ペル方程式に関する基本的な性質まとめ

整数 xxyy に関する不定方程式: x2Dy2=1x^2-Dy^2=1ペル方程式と言う。

ペル方程式について,大学入試レベルで知っておくと便利な知識を整理しました。

より一般に,x2Dy2=nx^2-Dy^2=n という形の不定方程式をペル方程式と呼ぶこともありますが,ここでは「ペル型方程式」と呼んで区別します。

二次の不定方程式をペル方程式に帰着させる

二次の不定方程式 ax2+bxy+cy2+dx+ey+f=0ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0 の多くがペル型方程式に帰着できます。

例1

3x25y2=4 3x^2-5y^2=4

両辺 33 倍して 3x=X,y=Y3x=X, y=Y とおくと,

X215Y2=12 X^2-15Y^2=12 となりペル型方程式に帰着される。

(x,y)(x, y) が整数なら (X,Y)(X,Y) も整数なので上記のペル型方程式の整数解 (X,Y)(X,Y) が求まればもとの整数解も全て求まる。

例2

x2+2xyy23=0 x^2+2xy-y^2-3=0

平方完成するとペル型方程式に帰着される:

(x+y)22y2=3 (x+y)^2-2y^2=3

ここで,x+y=X,y=Yx+y=X, y=Y とおくと,

X22Y2=3X^2-2Y^2=3 となる。 (x,y)(x, y) が整数なら (X,Y)(X,Y) も整数なので上記のペル型方程式の整数解 (X,Y)(X,Y) が求まればもとの整数解も全て求まる。

ペル方程式についての性質

ペル方程式 x2Dy2=1x^2-Dy^2=1 について考えます。

まず,(x,y)(x,y) が解なら (x,y)(x,-y) なども解なので x,yx,y がともに非負である解を考えます。

次に,x=1,y=0x=1, y=0 は自明な解なのでそれ以外の解について考えます。

DD が平方数の場合,左辺が (x+Dy)(xDy)(x+\sqrt{D}y)(x-\sqrt{D}y) と因数分解できるので簡単に解けます。そこで,以下では DD が平方数でない場合の定理を述べます。

  • 定理1
    ペル方程式には必ず自明でない解が無限個存在する。

  • 定理2
    ペル方程式の解の中で x+Dyx+\sqrt{D}y を最小にするような解を (x0,y0)(x_0, y_0) とおく。すると,自然数 nn を用いて
    x+Dy=(x0+Dy0)nx+\sqrt{D}y=(x_0+\sqrt{D}y_0)^n という形で書ける (x,y)(x,y) もまたペル方程式の解であり,それで全てを尽くす。

  • 定理3
    上記の (x0,y0)(x_0,y_0) を見つけるそれなりに速いアルゴリズムがある。

定理の証明は難しいので割愛します,より詳細を知りたい方はペル方程式(英語サイト)を参照して下さい。証明を知らなくても入試で不利になることはありません。定理2を背景とする問題はたまに出題されます。

ペル方程式の解について

初期解について

定理2における (x0,y0)(x_0, y_0) を初期解と言います。初期解を求めてしまえば定理2によりペル方程式の一般解が求められます。

初期解を求めるのは時に難しい

初期解を求めるのは簡単ではありません。例えば D=61D=61 の場合だと初期解は (x0,y0)=(1766319049226153980)(x_0,y_0)=(1766319049,226153980) です。直感では無理ですね。そこで定理3が活躍します。

歴史についてちょっとした小噺

7世紀にインドの数学者ブラーマグプタはその著書『ブラーマ・スプタ・シッダーンタ』で x292y2=1x^2 - 92 y^2 = 1 の初期解が (x0,y0)=(1151,120)(x_0 , y_0) = (1151,120) であることを証明しています。

ちなみに『ブラーマ・スプタ・シッダーンタ』は 00 について記述された本であると言われています。

解が無限に得られることについて追記

定理2と関連して,ペル方程式の解が 11 つ見つかればそれをもとに無限個の解を作り出すことができます。→ブラーマグプタの恒等式 の一番下をご覧ください。

より一般のペル方程式

一般のペル型方程式については定理1は成り立ちません。 例えば,x23y2=1x^2-3y^2=-1 について考えると,x2+1=3y2x^2+1=3y^2 となり平方剰余の考え方から左辺は絶対に 33 の倍数にならないので整数解は持ちません。→平方剰余と基本的な問題

連分数展開への応用

連分数展開を用いるとペル方程式の解を構成できます。大雑把なイメージとしては x2Dy2=1x^2-Dy^2=1 の解は,x2Dy2x^2\fallingdotseq Dy^2 を満たすので,D\sqrt{D} を有理数 xy\dfrac{x}{y} で近似するために連分数展開する……という感じです。

詳細は ペル方程式の連分数を用いた魔法の解法(tsujimotterのノートブック) をご参照ください。 -

ペル方程式の世界はもっともっと広いですが,自分も深く理解していないので概観になってしまいましたm(__)m

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