三次関数の接線の本数についての美しい定理

定点から三次関数のグラフに接線が何本引けるかを問う問題は頻出。図で覚えておくとよい。変曲点における接線が重要。

三次関数の接線の本数

三次関数の接線の本数

三次関数のグラフの形は大きく分けて2パターンあります。

  1. 極大点,極小点が存在する場合
  2. 単調な場合

いずれの場合も,「変曲点における接線」と「三次関数(自分自身)」によって領域が4つに分かれます。それぞれの領域に図のように記号を定めます。

すると,点 PP から三次関数のグラフに引ける接線の本数に関して以下の美しい定理が成立します。

定理

PP から引ける接線が三本     P\iff P は領域 AABB のいずれかの内部

PP から引ける接線が一本     P\iff P は領域 CCDD のいずれかの内部,または変曲点

PP から引ける接線が二本     P\iff P は上記以外

直感的に納得する

上記の定理を式を使ってきちんと証明するのがこの記事の目標です。

接線の本数

しかし,まずは式で証明する前に 直感的に正しそうだということを図を見て確認してください。

パターン1の場合で見てみます。

  • 「3」の領域にある緑の点からは接線が三本引けます(接点は薄い緑の点)
  • 「1」の領域にある紫の点からは接線が一本しか引けません(接点は薄い紫の点)

接線の本数の証明

まずは f(x)=x3+axf(x)=x^3+ax という形の三次関数について証明します。

対称性より(f(x)f(x) が奇関数なので)PPxx 座標が 00 以上の場合のみ考えればOKです。

証明

f(x)=x3+axf(x)=x^3+ax のとき,f(x)=3x2+af'(x)=3x^2+a であるので,

(x0,x03+ax0)(x_0,x_0^3+ax_0) における接線の方程式は

y=(3x02+a)x2x03y=(3x_0^2+a)x-2x_0^3

よって,P(p,q)(p0)P(p,q)\:(p\geqq 0) から引いた接線の本数は,XX についての三次方程式

q=3X2p+ap2X3q=3X^2p+ap-2X^3

の実数解の個数と等しい(ここが一番重要)。

あとは,g(X)=2X33X2p+qapg(X)=2X^3-3X^2p+q-apxx 軸との共有点の個数を求めればよい。

p=0p=0 のとき,g(X)=2X3+q=0g(X)=2X^3+q=0 の実数解は一つ。

p>0p > 0 のとき,g(X)=6X(Xp)g'(X)=6X(X-p) より

g(X)g(X)X=0X=0 で極大値 qapq-ap

X=pX=p で極小値 p3+qap-p^3+q-ap

よって,

解が三つ     p3+qap<0<qap\iff -p^3+q-ap <0 <q-ap

    ap<q<p3+ap\iff ap <q <p^3+ap

解が二つ     qap=0\iff q-ap=0 または p3+qap=0-p^3+q-ap=0

解が一つ     \iff 上記以外。

変曲点における接線が y=axy=ax であることに注意すると定理が成立することが分かる。

なお,a<0a <0 の場合がパターン1に,a0a \geqq 0 の場合がパターン2に対応していますが,定理の証明において場合分けは不要です。

一般の場合

一般の三次関数 y=Ax3+Bx2+Cx+Dy=Ax^3+Bx^2+Cx+D については適切に平行移動&拡大を施すことで y=x3+axy=x^3+ax という形にできます。

(平行移動で二次の項と定数項を消し,拡大(縮小)で三次の係数を 11 にする) →グラフの平行移動(具体例と公式の証明) →関数のグラフの拡大・縮小の証明と例

平行移動や拡大を施した後のグラフで上記の定理が正しければ変換前のグラフにおいても定理は正しいので,全ての三次関数について目標の定理が成立することが分かりました!

感覚的に正しそうな主張を式を使ってきちんと証明できると楽しいです。