正接定理とその証明

正接定理

三角形 ABCABC において,

tanAB2tanA+B2=aba+b\dfrac{\tan\frac{A-B}{2}}{\tan\frac{A+B}{2}}=\dfrac{a-b}{a+b}

正接とはタンジェントのことです。役に立つ公式ではありませんが,けっこうきれいです。

正接定理

サインの定理(正弦定理): asinA=bsinB=csinC=2R\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R

コサインの定理(余弦定理): a2=b2+c22bccosAa^2=b^2+c^2-2bc\cos A など

があるので,タンジェントの定理(正接定理)もあって欲しいですよね。

安心して下さい,正接定理もあります!

ただ,全く役に立たないので高校数学では習いません。

正接定理の証明

正接定理の証明はよい練習問題になるので,時間のある人は答えを見る前に自力で考えてみてください!

証明

正弦定理より a=sinAsinBba=\dfrac{\sin A}{\sin B}b

これを用いて正接定理の右辺を変形する:

aba+b=sinAsinBbbsinAsinBb+b=sinAsinBsinA+sinB\begin{aligned} \dfrac{a-b}{a+b} &=\dfrac{\frac{\sin A}{\sin B}b-b}{\frac{\sin A}{\sin B}b+b}\\ &=\dfrac{\sin A-\sin B}{\sin A+\sin B} \end{aligned}

ここで,分母分子にそれぞれ三角関数の和積公式を適用すると,

2cosA+B2sinAB22sinA+B2cosAB2=tanAB2tanA+B2\begin{aligned} &\dfrac{2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}}{2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}}\\ &=\dfrac{\tan\frac{A-B}{2}}{\tan\frac{A+B}{2}} \end{aligned}

となり正接定理の左辺と一致する。

正接定理の応用

正接定理が役立ちそうな問題を頑張って考えました。正弦定理を使うスタンダードな解答1よりもほんの少しだけ計算が楽な気がします。

例題

三角形 ABCABC において,A=105A=105^{\circ}B=15B=15^{\circ}b=1b=1 のとき aa を求めよ。

解答1

正弦定理より,asin105=1sin15\dfrac{a}{\sin 105^{\circ}}=\dfrac{1}{\sin 15^{\circ}}

ここで,sin15=624\sin 15^{\circ}=\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}sin105=6+24\sin 105^{\circ}=\dfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}

(加法定理からも分かるし,値を覚えておくのもオススメ→覚えておくと便利な三角比の値~15°の三角比)より,

a=6+262=162(6+2)2=2+3\begin{aligned} a&=\dfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{\sqrt{6}-\sqrt{2}}\\ &=\dfrac{1}{6-2} (\sqrt{6}+\sqrt{2})^2\\ &=2+\sqrt{3} \end{aligned}

解答2

正接定理より,tan45tan60=a1a+1\dfrac{\tan 45^{\circ}}{\tan 60^{\circ}}=\dfrac{a-1}{a+1}

よって,13(a+1)=a1\dfrac{1}{\sqrt{3}}(a+1)=a-1

a=1+13113=3+131=4+232=2+3\begin{aligned} a&=\dfrac{1+\frac{1}{\sqrt{3}}}{1-\frac{1}{\sqrt{3}}}\\ &=\dfrac{\sqrt{3}+1}{\sqrt{3}-1}\\ &=\dfrac{4+2\sqrt{3}}{2}\\ &=2+\sqrt{3} \end{aligned}

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT118では,このような問題で計算ミスを減らすコツを2つ紹介しています。

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