三角関数sec, cosec, cotと記号の意味

secx=1cosx\sec x=\dfrac{1}{\cos x} , cscx=1sinx\csc x=\dfrac{1}{\sin x} , cotx=1tanx\cot x=\dfrac{1}{\tan x}

csc\csc のことを cosec\mathrm{cosec} と書くこともあります。

sec, cosec, cotについて

  • 1sinx\dfrac{1}{\sin x}1cosx\dfrac{1}{\cos x} はいろいろなところに登場するので,「それ自体に簡単な記号を定めてやりましょう」という記号です。一部の教科書では実際に使われています。
  • sec\sec のことを正割(セカント)csc\csc のことを余割(コセカント)cot\cot のことを余接(コタンジェント)と呼びます。
  • 例えば 1+tan2x=sec2x1+\tan^2 x=\sec^2 x などのように使われます。分数の表記を避ける事ができます。
  • しかし,「1sinx\dfrac{1}{\sin x} と書くより cosec\mathrm{cosec} と書いたほうが楽だ」と思う人はほとんどいないと思います。分数を避けるのか sec\sec などの新しい記号を避けるのか?個人的には分数を避けるメリットよりも記号が増える煩わしさの方が重大なので sec,cosec,cot\sec,\mathrm{cosec},\cot は使わないという立場です。
  • しかし,一部ではまだ使われているため,もし自分が使わないとしても,記号が出てきたときに理解できる必要はあります。

セカントの図形的意味

セカントは英語で secant と書きます。これは割線という意味です。

割線とは,ある曲線に2点以上で交わる直線のことです。

次の図を見てください。

sec

単位円に対して「原点を通り傾き θ\theta の直線」は割線です。さらに,(1,0)(1,0) における接線との交点を P\mathrm{P} としたとき,secθ=OP\sec \theta = \mathrm{OP} となります。

このように sec\sec は,円の割線にまつわる長さを表しています。

無限級数とcot

sec,csc\sec , \csc はあまり登場しませんが,cot\cot は無限級数の文脈でしばしば登場します。

級数展開

cotx\cot x00 近傍で cotx=n=0(1)n22nB2n(2n)!x2n1(0<x<π) \cot x = \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{(-1)^{n} 2^{2n} B_{2n}}{(2n)!}x^{2n-1} \quad (0 < |x| < \pi) と級数展開(ローラン展開)されます。

これは tan\tan のマクローリン展開 → tanxの高階微分とマクローリン展開 tanx=n=1(1)n122n(22n1)B2n(2n)!x2n1 \tan x= \sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{n-1}2^{2n}(2^{2n}-1)B_{2n}}{(2n)!}x^{2n-1} から計算することができます。

部分分数分解

また,(複素関数の範囲で)部分分数分解した πcotπz=1z+n=12nz2n2 \pi \cot \pi z= \dfrac{1}{z} + \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{2n}{z^2 - n^2} という表現もあります。

複素解析の道具を使うことで証明できます。

ついでにsec,cosec,cot以外の関数の記号について

逆三角関数

  • sinx\sin x の逆関数を sin1x\sin^{-1}x と表記してもよいのですが,Arcsinx\mathrm{Arcsin}x と表記することが多いです(→逆三角関数(Arcsin,Arccos,Arctan)の意味と性質)。sin1x\sin^{-1}x1sinx\dfrac{1}{\sin x} と勘違いしてしまうおそれがあるからです。

  • 私は新しい記号が増える煩わしさより,意味を間違えられる危険性が勝つので Arcsin\mathrm{Arcsin} を使います(個人的な見解です,sin1x\sin^{-1}x を使う人もいます)。

指数関数

  • 高校数学ではあまりみかけませんが,指数関数 exe^xexp(x)\exp(x) と表記することがあります。
  • これは記号も増えて表記も長くなってデメリットしかないように思えますが,ex2+12e^{\frac{x^2+1}{2}} のように指数に乗る式が複雑になったときに威力を発揮します。 exp(x2+12)\exp(\tfrac{x^2+1}{2}) の方が見やすいですし,式が上下に広がるのを防いでくれます。

大学に入ると Arcsin\mathrm{Arcsin}exp\exp が大活躍します。 sec\sec は滅多に登場しません。無限級数の計算において,表記の都合で cot\cot が用いれらることは稀にあります。