楕円,放物線,双曲線の準円

準円

二次曲線の準円

二次曲線に対して,二本の直交する接線が引けるような点の軌跡は円である。これを二次曲線の準円と言う。

楕円の準円が最も有名ですが,放物線,双曲線に関しても同様の定理が成立します。

楕円の準円

まずは楕円についてです。

定理

楕円: x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 に対して二本の直交する接線が引けるような点の軌跡は円: x2+y2=a2+b2x^2+y^2=a^2+b^2 である。

a2=17,b2=8a^2=17,b^2=8 の場合が東工大で出題されています。

証明は簡単そうでけっこう難しいです。楕円の接線は扱いにくいので, 楕円を xx 軸,または yy 軸方向に拡大(縮小)すると円になるという性質を使うことで円の接線の話にします。

証明

P(p,q)P(p,q) から楕円に引いた接線の方程式を l:y=m(xp)+ql:y=m(x-p)+q とおく。

(なお,yy 軸と平行な接線が登場する場合,求める軌跡上の PP(±a,±b)(\pm a,\pm b) であり x2+y2=a2+b2x^2+y^2=a^2+b^2 上にあるので,以下では接線の傾きが存在する場合を考える)

楕円の準円の証明

まず,接線であるために mm が満たすべき条件を求める。

図形全体を yy 軸方向に ab\dfrac{a}{b} 倍に拡大すると,

楕円→円:x2+y2=a2x^2+y^2=a^2

直線 ll →直線 l:y=abm(xp)+abql':y=\dfrac{a}{b}m(x-p)+\dfrac{a}{b}q

となる。よって,ll が楕円に接する     l\iff l' が円に接する

    l\iff l' と原点の距離が aa

    ab(qmp)1+(amb)2=a\iff \dfrac{|\frac{a}{b}(q-mp)|}{\sqrt{1+(\frac{am}{b})^2}}=a

    (qmp)2=b2+(am)2\iff (q-mp)^2=b^2+(am)^2

    (p2a2)m22pqm+q2b2=0\iff (p^2-a^2)m^2-2pqm+q^2-b^2=0

よって,(p,q)(p,q) から引いた接線の傾きは上記の(mm についての)二次方程式の解である。 PP から楕円に引いた二本の接線が直交(つまり傾きの積が 1-1)する条件は,解と係数の関係より

q2b2p2a2=1\dfrac{q^2-b^2}{p^2-a^2}=-1

すなわち求める軌跡は x2+y2=a2+b2x^2+y^2=a^2+b^2

放物線の準円

放物線の場合に二接線が直交するような点の軌跡は,なんと放物線の準線と一致します。(準線については→放物線の準線・焦点と一般化

計算は楕円の場合よりも楽なので練習がてらやってみてください!

なお,直線は半径無限大の円とみなすことができるので「放物線にもある意味で準円が存在する」言うことができます。

双曲線の準円

双曲線の準円

双曲線の場合も様子は似ていますが,注意すべきことがいくつかあります。計算は楕円の場合よりめんどくさい(拡大,縮小して円にするテクニックが使えない)ので結果のみ記します。

(図の赤い円が準円,軌跡としては漸近線上の四点は除かれる)

双曲線の準円

双曲線 x2a2y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1 に引いた二本の接線が直交するような点の軌跡は,

  1. a2>b2a^2 > b^2 のとき,円 x2+y2=a2b2x^2+y^2=a^2-b^2 から漸近線上の四点を除いたもの

  2. a2b2a^2\leqq b^2 のとき,そのような点は存在しない

  • 双曲線の漸近線上に点 PP があるときはそもそも接線が二本引けません。
  • a2b2a^2\leqq b^2 のときは漸近線の傾きの絶対値が 11 以上になります(双曲線がつぶれる)。このとき,二本の直交する接線が引けるような点 PP は存在しません。

二本の接線が直交する点の軌跡が円になるのは全然自明でなく,非常に面白い性質です。