等比数列の和の公式(例題・証明・応用)

等比数列の和の公式についてくわしく解説します。等比数列の基礎から,公式の証明・いろいろな応用例まで紹介します。

等比数列とは

  • 等比数列(とうひすうれつ)とは,「一定の比率で変化していく」ような数の並びのことです。例えば,3,6,12,243,6,12,24 は「2倍ずつ変化していく」ので等比数列です。 等比数列の例

  • 一定の比率のことを公比と言います。

3,6,12,243,6,12,24 は等比数列である。

  • 公比22 である。
  • 初項33 である。ただし,初項とは「最初の数」のこと。
  • 項数44 である。ただし,項数とは「数の個数」のこと。

等比数列の和

等比数列に現れる数を一気に足し算する公式があります!

等比数列の和の公式

初項 aa,公比 rr,項数 nn の等比数列の和は(r1r\neq 1 のもとで),

a(rn1)r1\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}

例えば,3,6,12,243,6,12,24 という等比数列の和 3+6+12+243+6+12+24 を一気に計算できます。

3,6,12,243,6,12,24 は等比数列である。公比r=2r=2初項a=3a=3項数n=4n=4 であった。よって,この和は公式より

a(rn1)r1=3(241)21=3×15=45\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}=\dfrac{3(2^4-1)}{2-1}=3\times 15=45

となる。ためしに直接足し算してみると,

3+6+12+24=453+6+12+24=45 になっている。

等比数列の和の公式の証明

初項が aa,公比が rr,項数が nn である等比数列は,
a,ar,ar2,...,arn1a,ar,ar^2,...,ar^{n-1} と表せます。つまり,等比数列の和の公式は
a+ar+ar2++arn1=a(rn1)r1a+ar+ar^2+\cdots +ar^{n-1}=\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}
とも表せます。これを証明してみます。

証明

初項が aa,公比 rr,項数 nn の等比数列の和を SnS_n とおくと,

Sn=a+ar+ar2++arn2+arn1S_n=a+ar+ar^2+\cdots +ar^{n-2}+ar^{n-1}

両辺を rr 倍する:

rSn=ar+ar2+ar3++arn1+arnrS_n=ar+ar^2+ar^3+\cdots +ar^{n-1}+ar^n

両辺の(上の式)ー(下の式)を計算する(図のように,右辺の途中の項は打ち消し合う!): 等比数列の和の証明

SnrSn=aarnS_n-rS_n=a-ar^n

これを SnS_n について解く:

Sn(1r)=a(1rn)S_n(1-r)=a(1-r^n)

Sn=a(1rn)1rS_n=\dfrac{a(1-r^n)}{1-r}

このように,等比数列の和の公式の証明はもとの式と公比倍した式の差を取ると覚えましょう。

余談ですが,数学的帰納法で証明することもできます。

練習問題

等比数列の和の公式:

a(rn1)r1\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}

を使って問題を解いてみましょう。

例題1

123+498271-\dfrac{2}{3}+\dfrac{4}{9}-\dfrac{8}{27} を計算せよ。

解答

1,23,49,8271,-\dfrac{2}{3},\dfrac{4}{9},-\dfrac{8}{27} は等比数列である。初項は a=1a=1,公比は r=23r=-\dfrac{2}{3},項数は n=4n=4 なので,和は

(23)41231=16818153=1327\dfrac{(-\frac{2}{3})^4-1}{-\frac{2}{3}-1}=\dfrac{\frac{16-81}{81}}{-\frac{5}{3}}=\dfrac{13}{27}

  • このように,公比 rr が負の数でも分数でも等比数列の和の公式は使えます。
  • r<0r<0 のときは a(rn1)r1\dfrac{a(r^n-1)}{r-1} ではなく a(1rn)1r\dfrac{a(1-r^n)}{1-r} という式で計算したほうが若干早いです。
例題2

a+a3+a5++a2n1a+a^3+a^5+\cdots +a^{2n-1} を計算せよ。

解答

初項 aa,公比 a2a^2,項数 nn の等比数列の和なので,a(1a2n)1a2\dfrac{a(1-a^{2n})}{1-a^2} となる(a21a^2\neq 1 のもとで)。

例題3

k=1n2xk\displaystyle\sum_{k=1}^n2x^k を計算せよ。

このように,シグマの形で登場することもあります。

解答

k=1n2xk\displaystyle\sum_{k=1}^n2x^k は,初項 2x2x,公比 xx,項数 nn の等比数列の和なので, 2x(1xn)1x\dfrac{2x(1-x^n)}{1-x} となる(x1x\neq 1 のもとで)。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT108では,このような問題で計算ミスを減らすコツを紹介しています。

等比数列の和の応用例

最後に,等比数列の和の公式を使ったいろいろな応用例を紹介します。

難しい数列の和の計算に応用する

・等差数列×等比数列の和は求まる。

k=1nkprk\displaystyle\sum_{k=1}^nk^pr^k というタイプの和です。p=0p=0 が等比数列の和,p=1p=1 が等差×等比の和,p=2p=2 までは出題されることがあります。→等差×等比,2乗×等比の和を求める2通りの方法

整数問題に応用する

・一種類のみの整数からなる整数は指数を使って表せる。

7777777=7+7×10+7×102++7×1067777777=7+7\times 10+7\times 10^2+\cdots +7\times 10^6

は初項 77,公比 1010,項数 77 の等比数列の和とみなせるので,

7777777=7(1107)110=79(1071)7777777=\dfrac{7(1-10^7)}{1-10}=\dfrac{7}{9}(10^7-1)

※等比数列の和の公式を使わなくても 7777777777777797\dfrac{9}{7} 倍すれば 99 が並ぶから 10n110^n-1 という形で書けるということは分かります。

※繰り返すタイプの数には同様な議論が使えます。例えば 39393939393939393939 は初項 3939,公比 100100,項数 55 の等比数列の和。

ちなみに,全ての桁が 11 であるような数をレプユニット数と言います。レプユニット数の性質を調べるときにも,等比数列の和の公式は活躍します。→レプユニット数

因数分解に応用する

anbna^n-b^n の形は因数分解できる。

等比数列の和の公式の分母を払うと (a+ar++arn1)(1r)=a(1rn)(a+ar+\cdots +ar^{n-1})(1-r)=a(1-r^n) となります。この両辺を aa で割ると 1rn1-r^n を因数分解する式とみなせます。→因数分解公式(n乗の差,和)

三角関数の計算に応用する

・位相が等差数列であるような三角関数の和が求まる。

cosπ7+cos3π7+cos5π7\cos\dfrac{\pi}{7}+\cos\dfrac{3\pi}{7}+\cos\dfrac{5\pi}{7} などです。

複素指数関数を用います。→三角関数の和と等比数列の公式

物理に応用する

「何回もバウンドするボール」の運動を解析するときにも,等比数列の和の公式が活躍します。 →反発係数を考慮した自由落下の有名問題

大学になってからもしばしば使う重要な公式です。

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