2年生の夢(sophomore's dream)

Sophomore's dream

(1) 011xxdx=n=11nn\displaystyle\int_{0}^1\dfrac{1}{x^x}dx=\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^n}

(2) 01xxdx=n=1(n)n\displaystyle\int_{0}^1x^xdx=-\sum_{n=1}^{\infty}(-n)^{-n}

美しい積分と級数の関係です。名前も面白いです。

なんと2022年の東京工業大学数学科の院試で出題されました!

証明の道具

  • f(x)=elogf(x)f(x)=e^{\log f(x)}

  • exe^xマクローリン展開

  • 積分と極限の順序交換(この記事では割愛)

  • 01xn(logx)ndx=(1)nn!(n+1)(n+1)\displaystyle\int_0^1x^n(\log x)^ndx=(-1)^nn!(n+1)^{-(n+1)} という積分公式(記事末尾で証明する)

公式の証明

(1)も(2)もほぼ同じようにして証明できます。

(1)の証明

左辺の被積分関数を変形する:

1xx=xx=exlogx=n=0(xlogx)nn!\dfrac{1}{x^x}=x^{-x}\\ =e^{-x\log x}\\ =\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(-x\log x)^n}{n!}

よって,左辺は(積分とシグマを交換すると)

n=0(1)nn!01xn(logx)ndx\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(-1)^n}{n!}\int_0^1x^n(\log x)^ndx

これに上記の積分公式を用いると,

n=01(n+1)n+1\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{(n+1)^{n+1}}

となり,右辺と一致する。

(2)の証明

左辺の被積分関数を変形する:

xx=exlogx=n=0(xlogx)nn!x^x=e^{x\log x}\\ =\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(x\log x)^n}{n!}

よって,左辺は(積分とシグマを交換すると)

n=01n!01xn(logx)ndx\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{n!}\int_0^1x^n(\log x)^ndx

これに上記の積分公式を用いると,

n=0(1)n(n+1)n+1\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(-1)^n}{(n+1)^{n+1}}

となり,右辺と一致する。

積分公式の証明

上記証明中で用いた積分公式:

01xn(logx)ndx=(1)n(n+1)(n+1)n!\displaystyle\int_0^1x^n(\log x)^ndx=(-1)^n(n+1)^{-(n+1)}n!

を証明します。

ガンマ関数の積分公式(→ガンマ関数(階乗の一般化)の定義と性質):

0tnetdt=n!\displaystyle\int_0^{\infty}t^ne^{-t}dt=n! を用います。

証明

logx=u\log x=u と置換すると,dudx=1x\dfrac{du}{dx}=\dfrac{1}{x} より,

01xn(logx)ndx=0eu(n+1)undu\displaystyle\int_0^1x^n(\log x)^ndx=\displaystyle\int_{-\infty}^0e^{u(n+1)}u^ndu

さらに,u(n+1)=t-u(n+1)=t と置換すると上式は,

(1)n(n+1)n+10ettndt\dfrac{(-1)^n}{(n+1)^{n+1}}\displaystyle\int_{0}^{\infty}e^{-t}t^{n}dt

となる。これにガンマ関数の積分公式を用いると求める式を得る。

ちなみに1年生の夢(freshman’s dream)という(正しくない)等式もあります。3年生の夢はありません。