黄金比が現れるいろいろな例(方程式・図形・数列)と現れる理由

1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}黄金比と呼ばれ,いろいろな場所に出現する。

黄金比の値

  • 5\sqrt{5} は2乗して 55 になる数です。
  • 52.2360679\sqrt{5}\fallingdotseq 2.2360679 です。→ルート2,ルート3,ルート5の覚え方など
  • 黄金比は 1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} ですが,この近似値は 1.618033988751.61803398875 です。1.61.6 までは覚えておくとよいです。
  • 単に 1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} のことを黄金比と呼ぶこともありますし,「1:1+521:\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} という比率」を黄金比と呼ぶこともあります。

黄金比と2次方程式

黄金比は様々な場面で登場します,まずは最も重要な性質を紹介します。

性質1

黄金比は方程式 x2x1=0x^2-x-1=0 の解である。

証明

x2x1=0x^2-x-1=0二次方程式の解の公式を使って解くと,

x=1±1(4)2=1±52x=\dfrac{1\pm\sqrt{1-(-4)}}{2}=\dfrac{1\pm\sqrt{5}}{2}

である。このうち片方が 1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} となり黄金比と一致する。

数学の諸分野や自然界に黄金比が登場するのは,性質1が元になっています。

様々な場面で黄金比が登場するので神秘的に思えますが,その背後には必ず上記の方程式があり,この方程式がいろいろな場面で登場するだけです。

以下では黄金比が登場する,すなわち上記の方程式が登場する例を紹介します。

黄金比と図形

黄金長方形

以下,黄金比 1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} のことを ϕ\phi と書きます。

縦と横の比が黄金比 ϕ\phi である長方形を黄金長方形と言います。

性質2

大きい長方形 AA を「片方が正方形になるように」カットする。正方形でない方の長方形を BB とする。AABB が相似なら AABB は黄金長方形である。

証明

黄金長方形

AA の縦の長さを 11,横の長さを xx とおく。AA は正方形と BB に分割されるので

BB の縦の長さは 11,横の長さは x1x-1 である。

AABB が相似なら 1:x=x1:11:x=x-1:1

よって 1=x2x1=x^2-x

x2x1=0x^2-x-1=0

となり xx は黄金比 ϕ\phi と一致する。

黄金比が現れる図形

しつこいようですが,全て方程式 x2x1=0x^2-x-1=0 が元になっています。

黄金比と代数

黄金比とフィボナッチ数列

性質3

フィボナッチ数列の隣り合う項の比の極限は黄金比である。

フィボナッチ数列は 1,1,2,3,5,8,13,21,...1,1,2,3,5,8,13,21,... と続きますが,この比は黄金比に近づいていきます。実際,21131.615\dfrac{21}{13}\fallingdotseq 1.615 であり,この時点で黄金比にかなり近いです。

これはフィボナッチ数列の漸化式 an=an1+an2a_{n}=a_{n-1}+a_{n-2} の特性方程式が x2x1=0x^2-x-1=0 であることによっています。

詳しい証明は以下を参照してください。 →フィボナッチ数列の7つの性質(一般項・黄金比・互いに素)

黄金比のいろいろな表示

黄金比はルートを無限個用いて表せます。

性質4

s=1+1+1+1+s=\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+\cdots}}}} とおくと ss は黄金比

証明

sss=1+ss=\sqrt{1+s} を満たす正の数。これは整理すると s>0s > 0 かつ s2s1=0s^2-s-1=0 となり黄金比が登場する。

また,黄金比は無限連分数展開でも表せます。

性質5

t=1+11+11+11+11+t=1+\dfrac{1}{1+\tfrac{1}{1+\tfrac{1}{1+\tfrac{1}{1+\cdots}}}} とおくと tt は黄金比

証明

ttt=1+1tt=1+\dfrac{1}{t} を満たす正の数。これは整理すると t>0t > 0 かつ t2t1=0t^2-t-1=0 となり黄金比が登場する。

背後には方程式 x2x1=0x^2-x-1=0 が潜んでいます。

いろいろなところに黄金比

  • パルテノン神殿の縦横比など,建築にも黄金比が登場します。
  • 巻き貝や植物の形など自然界にも黄金比が登場すると言われています。
  • 「黄金比は人間が最も美しいと感じる比率である」という説もあります。

ちなみに「白銀比」もあります。