定積分で表された関数の微分の公式

定積分で表された関数の微分の公式:

ddxaxf(t)dt=f(x)\displaystyle\frac{d}{dx}\int_a^xf(t)dt=f(x)

(ただし,f(t)f(t)tt に関する1変数の関数)

このページでは,定積分で表された関数の微分公式の証明,例題,より一般的な公式について解説します。

公式の証明

定積分の(高校数学における)定義をきちんと理解していれば証明は難しくありません。

証明

f(x)f(x) の原始関数の1つを F(x)F(x) とおく。つまり F(x)=f(x)F'(x)=f(x) である。

このとき,定積分の定義(→注意)より,

axf(t)dt=F(x)F(a)\displaystyle\int_a^xf(t)dt=F(x)-F(a)

なので,これを xx で微分すると F(x)0=f(x)F'(x)-0=f(x)

となる。

注意: axf(t)dt=F(x)F(a)\displaystyle\int_a^xf(t)dt=F(x)-F(a) は高校数学における定積分の定義そのものです。なお,大学以降では定積分はリーマン和で定義する場合が多く,この式は「定理」になります。→なぜ定積分で面積が求まるのか

簡単な例題

第一種ヴォルテラ積分方程式(←名前かっこいい)と呼ばれるタイプの積分方程式です。

例題

axf(t)dt=x22016\displaystyle\int_a^xf(t)dt=x^2-2016

を満たす関数 f(x)f(x) および定数 aa を求めよ。

解答

両辺を xx で微分すると(左辺に冒頭の公式を使う),

f(x)=2xf(x)=2x

が分かる。

さらに,もとの式に x=ax=a を代入すると,

a22016=0a^2-2016=0 となる。

よって,a=±2016=±1214a=\pm\sqrt{2016}=\pm 12\sqrt{14}

より一般的な公式

ddxp(x)q(x)f(t)dt=f(q(x))q(x)f(p(x))p(x)\displaystyle\frac{d}{dx}\int_{p(x)}^{q(x)}f(t)dt=f(q(x))q'(x)-f(p(x))p'(x)

例えば ddx2xsinxetdt=esinxcosx2e2x\displaystyle\frac{d}{dx}\int_{2x}^{\sin x}e^tdt=e^{\sin x}\cos x-2e^{2x} という感じです。公式を覚えるというよりも導出方法を理解してください。

証明1(冒頭の公式の証明と同じノリ)

f(x)f(x) の原始関数の1つを F(x)F(x) とおくと,公式の左辺は

F(q(x))F(p(x))F(q(x))-F(p(x)) となる。

これを xx で微分すると(合成関数の微分公式より),

f(q(x))q(x)f(p(x))p(x)f(q(x))q'(x)-f(p(x))p'(x) となる。

証明2(冒頭の公式を使う)

公式の左辺を変形していくと,

ddx(0qf(t)dt0pf(t)dt)=dqdxddq0qf(t)dtdpdxddp0pf(t)dt\dfrac{d}{dx}\left(\displaystyle\int_0^{q}f(t)dt-\int_0^{p}f(t)dt\right)\\ =\dfrac{dq}{dx}\dfrac{d}{dq}\displaystyle\int_0^{q}f(t)dt-\dfrac{dp}{dx}\dfrac{d}{dp}\int_0^{p}f(t)dt

ここで冒頭の公式を使うと,上式は

dqdxf(q(x))dpdxf(p(x))=f(q(x))q(x)f(p(x))p(x)\dfrac{dq}{dx}f(q(x))-\dfrac{dp}{dx}f(p(x))\\ =f(q(x))q'(x)-f(p(x))p'(x)

となる。

高校数学では積分方程式という言葉は登場しませんね。

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