複素数平面の問題(2016年東大理系第4問)

2016年東大理系第4問を解説します。

問題と解答

新課程になってからはじめて,東大で複素数平面の問題が出題されました。

問題

zz を複素数とする。複素数平面上の三点 A(1)A(1)B(z)B(z)C(z2)C(z^2) が鋭角三角形をなすような zz の範囲を求め,図示せよ。

解答

AB=1zAB=|1-z|

BC=zz2=z1zBC=|z-z^2|=|z|\cdot |1-z|

CA=z21=1+z1zCA=|z^2-1|=|1+z|\cdot |1-z|

よって,AB:BC:CA=1:z:1+zAB:BC:CA=1:|z|:|1+z|

角度は辺の長さの比のみで決まる

鋭角三角形になる条件は,

AB2+BC2>CA2AB^2+BC^2 > CA^2

BC2+CA2>AB2BC^2+CA^2 > AB^2

CA2+AB2>BC2CA^2+AB^2 > BC^2

つまり,z=a+biz=a+bia,ba,\:b は実数)とおくと,

12+a2+b2>(1+a)2+b21^2+a^2+b^2 > (1+a)^2+b^2

a2+b2+(1+a)2+b2>1a^2+b^2+(1+a)^2+b^2 > 1

(1+a)2+b2+1>a2+b2(1+a)^2+b^2+1 > a^2+b^2

東大2016第4問

これを整理すると,

a<0a < 0

(a+12)2+b2>14\left(a+\dfrac{1}{2}\right)^2+b^2 > \dfrac{1}{4}

a>1a > -1

答えは図のグレーの部分(境界は全て除く)。

別解

(こちらの方がスタンダートと思われる)

z=1z=1 は不適。 z=a+biz=a+bi とおく。

AA が鋭角より,

π2<arg(z21z1)<π2-\dfrac{\pi}{2}<\mathrm{arg}\left(\dfrac{z^2-1}{z-1}\right)<\dfrac{\pi}{2}

よって,a>1a > -1

同様に,角 BB が鋭角より,a<0a < 0

CC が鋭角より,(a+12)2+b2>14\left(a+\dfrac{1}{2}\right)^2+b^2 > \dfrac{1}{4}

注:3点が同一直線上にある場合,偏角のどれかが π\pi になります。つまり,上の条件のどれかを満たしていないのできちんと排除できています。

感想

問題文が短くてシンプルなのがよいです!

小問がなく,あまり部分点をもらえるところがなさそうです。0点か完答の人が多そうです(差がつきそう)。

東大の入試問題の中ではやや易しいです。計算量がかなり少ないので,すぐに方針を思いつけた人にはかなり美味しい問題です。

今年の東大数学は全体的に易化したという話をちらほら聞きます。

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