正二十面体の対角線・体積・内接球などを座標で計算

正二十面体について,表面積・体積・対角線の長さなど整理しました。計算に役立つ正二十面体の座標空間表示も紹介します。 正二十面体

正二十面体の基本的な情報

  • 正二十面体は,三角形 2020 枚でつくられる正多面体です。

  • 面の数は 2020,辺の数は 3030,頂点の数は 1212 です。

  • 1つの頂点には 55 つの面が接します。

  • 正二十面体の双対は正十二面体です。双対については 正六面体と正八面体の双対関係と京大の問題をどうぞ。

正二十面体のいろいろな量

1辺の長さが1の正二十面体について,

  1. 表面積は 535\sqrt{3}
  2. 最長の対角線の長さ(直径)は 5+52\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}},外接球の半径は 10+254\dfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}
  3. 体積は 15+5512\dfrac{15+5\sqrt{5}}{12}
  4. 内接球の半径は 33+1512\dfrac{3\sqrt{3}+\sqrt{15}}{12}

以下では,これらの公式1~4を導出していきます。

正二十面体の表面積

表面積は簡単です。

  • 1辺の長さが1である正三角形の面積は 34\dfrac{\sqrt{3}}{4} です。(正三角形の面積は公式として覚えておきましょう。 →正三角形の面積,正四面体の体積

  • よって,それを20倍すれば表面積になるので,1辺の長さが1の正二十面体の表面積は 535\sqrt{3} です。

座標空間表示

対角線の長さ・体積・内接球の半径を計算するのに役立つ座標空間表示を紹介します。

正二十面体の座標空間表示

以下の合計12個の点は,1辺の長さが2の正二十面体の頂点となっている。

  • 緑:xyxy 平面上の長方形の4頂点 (±1,±ϕ,0)(\pm 1,\pm\phi,0)
  • 青:yzyz 平面上の長方形の4頂点 (0,±1,±ϕ)(0,\pm 1,\pm \phi)
  • 赤:zxzx 平面上の長方形の4頂点 (±ϕ,0,±1)(\pm\phi,0,\pm 1)

ただし,ϕ=1+52\phi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}

正二十面体の座標表示

黄金比 ϕ\phi が出てくるのがおもしろいです。

なお,天下り的ですが,この座標空間表示が正しいことは以下のように簡単に確認できます。

確認

12個の中から適当に点を選ぶ。どの点を選んだとしても残り11個の点の中から自分との距離が2の頂点を5つ持ってこれる。

例えば,(1,ϕ,0)(1,\phi,0) を選ぶと,それと距離が2の5つの頂点 (1,ϕ,0),(ϕ,0,±1),(0,1,±ϕ)(-1,\phi,0),(\phi,0,\pm 1),(0,1,\pm \phi) を持ってこれる。対称性より他も同様。

正二十面体の対角線の長さ

正二十面体の座標空間表示を知っていたら対角線の長さは簡単に計算できます。

対角線の計算方法

座標空間表示より,(1,ϕ,0)(1,\phi,0)(1,ϕ,0)(-1,-\phi,0) の距離が1辺の長さが2の正二十面体の最長の対角線の長さなので,

21+ϕ2=25+52 2\sqrt{1+\phi^2}=2\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}}

よって,1辺の長さが1の正二十面体の最長の対角線の長さは,

5+52 \mathbf{\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}}}

ちなみに,日本数学オリンピックの予選問題に「1辺の長さが2の正二十面体の最長の対角線の長さを求めよ」という問題が出題されたことがあります。

座標を使わない方法

対角線の計算方法2

正二十面体の対角線

図のように正二十面体の頂点を4つ選ぶと,ABCDABCD は長方形となる。なぜなら,対称性より AC,BDAC,BD は正二十面体の中心 OO を通り,OA=OB=OC=ODOA=OB=OC=OD だからである(対角線がそれぞれの中点で交わるので平行四辺形,さらに対角線の長さが等しいので長方形)。

そして,

よって,正二十面体の最長の対角線の長さは,三平方の定理より

12+(1+52)2=5+52 \sqrt{1^2+\left(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^2} = \mathbf{\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}}}

外接球の半径

正二十面体において「対角線の長さ」は「外接球の直径」と等しいです。よって,外接円の半径は上の結果を 12\dfrac{1}{2} 倍して

125+52=10+254 \dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}}=\dfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}

となります。

正二十面体の体積

1つの面の3頂点と正二十面体の中心,合計4点により構成される三角錐の体積を20倍すればよいです。1つの面は例えば (±1,ϕ,0),(0,1,ϕ)(\pm 1,\phi,-0),(0,1,\phi) による面を考えます。ここではサラスの公式を用いますが,平面の方程式を知っている人は距離公式を用いて求めることもできます。

体積の計算方法

原点と (±1,ϕ,0),(0,1,ϕ)(\pm 1,\phi,0),(0,1,\phi) により作られる四面体の体積はサラスの公式より,

1ϕ01ϕ001ϕ \left| \begin{matrix} -1 & \phi & 0\\ 1 & \phi & 0\\ 0 & 1 & \phi \end{matrix} \right| の絶対値である。よって

162ϕ2=3+56 \dfrac{1}{6}|2\phi^2|=\dfrac{3+\sqrt{5}}{6}

これを20倍すると1辺の長さが2の正二十面体の体積となるので,1辺の長さが1の正二十面体の体積は,

3+56×20÷23=15+5512 \dfrac{3+\sqrt{5}}{6} \times 20 ÷2^3 = \mathbf{\dfrac{15+5\sqrt{5}}{12}}

正二十面体の内接球の半径

表面積と体積が分かれば内接球の半径も分かります。 →内接球の半径を求める公式と例題・証明

内接球の半径の計算方法

1辺が1の正二十面体の表面積 SS は,

S=3420=53 S=\dfrac{\sqrt{3}}{4}\cdot 20=5\sqrt{3}

よって,さきほど求めた体積と合わせて,内接球の半径 rr を求めることができる:

15+5512=13r53 \dfrac{15+5\sqrt{5}}{12}=\dfrac{1}{3}r\cdot 5\sqrt{3}

よって, r=33+1512 r=\mathbf{\dfrac{3\sqrt{3}+\sqrt{15}}{12}}

内接球の半径と外接球の半径の関係

正二十面体の中心を OO,正二十面体を構成する1つの三角形 ABCABC の重心を GG とすると,OGAOGA は直角三角形です。

よって,OG2+AG2=AO2OG^2+AG^2=AO^2 です。ここで,

  • OGOG は内接球の半径 rr
  • OAOA は外接球の半径 RR
  • AGAG23×32=13\dfrac{2}{3}\times\dfrac{\sqrt{3}}{2}=\dfrac{1}{\sqrt{3}}

なので,r2+13=R2r^2+\dfrac{1}{3}=R^2 です。上記では rrRR を別々に計算しましたが,実は片方がわかればもう片方も簡単に計算できますね。

正十二面体についても似たような計算ができます。詳しくは 正十二面体のいろいろな計算(対角線・表面積・体積・内接球・外接球) をご覧ください。

正十二面体よりも座標空間表示がかんたん! ちなみに「内接球の半径と外接球の半径の関係」はy先生に教えていただきました。