最終更新:2020/05/06

超幾何級数の定義と例

分野: 方程式,恒等式  レベル: 大学数学    

この記事では,超幾何級数について紹介します。いくつか例を見ながら,超幾何級数に慣れ親しみましょう。

超幾何級数の定義

超幾何級数とは,以下の式で定義される ${}_rF_{s}(z)$ のことです。
${}_rF_{s}(a_1,\dots,a_r;b_1,\dots,b_s;z)\\
=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(a_1)_n\cdots (a_r)_n}{(b_1)_n\cdots (b_s)_n}\dfrac{z^n}{n!}$

定義式をもう少し詳しく説明すると,

  • 超幾何級数は,$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}c_nz^n$ という形の無限級数
  • ただし,係数 $c_n$ が複雑
  • 係数の分子には $r$ 個,分母には $s$ 個の「ポッホハマー記号」が登場
  • ポッホハマー記号 $(a)_n$ とは,$n$ 個の連続積を表す:
    $(a)_n=a(a+1)(a+2)\cdots (a+n-1)$
    ただし,$(a)_0=1$ とする。

特に,$r=2,s=1$ の場合を超幾何級数と呼び,一般の ${}_rF_{s}$ のことを「一般化超幾何級数」と呼ぶこともあるようです。

超幾何級数の例

実は,超幾何級数は,いろいろな身近な関数を含んでいます。例えばコサインは,超幾何級数を使って
$\cos z={}_0F_{1}(;\dfrac{1}{2};-\dfrac{z^2}{4})$
と表すことができます。これを確認してみましょう。

証明

右辺は,超幾何級数の定義より,
$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{(\frac{1}{2})_n}\dfrac{1}{n!}\left(-\dfrac{z^2}{4}\right)^n\\
=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{\frac{1}{2}\cdot\frac{3}{2}\cdot\frac{2n-1}{2}}\cdot\dfrac{(-1)^n}{n!2^n\cdot 2^n}z^{2n}\\
=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(-1)^n}{(2n)!}z^{2n}$
これは,$\cos z$ のマクローリン展開と一致する:
sinとcosのn階微分とマクローリン展開

Pfaff-Saalschütz の和公式

超幾何級数に関連するおもしろい恒等式はたくさんあります。その中でも,今回は Pfaff-Saalschütz の和公式と呼ばれる恒等式を紹介します。

任意の非負整数 $k$ に対して,
${}_3F_{2}(a,b,-k;c,1+a+b-c-k;1)\\
=\dfrac{(c-a)_k(c-b)_k}{(c)_k(c-a-b)_k}$

左辺は級数(実際には有限和になりますが)なのに,右辺は因数分解された分数式というのがおもしろいです。
$k=0$ の場合は左辺も右辺も $1$ になります。$k=1$ の場合についても確認してみましょう。

$k=1$ の場合の確認

まず,右辺は $\dfrac{(c-a)(c-b)}{c(c-a-b)}$ です。

左辺は,$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(a)_n(b)_n(-1)_{n}}{(c)_n(1+a+b-c-1)_n}\dfrac{1}{n!}$ ですが,分子に $(-1)_n$ があるため,$n\geq 2$ の項は消えます。よって,左辺は $1-\dfrac{ab}{c(a+b-c)}$ となります。つまり,
$1-\dfrac{ab}{c(a+b-c)}=\dfrac{(c-a)(c-b)}{c(c-a-b)}$
という恒等式が得られます。

Pfaff-Saalschütz の和公式の証明は,私も知りません(帰納法を使って証明できるかも?)

参考文献:この定理が美しい(数学書房編集部)

超幾何級数は名前も見た目もゴツくて楽しいですね!