} の分母を有理化せよ。

解決には2通りの方針が考えられます。まず,簡単に計算できる方針を述べます。

方針1

分母分子に (1+2)(3+5)(1+\sqrt{2})-(\sqrt{3}+\sqrt{5}) をかけて頑張る。

次に,愚直に計算する方針を紹介します。こちらの方が計算が大変ですが,反面分母の項数が増えても適用可能という利点も持っています。

方針2

分母分子に 1+2+351+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{5} かけて,5\sqrt{5} を消す。

次に,分母を a+b2+3(c+d2)a+b\sqrt{2}+\sqrt{3}(c+d\sqrt{2}) という形に変形した上で,分母分子に a+b23(c+d2)a+b\sqrt{2}-\sqrt{3}(c+d\sqrt{2}) をかけて 3\sqrt{3} を消す。最後に 2\sqrt{2} を消す。

答えは,

171(93612553+535+46634102615+1430)\dfrac{1}{71}(93-61\sqrt{2}-55\sqrt{3}+53\sqrt{5}\\+46\sqrt{6}-34\sqrt{10}-26\sqrt{15}+14\sqrt{30})

(きたなっ!)

ここまで,分母にルートが入った式の有理化の方法を紹介しました。

累乗根が入った式の有理化

分母にルートでなく,累乗根が含まれるような場合でも,有理化できる場合があります。

分母に三乗根が入った式も,有理化したくなる場合があります。aa の三乗根 a3\sqrt[3]{a} とは,3乗して aa になる数のことで,高校数学で習います。

分母が a3±b3\sqrt[3]{a}\pm\sqrt[3]{b} という形の場合,分母分子に (a3)2ab3+(b3)2(\sqrt[3]{a})^2\mp\sqrt[3]{ab}+(\sqrt[3]{b})^2 をかけることで有理化できます。 乗法公式のうち,

(ab)(a2+ab+b2)=a3b3(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3

という公式を使って三乗を作り出します。

例題4

123+1\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}+1} の分母を有理化せよ。

解答

分母分子に (23)223+1(\sqrt[3]{2})^2-\sqrt[3]{2}+1 をかけると,

(23)223+12+1=13{(23)223+1}\dfrac{(\sqrt[3]{2})^2-\sqrt[3]{2}+1}{2+1}=\dfrac{1}{3}\{(\sqrt[3]{2})^2-\sqrt[3]{2}+1\}

となる。

より一般に,nn 乗根が入った式の有理化には,因数分解公式(n乗の差,和)を使います。

一応 12+3+5+7+11\dfrac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}+\sqrt{7}+\sqrt{11}} などの分母も有理化できます。