調和平均の意味と性質まとめ

調和平均とは

2÷(1a+1b)2\div\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}\right)aabb の調和平均と呼ぶ。

調和平均の意味と覚えておくべき性質を整理しました。

調和平均の計算例

「平均」にはいろいろな種類があります。調和平均はそのうちの1つです。

20203030 の「普通の平均」は 20+302=25\dfrac{20+30}{2}=25 ですが,調和平均は以下のように 2424 になります!

例1

20203030 の調和平均は,

2÷(120+130)=2÷3+260=2÷112=242\div\left(\dfrac{1}{20}+\dfrac{1}{30}\right)\\ =2\div\dfrac{3+2}{60}\\ =2\div\dfrac{1}{12}\\ =24

普通の平均 2525 と調和平均 2424 は近いですが異なる値ですね。

ちなみに,普通の平均 a+b2\dfrac{a+b}{2} のことは算術平均と言います。

覚え方

調和平均は逆数を取って、平均を取って、また逆数を取ることで計算できます。

例1の再掲

20203030 の調和平均は,

  1. まず逆数を取ると 120\dfrac{1}{20}130\dfrac{1}{30}

  2. 平均を取ると 12(120+130)=124\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{20}+\dfrac{1}{30}\right)=\dfrac{1}{24}

  3. また逆数を取ると 2424

となり,同じ答え 2424 になりました。

調和平均の意味

調和平均は算術平均に比べてお世話になる機会が少ないですが,いろいろな分野で登場します。

有名なのは,以下の速度の問題です。

調和平均が登場する例

11 kmの道を行きは時速 aa km,帰りは時速 bb kmで往復したときの平均の速さは調和平均 HH km/h。

一瞬,平均の速さは a+b2\dfrac{a+b}{2} km/hだと思いがちですが,じっくり考えてみると調和平均になることが分かります。

実際,行きにかかった時間が 1a\dfrac{1}{a} 時間,帰りにかかった時間が 1b\dfrac{1}{b} 時間なので,全体の平均の速さは,

2÷(1a+1b)2\div\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}\right)

となります。

いろいろな平均と調和平均

世の中にはいろいろな「平均」があります。有名な順に3つ紹介します。

  • 算術平均(相加平均,Arithmetic Mean)
    • A=a+b2A=\dfrac{a+b}{2}
    • 足し算して個数で割る
  • 幾何平均(相乗平均,Geometric Mean)
    • G=abG=\sqrt{ab}
    • かけ算して累乗根を取る
  • 調和平均(Harmonic Mean)
    • H=2÷(1a+1b)H=2\div\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}\right)
    • 1H=12(1a+1b)\dfrac{1}{H}=\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}\right) とも書ける
    • 逆数をとって算術平均して逆数

n個の数の平均

22 個ではなく nn 個の数字 (x1,x2,,xn)(x_1,x_2,\cdots,x_n) に対しても,各平均が以下のように定義できます。

  • 算術平均
    A=x1+x2++xnnA=\dfrac{x_1+x_2+\cdots +x_n}{n}

  • 幾何平均
    G=x1x2xnnG=\sqrt[n]{x_1x_2\cdots x_n}

  • 調和平均
    1H=1n(1x1+1x2++1xn)\dfrac{1}{H}=\dfrac{1}{n}\left(\dfrac{1}{x_1}+\dfrac{1}{x_2}+\cdots +\dfrac{1}{x_n}\right)

なお,他にも対数平均や算術幾何平均などいろいろな種類の平均があります。

調和平均の不等式とその証明

相加平均と相乗平均の間に成り立つ不等式は非常に有名です。→相加相乗平均の不等式:意味:例題:おもしろい証明

実は,調和平均 HH と相乗平均 GG の間にも不等式が成立します。

相加相乗調和平均の不等式

HGAH\leqq G\leqq A

証明

1x1,1x2,,1xn\dfrac{1}{x_1},\dfrac{1}{x_2},\cdots,\dfrac{1}{x_n}

に対して相加相乗平均の不等式を用いると,

1n(1x1+1x2++1xn)1x1x2xnn\dfrac{1}{n}\left(\dfrac{1}{x_1}+\dfrac{1}{x_2}+\cdots +\dfrac{1}{x_n}\right)\geq \sqrt[n]{\dfrac{1}{x_1x_2\cdots x_n}}

左辺は調和平均 HH の逆数,右辺は相乗平均 GG の逆数なので両辺の逆数を取れば目標の不等式が得られる。

調和平均に関するその他の話題

  • 22 変数のときは各平均に関して HA=G2HA=G^2 が成立します: 21a+1ba+b2=ab\dfrac{2}{\tfrac{1}{a}+\tfrac{1}{b}}\cdot\dfrac{a+b}{2}=ab

  • 逆数が等差数列であるような数列を調和数列と言います。例えば, 1,13,15,171,\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{5},\dfrac{1}{7}\cdots は調和数列です。

  • 調和数列の中でも,特に以下のような数列の和の極限を調和級数と言います: 1+12+13+1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\cdots →調和級数1+1/2+1/3…が発散することの証明

3種類以外にもいろいろな平均があるようです。