数学的帰納法によるハゲのパラドックス

全ての人はハゲである

数学好きなら知っておくべき有名なパラドックスを解説します。

証明

主張1:髪の毛が 00 本の人は明らかにハゲである。

主張2:ハゲの人に一本髪の毛を付け加えてもハゲである。

よって数学的帰納法により全ての人はハゲである。

このパラドックスを論破しましょう,論破の例を見る前に自分なりに考えてみてください!

ハゲのパラドックスを論破してみる

論破1:主張2が間違っている。

1-1「ハゲ」と「ハゲじゃない人」には確実に境界線が存在するはずなので,その境界を kk とおきます。つまり,髪は kk 本以下の人はハゲ,それより大きければハゲじゃない,と定義します。すると主張2は正しくないのでパラドックスは間違い!

1-2「ハゲ」か「ハゲではない」の2択ではなく,「ハゲ」「どっちでもない」「ハゲではない」の3択で考えるべきだ!

論破2:そもそもパラドックスではない。

2−1「ハゲ」の定義はあいまいだからそもそも議論する意味が無い。

2−2「ハゲ」の定義はあいまいだから全員ハゲでもいいじゃないか。そのように定義すれば良い。おれがハゲと言ったらハゲなんだ,だから帰納法による証明は正しい。パラドックスでもなんでもない。という少々強引な説明です。

他にもいろいろな論破の仕方があると思います。答えがたくさんあるのは定義があいまいだからです。

砂山のパラドックス

ハゲのパラドックスと同種のパラドックスとして「砂山のパラドックス」があります。

主張1:たくさんの砂の集まりは砂山である。

主張2:砂山から砂粒を1つ取り除いたところで砂山は砂山である。

よって数学的帰納法により砂粒1つで砂山になる。

帰納法の方向が逆になっていますね。

難しい証明をするとき,稀にこのような「逆帰納法」を用いて証明をすることもあります。

定義の大切さ

数学は 「こう定義すればこうなる」という主張を積み重ねていく学問です。なので,定義があいまいな状態では数学は使えないのです。

あいまいな概念には数学的な議論は使えない。だから議論する前に定義を明確にしよう!というのが今回の教訓です。

数学系の学科のすすめ

ちなみにこの手の話は数学好きの人たちの間では非常に盛り上がります。日常のいろいろな出来事を数学的に議論する習性があるのです。そういうときはどのように定義するかでもめることが多いです。

数学系の学科に進むとこういう話で盛り上がれる仲間ができます。このような環境に染まると非常に楽しいので,ハゲのパラドックスが面白いと感じた方はぜひ数学系の学科へ!

※ただし,数学に興味のない人(特に女性)の前でこういう話はしないようにしましょう。気持ち悪い人と思われてしまいます。

話している相手によって話題を使い分けられるような博識な人間になりたいですね!

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