交代順列の数とタンジェント数,セカント数

交代順列の数,タンジェント数,セカント数の意味と,それらの間に成り立つ美しい定理を紹介します。

交代順列の数

1,2,,n1,2,\cdots, n の並び替えで,増減増減 \cdots となるものを,要素数 nn の交代順列と言います。ジグザグな順列です。

例題

要素数 44 の交代順列の数を求めよ。

解答

実際に列挙すると,13241 3 2 414231 4 2 323142 3 1 424132 4 1 334123 4 1 2 の5つです。

要素数 nn の交代順列の数を ana_n と書きます。a4=5a_4=5 です。

タンジェント数とセカント数

tanx\tan xnn 次導関数の x=0x=0 での値をタンジェント数(以下 tnt_n で表す)と言います。

マクローリン展開の形で書くと,

tanx=t1x+t33!x3+t55!x5+\tan x=t_1x+\dfrac{t_3}{3!}x^3+\dfrac{t_5}{5!}x^5+\cdots

となります。tanx\tan x は奇関数であり,マクローリン展開をしたときに偶数次の項は登場しません。つまり,nn が偶数のとき,tn=0t_n=0 です。実際に計算すると t1=1t_1=1t3=2t_3=2t5=16t_5=16 です。

また,secx=1cosx\sec x=\dfrac{1}{\cos x}nn 次導関数の x=0x=0 での値をセカント数(以下 sns_n で表す)と言います。

マクローリン展開の形で書くと,

1cosx=s0+s22!x2+s44!x4+\dfrac{1}{\cos x}=s_0+\dfrac{s_2}{2!}x^2+\dfrac{s_4}{4!}x^4+\cdots

となります。secx\sec x は偶関数であり,マクローリン展開をしたときに奇数次の項は登場しません。つまり,nn が奇数のとき,sn=0s_n=0 です。実際に計算すると s0=1s_0=1s2=1s_2=1s4=5s_4=5 です。

アンドレの定理

交代順列の数 ana_n は,

  • nn が奇数のときタンジェント数 tnt_n と等しい
  • nn が偶数のときセカント数 sns_n と等しい

感動的な定理ですね! 例えば,1cosx\dfrac{1}{\cos x} を頑張って 1010 回微分して x=0x=0 を代入すると 5052150521 になるので,要素数 1010 の交代順列の数は 5052150521 通りだと分かります。

実際に計算する際は,何回も微分するのは大変なので,動的計画法(漸化式を立てて nn が小さいものから順に ana_nbnb_n を求めていく方法)を使うとよいです。

定理の証明の概略

定理の証明はかなり大変なので,大雑把な流れのみ紹介します。微分方程式も登場します(高校数学範囲外です)。

証明の概略

組み合わせ的な議論により,n1n\geq 1 のとき

2an+1=k=0nnCkakank2a_{n+1}=\displaystyle\sum_{k=0}^n{}_n\mathrm{C}_ka_ka_{n-k}

という漸化式が成立することが分かる。

f(x)=n=0ann!xnf(x)=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{a_n}{n!}x^n

という関数を考える(ただし c0=0c_0=0)。上記の漸化式を使うと 1+f(x)2=2f(x)1+f(x)^2=2f'(x) という微分方程式が成立することが分かる。

この微分方程式の一般解は f(x)=tan(x2+C)f(x)=\tan\left(\dfrac{x}{2}+C\right) となる(ただし CC は任意定数)。ここで,f(0)=1f(0)=1 に注意すると C=π4C=\dfrac{\pi}{4} となる。よって f(x)=tan(x2+π4)f(x)=\tan\left(\dfrac{x}{2}+\dfrac{\pi}{4}\right)

半角の公式などを用いると,tan(x2+π4)=tanx+1cosx\tan\left(\dfrac{x}{2}+\dfrac{\pi}{4}\right)=\tan x+\dfrac{1}{\cos x} という恒等式が成立することが分かる。以上より f(x)=tanx+1cosxf(x)=\tan x+\dfrac{1}{\cos x} となり,両辺の係数を比較すると定理を得る。

なお,証明の概略は英語版Wikipediaを参考にしました。→Alternating Permutation

sec\sec という記号が活躍する数少ない記事です。