終結式の定義といくつかの性質

2つの多項式に対して定義される終結式(リザルタント,Resultant)について。定義と美しい定理を2つ紹介します。

終結式の定義

以下,この記事では2つの一変数多項式

P(x)=a0xn+a1xn1++an1x+anP(x)=a_0x^n+a_1x^{n-1}+\cdots +a_{n-1}x+a_{n}

Q(x)=b0xm+b1xm1++bm1x+bmQ(x)=b_0x^m+b_1x^{m-1}+\cdots +b_{m-1}x+b_{m}

を考えます。

2つの多項式 P(x),Q(x)P(x),Q(x) に対して,その終結式を

a0mb0ni,j(αiβj)a_0^mb_0^n\displaystyle\prod_{i,j}(\alpha_i-\beta_j) で定義する。

ただし,αi(i=1,,n)\alpha_i\:(i=1,\cdots, n)P(x)=0P(x)=0 の解,βj(j=1,,m)\beta_j\:(j=1,\cdots, m)Q(x)=0Q(x)=0 の解。

終結式の \prod 部分は全ての解の差の積を表しています。例えば n=3,m=2n=3,m=2 の場合,(α1β1)(α2β1)(α3β1)(α1β2)(α2β2)(α3β2)(\alpha_1-\beta_1)(\alpha_2-\beta_1)(\alpha_3-\beta_1)(\alpha_1-\beta_2)(\alpha_2-\beta_2)(\alpha_3-\beta_2)

です。

以下では P(x)P(x)Q(x)Q(x) の終結式を Res(P,Q)\mathrm{Res}(P,Q) と書きます。

終結式の性質0(共通解)

P(x)=0P(x)=0Q(x)=0Q(x)=0 が共通解を持つ     Res(P,Q)=0\iff \mathrm{Res}(P,Q)=0

これは終結式の定義より明らかです。

終結式の性質1(判別式との関係)

nn 次方程式 P(x)=0P(x)=0 の判別式は D=a02n2i<j(αiαj)2D=a_0^{2n-2}\displaystyle\prod_{i<j}(\alpha_i-\alpha_j)^2 で定義されます。例えば三次方程式の場合 D=a4(α1α2)2(α2α3)2(α1α3)2D=a^4(\alpha_1-\alpha_2)^2(\alpha_2-\alpha_3)^2(\alpha_1-\alpha_3)^2 です。→三次方程式の判別式の意味と使い方

定理

P(x)=0P(x)=0 の判別式を DD,最高次の係数を a0a_0 とおくと,

Res(P,P)=(1)n(n1)2a0D\mathrm{Res}(P,P')=(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}a_0D

PP の微分 PP' が登場するのが面白いです。

証明

P(x)=a0j=1n(xαj)P(x)=a_0\displaystyle\prod_{j=1}^n(x-\alpha_j)

を微分する(ライプニッツの公式を使う):

P(x)=a0k=1njk(xαj)P'(x)=a_0\displaystyle\sum_{k=1}^n\prod_{j\neq k}(x-\alpha_j)

これに x=αix=\alpha_i を代入すると k=ik=i の項のみが残る:

P(αi)=a0ji(αiαj)P'(\alpha_i)=a_0\displaystyle\prod_{j\neq i}(\alpha_i-\alpha_j)

一方,P(x)=0P'(x)=0 の解を β1,,βn1\beta_1,\cdots,\beta_{n-1} とおくと,終結式の定義より,

Res(P,P)=(a0)n1(na0)ni,j(αiβj)=a0n1i=1nna0j=1n1(αiβj)=a0n1i=1nP(αi)\mathrm{Res}(P,P')=\displaystyle (a_0)^{n-1}(na_0)^{n}\prod_{i,j}(\alpha_i-\beta_j)\\ =a_0^{n-1}\displaystyle\prod_{i=1}^n na_0\prod_{j=1}^{n-1}(\alpha_i-\beta_j)\\ =a_0^{n-1}\displaystyle\prod_{i=1}^nP'(\alpha_i)

これにさきほど得た P(αi)P'(\alpha_i) の式を代入すると,Res(P,P)=a02n1(1)nC2i<j(αiαj)2\mathrm{Res}(P,P')=a_0^{2n-1}(-1)^{{}_n\mathrm{C}_2}\displaystyle\prod_{i<j}(\alpha_i-\alpha_j)^2

となる。

最後に判別式の定義を使うと,

Res(P,P)=(1)n(n1)2a0D\mathrm{Res}(P,P')=(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}a_0D

となります。

終結式の性質2(シルベスター行列)

終結式

2つの多項式 P(x)P(x)Q(x)Q(x) に対して図のように係数を並べた (n+m)×(n+m)(n+m)\times (n+m) 行列をシルベスター行列と言います。

mm 行には PP の係数をスライドさせながら並べています。下 nn 行には QQ の係数をスライドさせながら並べています。何も書いていないところは 00 です。

このとき,以下の驚くべき定理が成立します!

定理

終結式はシルベスター行列の行列式と等しい。

この定理の証明はけっこう大変です。例えばplanetmath(英語サイト)を参照して下さい。

なお,2つの定理を合わせることで, シルベスター行列式を計算することで判別式を方程式の係数で表せることが分かります!

一体何が終結しているんでしょうか。